スペース

田中カナタ

私のスペース

誰もいない家、

時計の針の音だけが聞こえる。

机の上にはコンビニのビニール袋、

中には、おにぎりやお弁当。

今日も1人、夜ご飯を食べる。


今日も誰も帰ってこない。

児相の人が昨日来た。

お母さんや、お父さんはいますか?

そう聞いて、部屋の中を探るような目で見ていた。


今日は誰も来ない。

外は雨みたいだ。

制服のまま、外に出る。

そしていつもの場所に行く。


歩いて通りを抜けると、

古びた公衆電話がある。

毎日同じ番号に電話をかける。

目を閉じて、着信中の音を聞く。


プルルルル...


お願い、

1人はもう嫌だ、

電話に、出て。


そう願っているときだけは、

この公衆電話は私の空間。

"私のスペース"

そんな風に感じる。


お母さんもお父さんも、

全然電話に出てくれない。

私が4歳の頃に、どこかへ行ってしまった。

隣の家のおばあさんに聞いた。

お母さんとお父さんは、どこですか?と。

お星様になったのよ。と言われた。


そうかぁ、お星様になったのか。



公衆電話は私のスペース。

お星様になった、

お母さんとお父さんに会える、


私のSPACE〈宇宙〉

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スペース 田中カナタ @newlife_v

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