第3話 欲望と期待
属性なし、そう紙に映っていた。
少し驚いたが覗き込んでいたシトリーの方は驚愕に目を見開いていた。
「うそ、こんなことある…?」
そう口から漏れ出るくらいには。
「ま、まぁ属性がなくても体質でなんとかなるかもだから!」
気を使うように言った。
「別に慰めなくて良い。あと、あなたに着いて行くなんて言ってない。」
「でも、君は一人でこんな辺鄙な場所で生きれるの?少なくとも私と一緒に来たほうが楽だと思うけど。」
私についてくる他ないと目で訴えてくる。たしかに一人でここで生き延びるのは至難の業だろう。冬になれば一発で終わる。でも
「生きる必要がない」
どうせ生きてついて行ったとしても、私を受け入れてくれる保障はない。忌み嫌われていた理由を知られなければもしかしたらなどという希望は持たないほうが絶望して死ぬよりかはマシに死ねるだろう。
「君は死にたいのかい?」
「苦しんで生きるよりかはずっとマシ」
「何故、これから先が苦しくなると決めつけるんだい?私には何故君が忌み子と呼ばれていたのかは知らない。だとしても、こことは環境が違う。価値観や倫理観がこことは全くの別物だ。そこでならと希望も持たずにここで果てるのか君は?」
「持っても叶わなければ意味がない。それに、あのときどうやって力を出したかもわからない、魔術も使えない。勉強もしたことがない。せいぜい肉体労働で使い潰されるだけ。ましてや、あなたが私を熱心に思いとどまらせる理由もないでしょ?」
希望を持つことから逃げるように言った。希望とは激薬だ、夢や希望など叶うことのほうが少ない。そのたびに人は落胆し、絶望する。だからと訴えるも、シトリーは食い下がらない。
「言葉を飾っても君は頷かないだろう。だから正直に言おう。君が普通の人間なら私も熱心に思いとどまらせるようなことはしない」
そこで一呼吸置くと、歪な笑みを浮かべ話を続けた。自身の欲望を。
「私は知りたいんだ。君のあの力の根源を。魔力を使わずに人外のような力を振るう原因を!魔術学校を勧めたのもそのためさ、あそこなら君の体質を研究することができるからね。たとえ君が学生としてダメダメでも研究材料としては価値がある。君にだって悪い話じゃない。君は普通に学生生活を送り、偶に研究室に顔を出すだけで今より良い生活を送れるんだ。どうせ死ぬならその後でもいいだろう?悪いようにはしないよう便宜は図る。お互いにとって利はあるはずだ。」
一気に捲し立てるシトリーに私は気圧された。でも、価値があると言われたとき背筋が震えた。
シトリーはただ私を利用したいだけなのは分かってる。それで喜ぶのがおかしいことも分かってる。それでも私の心が求められることに喜んでしまう。抑え込みたくても理性より感情が答えを出てしまった。
「死ぬのはその後でいい」
そう小さくつぶやいた。
「ん?何だって?」
何処か期待するように私に問いかけた。
私がどう答えるのかわかっているのだろう。敵わないなと苦笑して、私ははっきりと口を開いた。
「その話受け入れるよ。私には価値があるんでしょ?なら、価値がなくなるまでは生きてみるよ。」
「言質はとったからね。」
そう言うと嬉しそうに笑った。
これから先私がどうなるかは分からない。けど、少しは期待してもいいよね。今よりマシだって、私も生きてていいんだって。
そうして私は星を見上げた。私の心に答えるかのように黄色い星が一際輝いた、ような気がした。
《あとがき》
書き方を少し変えてみました。
星香の情緒どうなってるんでしょうね笑
では、次回があればまた次回まで。
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