第2話 甕 星香

 暗い水の中、例えるならそんなところに私はいた。上も下もなく、ただ暗いだけの場所。

「ここはあの世?」

 口から出た疑問に答えは返ってこない。代わりに聞こえるのは重々しい鎖の音。

(まるで、私を縛っているみたい。ならここは地獄ね。)

 あの世界から離れられるなら地獄でもどこでもいいと、そう考えまた眠りについた。



「んうゅ…?」

 目が覚めると先ほどとは違う景色が広がっていた。

「ようやく、お目覚めかな?」

 声のする方へ顔を上げると、焚き火な反対側に青黎い髪の女がいた。

 認識すると同時に警戒しようとしたが体が動かない。

「悪いけど体は縛らせてもらったよ。どんな理由があったかは知らないけど、人を殺したんだからね。」

 まぁ、殺人なんてここいらじゃそんな珍しくもないけどと、苦笑しながら女は言った。

「ひとまず、君は私の質問に答える。いいね?」

 身動きできない状態では頷くしかない。

「よし。まず、なぜ集落の人間を皆殺しにしたんだい?」

 頭の中を覗き込むような目で聞く。

「許せなかった。だから殺した。」

「詳しく聞いても?」

「生まれたときから私は忌み嫌われていた。何もしていないのに殴り、男でも見た目が良いからと凌辱され、助ける人は誰も居なかった。」

 真剣に女は聞いていたが、途中から混乱しているように首を傾げ、声を上げた。

「えっ、君そんな見た目で男なの!?」

 シリアスを壊すような内容を。

「この話の流れでそれ言う?」

「いや、済まないてっきり女だとばかり…」

 こほんっと、咳払いをして話しを戻す。

「とりあえず、理由はわかった。なら、あのとき君の髪が黒くなり、異常な力があった。それについは?」

 身を乗り出しながら聞いた。

「? 知らない。たしかに力が湧いてくるような感覚はあった、でも何故かは分からないし髪が黒くなっていたことも知らない。」

 女は残念そうに肩を落とした。

 いや、そんなに残念がられても…

 ハァと、まだ残念そうにため息を吐きながら、最初にするべきだろうと言いたくなる質問をした。

「君名前は?最初にやれというのは無しだよ?」

「先に言わないでよ…私は甕星香。(みか 

 せいか)」

「この国では星香の方がなまえかな?」

「それ以外ないでしょ。そっちも教えて」

 たしかに、ミカでも名前っぽいけど。

「私の国では、というよりほとんどが名前が先に来るんだよ。で、私はシトリー=フューン。これでも、名前の知れてる方なんだ。」

 シトリーはドヤァと効果音の付きそうな憎たらしい顔で自己紹介をした。

「うざい」

「そう言わない、かわいい顔が台無しだよ?」

「だから私は男だ!」

 ゴメンゴメンとひとしきり笑うと真剣な表情に戻った。

「君、私の国に来なよ。面白い体質も持ってるみたいだし魔術学校にピッタリだと思う。」

 急に真剣な顔になったかと思ったらわけのわかんない事を言い出した。

「魔術?なんて知らないけど。」

「魔術を知らないの?ならそこから教えよう。」

 そう言うとシトリーは手を前に出した。

 疑問に思っていると手のひらの上に稲妻が発生した。

 驚愕に目を見開いていると暫くして稲妻を消した。

「これが魔術だ。人間は皆生まれつき何らかの属性の魔力を持っている。」

「これが私にも?」

「あぁ、火、水、雷、土、風を基本として何らかの魔力がある。」

 そう言うと、腰のポーチから紙を取り出した。

「それは?」

「これは、簡易的な魔力診断をする道具さ。これを持って意識を集中すれば自分がなんの属性を扱えるのかが判るっていうね。」

 そう言って縛っていた縄を解き紙を1枚私に渡す。

 紙を受け取るとやってみな?と首を傾げた。

「そんな簡単にわかるもんなの?」

「まぁまぁ、騙されたと思って。」

 仕方がないと半信半疑で意識を集中すると紙に文字が浮かび上がった。


 甕 星香

 属性 無し と


 覗き込んで見ていたシトリーと私は思わず顔を見合わせた。


《あとがき》

 またガチャガチャしてる気がする〜。読みづらかったり混乱したらすみません。前回よりはちょっと改善されてると思うので許してください。次があるならまた次回お会いしましょう。


 

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