13話

ピーっという聞きたくない音が部屋に流れた。

ミアは、ミアは…

「ご愁傷さまです。」

医者が私にそう無機質な声で伝えた。

私は幼子のように泣きじゃくった。その姿を見たフィリップは私の肩を抱き、一緒に泣いた。

ミアはもう戻ってこないのだ。

私が犯した失敗のせいで。

ミアを失った私は抜け殻のようになってしまった。

美しい翡翠の瞳を隠し静かに眠るミアの額に唇にキスをした。

そして私は医者に

「ミアを連れ帰らせてくれ。私の方で供養する。」と頼んだ。

医者は静かに涙を流し続け、抜け殻のようになった私を哀れに思ったのか

「分かりました。」とだけ返事をして治療室を去っていった。


私とミアとフィリップだけになった時、フィリップは

「お前、ミアちゃんをどうするんだ?お前のお袋さんのところに埋めるか?」

そう聞いてきた。

私は、私の耳はもうそんな話は聞いていなかった。

「フィリップ、今までありがとう。私は今からミアとともに最後の実験をするよ。じゃあな。」

そう私はフィリップに告げ、呼び止めるフィリップの声を無視して、繋いであった管をすべて外してミアを抱えて治療室を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る