9話
散々はしゃいだせいなのか、家に帰りつく頃には、ミアは眠ってしまった。私の腕の中ですやすやと寝息を立てるミアに癒されながら家の扉を開けた。
「オカエリナサイマセ、マスター。」とSilkyたちが玄関に揃って出迎えてくれた。
「ただいま。お前たち遅くなってすまないな。」そう私が謝ると、Silkyが首を横に振り「オ気ニナサラナイデクダサイ。私タチハ、マスターニヨッテ生ミ出サレタ身。マスターガ待テト仰ラレレバ、タトエ我ガ身ガ錆ビ付イテ朽チ果テヨウトモ、イツマデモコノ場所デ待ッテイマスカラ。」と言った。
私に、誠心誠意尽くすと設定しているため私の命令には絶対の忠義を見せる人形たち。その子たちに対して私は、少し罪悪感を感じた。
「マスター?ドウナサイマシタ?」とリャナンシーが私の顔を覗き込んできた。
「いや、お前たちには可哀想な思いをさせているのではないかと考えてしまってな。」と暗い顔でそう言うと、ロビンが
「マスター、キニシナクテイインダヨ?ボクタチハマスターガダイスキデ、コウシテルンダカラ。」と歯車が回っている瞳を細めて微笑みながら、そう言った。
「そうか、お前たちがそう思うならそれでいいか…」と言うと、リャナンシーとロビンが顔を見合わせてニコッと笑い
「マスター。ソレヨリモハヤク、夕食ニシマショウ?」と言い、私の袖を引っ張ってダイニングへと連れて行った。
ダイニングに着くと、「ミア様ハ、起コサレマスカ?」とBrownieが聞いてきた。無理に起こすのも可哀想と思い、「とりあえず靴をぬがせてソファーに寝かせておいてくれ。」と言った。すると、Brownieが、「ミア様ノ着ラレテイルコノ服ハドウサレルノデスカ?」と聞いてきた。どうすると言われても、着させたままの方が…と頭を悩ませていると、Brownieが
「マスター。コノワンピースハ、オロシタテノモノデハ?」と首を傾げて言った。
そういえば、この服はつい最近買ったばかりのものだ。Brownieの記憶力にはいつも驚かされる。
「そうだったな。下ろし立てならシワが付くと困るから、部屋着になりそうなものを着せてやってくれ。」と私が言うと、カシコマリマシタと言い、ミアを起こして部屋へ連れて行った。
ふわりとした服を着たミアと共に、夕食を食べ海を見に行った時に買ったお土産をSilkyたちに渡した。
「マスタートミア様ハ優シイオ方デスネ。私タチ人形ニコウイッタモノヲ買ッテクダサルナンテ。」
そう言って、泣きそうな顔をした。
「いつものお礼だ。受け取ってくれ。」と言うと「大事ニ使ワセテ頂キマス。他ノ皆ニ渡シテキマスネ。」そう言って、パタパタとBrownieたちの元へ行き、キャッキャ騒ぎながら嬉しそうにしていた。
その姿を微笑ましく思い見ていると、ミアが私の膝に乗ってきた。
「どうした?」
「おっさん、お土産買ってよかったね!」
と内緒話をするようにヒソヒソと話した。
「そうだな。喜んでくれてるみたいでよかったな。」
「うん!ねぇおっさん、またお出かけしようね!」とミアは瞳をキラキラさせて、次はどこに行こうか、何をしようかと楽しそうに話した。私はそんなミアを愛おしく思いながら軽く相槌を打った。
そんな他愛もない話をしていると、ミアが私の膝の上でうつらうつらとし始めた。時計を見ればもう既に21時を過ぎていて、良い子はもう寝る時間だった。私は、急いでSilkyたちを呼び、ミアの寝支度を任せた。私も、明日の仕事の準備をしに実験室に戻った。それから私は風呂に入り、仕事の注文リストを眺めながら眠りについた。
翌日、いつものようにSilkyとBrownieの作った朝食をミアと一緒に食べていると、つけっぱなしにしていたステレオから爆発が起き火災事故が発生したというニュースが流れた。
「おうちが燃えちゃったんだ。お店の人可哀想。」とエッグベネディクトを頬張りながら、ミアがぼそりと呟いた。私は、ミアの呟きに「そうだな。」と返事をし、ステレオから流れるニュースの続きに耳を傾けた。
「その店では、機械人形を導入しており、店主が開店の準備のため機械人形を起動させたところ爆発が発生したそうです。怪我人はいませんでした。それでは次のニュースです。先日の·····」
機械人形。それは、計算石と魔晶石に化学薬品を使ってコアに特殊加工し、鉱石同士による化学反応によって動く代物。ある時には家事ロボットや補助ロボットとして使われたり、またある時には戦闘兵器として使われる。
一部の人しか利用しなかった機械人形が最近では、「へたなロボットよりもこの機械の方が性能がいい。」などとかなり注目を浴び、様々な会社が市場を独占しようと日々、機械人形を作り続けている。そのせいで、劣化品が市場に多く出回るという問題も起きている。
「ねぇ、おっさん。なんでずっとトーストを銜えてるの?」とミアからそう話しかけられ、私はハッとして急いでトーストを食べた。その姿を見たミアは元から大きな翡翠の瞳をさらに大きくさせたが、すぐにふふっと笑った。
「すまないな、考え事をしてしまったみたいだ。」と謝ると、「ううん。気にしなくていいよ。」と言い、ミアは微笑んだ。
「しかし、機械人形による爆発騒ぎとはな。起動中に一体何をどうしたらそんな爆発するだろうか。」そう呟くと、
「機械人形って爆発するの?じゃあSilkyたちも爆発しちゃうの?」と驚きと恐怖の入り交じった声色で言った。
「いや、私の作った機械人形たちは爆発などしない。そう設計してあるし、私は爆発するようなヘマはしない。」そう自信満々で言うと、ミアは「そっか、良かった。」と言い安堵のため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます