第4話 7/30 作戦会議
その日は猛暑だった
いや、その日だけではない
夏休みに入ってからというもの、都心では最高気温35度超えの猛暑日がもう何日も続いていた
「熱中症に警戒してください」
最近聞き慣れた言葉だ
どこか他人事のように思っていた
まさか、俺がなるとは…
寝苦しさで早朝早くに目が覚めてしまった俺は、部活の午前練に顔を出していた
バスケをすると気が紛れる
キングへの怒りをぶつけるかのように本気で動いていた俺は、急に目の前が真っ暗になり、立っていられなくなった
油断していた 体育館の中というのは、外よりも気温が高いのだ 日差しがない分、照りつけるような暑さではないが、空気がこもり暑いのだ。炎天下の屋外に出た時に涼しいと感じるほどだ 後輩への差し入れのつもりで持ってきたスポーツドリンクをガブ飲みし、体育館横で横になる俺… なんとも情けない、元キャプテンだ…
奈緒「太陽先輩、大丈夫ですか? 調子どうですか?」
奈緒が心配して、冷たいドリンクと冷やしたタオルを持って様子を見に来てくれる…
俺「ああ… もうちょっと横になってれば大丈夫…」
奈緒「ドリンクととタオルここ置いておきますね。」
奈緒はしっかり者だと思う。
もうすっかりマネージャーの代表として違和感がない。
結衣も、あの彩の一件があってからなのか、なにかが吹っ切れたようで、メンバーへ自分から積極的にコミュニケーションを取っている。よかった。そんな2人の姿を見れて俺は少しうれしい
────────────────────
健人「どうした、太陽!笑 なんか、ぶっ倒れちゃったんだって??笑」
俺「ああ… なんとも情けないよ…」
俺と健人は待ち合わせ場所である、3Aの教室にて健人が買ってきてくれたハンバーガーセットを食べていた。
健人も少し早めに来た。
家にいても受験勉強には身が入らないと…
健人は自分が食べる分だけでなく、部活後、そのままスタートじゃお腹すくだろうと、
奈緒や結衣の分、そしてまさかの俺の分まで…
お菓子やお茶、ジュース等も用意して、持ってきてくれた。用意した差し入れを、自分でガブ飲みする俺とは大違いだ…
健人「…太陽、彩ちゃんどうだった? 昨日会いに行ったんだろ? 会えたのか?」
俺「…ああ、会えた事は会えたんだけどさ…
相当まいっちゃってる… 元気取り戻してくれるのは、まだまだ先になりそうだ…」
健人「そうか… まぁ、そりゃそうだわな… 俺さ、もう少し落ち着いたら、奈緒ちゃんと、結衣ちゃん声かけて、彩ちゃんのとこ行こうかと思ってんだ。いいよな? その時は、お前も来いよな。」
俺「もちろん!いいに決まってるだろ! ありがとな!頼むよ!」
─────
奈緒 & 結衣「─こんにちわー!お待たせしましたー」
健人「おー!奈緒ちゃん、結衣ちゃん! おつかれさん! なんか、太陽が余計な仕事増やしたらしいじゃん!笑 昼メシまだでしょ?! ハンバーガーとかお菓子とか買ってきたからさ! 好きなの食べて!」
太陽「…余計な仕事っ… 否定はできないっ…」
奈緒「えぇー!いいんですかぁ!? ありがとうございますっ! いただきますっ! お腹すいたー!じゃあ、とりあえずハンバーガーだなー」
結衣「ありがとうございます。頂きます」
健人「おう、食べな、食べな! まぁ、あれだな! あんま気合入れてピリピリやっても息詰まっちゃうからさ。お菓子とかもつまみながら、ざっくばらんにやろうぜ!」
奈緒「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
─────────────────────
彩はその日は来なかった
後からグループトークにメッセージが入り驚いたが、その日は来てくれようとしてたらしい。
…が、急遽家の予定が入り、行けなくなってしまったと。次回は必ず行くからねと。
彩のほうから連絡が入った事もそうだが、次回の約束事まで出てきた事に一同少し安心する
─────────────────────
健人は持ってきたPCを立ち上げる─
健人「それじゃあ、奈緒ちゃん、結衣ちゃん、食べながらで大丈夫だからな?
…あぁ、結衣ちゃん、この前キングと思われるやつの投稿状況リストありがとな!
─俺と太陽は今回初めてBBを観る事になって…
さっき太陽とも話してたんだけどよ?
とりあえず今の段階で確認したい事は2つだ!
①BBってこれですべてか?
②なんでこのキングと思われるやつ、【♡マークにアルファベット一文字】のやつは毎月こんなにいいね👍を獲得し続けられるのか?」
太陽「②で俺らが不思議なのはさ、ハメ撮り画像流出だとか、プールでポロリしちゃっただとか、教師が生徒ホテル連れ込むだとか、そういうのが人気集めるのはわかるんだ。 …けど、どうして球技大会だとか、2月の2ゾロ目とか… そういう、どうでもいいのが、こんなたくさんのいいね👍を集められるのか?ってことだ… 教員Aの頭皮事情なんか… 誰も興味ないだろ…」
奈緒「なるほどですね! それじゃあ簡単そうなほうから… まず②─ なんでこんなしょうもない内容でもいいね👍を安定してたくさん獲得できるのか? ってほうですが… 【命令】を使ってるんだと思います…」
健人「ほうほう!」
奈緒「イメージ湧きますかね? 先述のメールの通り、キングは【囚人】には月1回、【奴隷】に至ってはその月中ずっと命令を下す事ができます。 直接、金品等の要求はできない事になってますが… たとえば【奴隷】には、【お前のいいね👍持ち分は全部俺につけろ!】とかってできると思うんですよ。
で、それだけで充分にならなかったら、【囚人】へ出せる命令からも少し補填して…って感じで、翌月もキングの立場は安泰になる、いいね👍数を【命令】を使って獲得できるんです…
だから、極端な話、ほんとに人気を集められる投稿は最初の1回だけでいい… 1回キングになれれば、その後は、うまくやればキングはキングであり続けられるんです─」
俺「なるほどー…たしかに……」
健人「なるほどな! たしかにそう聞くと、キングはうまくやればずっとキングでいられそうだな…」
結衣「わたしも、②に関しては、今奈緒先輩がおっしゃった通りかと─」
健人「─オッケ! ありがと! 太陽も大丈夫か? それじゃ①ってどうなんだろうな? なんかよ? これだけじゃ、普通の投稿サイトと変わらないっつーか、ほんとに、ヤバイ投稿…たとえばー
ごめんな、結衣ちゃん。結衣ちゃんが投稿した、彩ちゃんのお誘いメッセージとか、どこにいった? 消されたのか? それとも…まだ奥があるのか?」
結衣「─いえ、まだ奥があるのかどうかは正直わたしも…。 最初の投稿先は共通の掲示板ですし…。自分で消してはいないので、消されたのか…」
奈緒「─すみませんっ、わたしもわからずです。やばいのは消されてるのか、別のところに移されているのか… 彩先輩のお誘いメッセージに限って言えば、実際に23日夜までは、通常掲示板のところにありましたー」
俺「─そっか。それじゃあ、今のとこ、そこはわからずか… あとは今後、どうやってキングを追うかだな─ たとえば、キングのBBへのアクセス履歴、位置情報とかを調べる─とか。可能かな? そんな事…」
健人「いや、それは厳しいだろ… サイト管理してる側には俺らの情報は筒抜けだが… 逆は普通一般人には追えるもんじゃないんだよ…」
一同「─……。」
健人「…うん。じゃあ、今日はこれくらいにしとくか? あまり長い時間やればいい案出てくるって訳でもないしな。」
俺「─そうだな。それじゃ、各々いい案浮かんだり、新しい情報掴んだりしたら、グループトークに共有するって事で! 次回は1週間から10日後くらいで! ちゃんとした日程はまた追って決めよう! 彩も来てくれるって言ってるし!」
奈緒「了解ですっ!今日ありがとうございましたっ!」
結衣「了解しました!ありがとうございました」
健人「了解ー! 次回は彩ちゃん確実に来れる日に俺らが合わせてやろうぜ。」
俺「健人サンキュ!頼むわ!」
─────────────────────
─奈緒から電話がかかってきたのは、別れた直後の事だった─
─太陽先輩─
─この後、時間もらえませんか?─
─内緒の相談があります─
─健人先輩にも 彩先輩にも 結衣ちゃんにも内緒の─
─わがまま言ってごめんなさいっ─
─できれば、わたしの部屋で─
─どうした? 奈緒ちゃん?─
─その日─
─俺と奈緒ちゃんは─
─誰にも言えない─
─秘密を作った─
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます