第5話 7/30 夜 太陽と奈緒

鈴木奈緒とは幼馴染だった─

幼稚園から高校までずっと一緒。

でも一緒に遊んでたのはもっと小さな時から。

気付いた頃には親も交えて一緒に遊んでいた。

写真が残っている─

近所の公園で一緒に遊んだり、夏祭り、花火、動物園に一緒に行ったりもしたようだ─

写真を見ても、思い出す事ができないくらい小さな時から、俺と奈緒ちゃんは一緒だった─

家も近い─

いや、正確にはベランダ同士が近い。

お互いベランダに出ると、顔を合わせて声を張らずしても会話ができる。

が、お互いの家と家の間に、細い水路が通っている。そのため、正規の道で奈緒ちゃん宅まで行くには、水路を渡れるところまで歩き、ぐるっと回る必要があるため、歩くと5分くらいかかる。そんな位置関係だった─

昔は、水路をジャンプする事で行き来する事ができた。

俺と奈緒ちゃんは、それを「ワープ」と呼んでいた。ワープはある時、危険だからとフェンスが張られ、普通の感覚では通ってはいけないところになった。

俺が奈緒ちゃんの家に行くのに使用し、滑って転んで頭を打ち、救急車で運ばれた後からだ─


幼稚園に入り、小学校に入り、中学校に入り…

1つの学年の違いは2人の距離を少しずつ遠ざける。別に嫌いになったわけじゃない… が、2人がそれぞれ各々の社会を形成していく中で、 1つの学年の違いは大きな分岐点となった─

だんだん話さなくなった。中学校の時がピークだった。俺は男子バスケ部、奈緒ちゃんは1つ下で女子バスケ部。練習で顔を合わせる事があっても、まともに会話をした覚えはほとんどない…

高校に入り、また一緒になった。今度は同じ部活の仲間、ひとつ下のマネージャーとして。

また話はするようになったが、そういえば、なぜかお互い、幼少の頃の話をする事はなかった─ 別に全く隠したりしてる訳ではない。ただなぜか、幼少の話はしなかった。

おそらく、俺と奈緒ちゃんが幼馴染だと知ってるのは、彩と健人くらいだ─


─不意に奈緒ちゃんの家に行く事になり、そんな事を思い返していた─


─────


─なんか、久しぶりだな。奈緒ちゃんと2人でまともに話すの─


奈緒は、自分から連絡してきたものの、やはり少し寄りたいところがある─との事で、遅い時間スタートとなり、待ち合わせは20時となった─


奈緒ちゃんは、今日は1人らしい─


俺はふと彩の事が脳裏に浮かぶ─


いくら相手が奈緒ちゃんだとしても、彼氏が夜中に他の女の子の部屋に2人きりでいると知ったらどう思うだろう。間違いなくいい思いはしないだろう─


内緒の相談? なんだろう? なるべく早く帰ろう。そう考えていた─


約束の時間が近付き、奈緒にメッセージを送る


─────


俺「おつかれさま!そろそろ20時だけど、行って大丈夫?」


奈緒「こんばんわっ、ありがとうございますっ 大丈夫ですっ」


俺「了解!1人だし、危ないからちゃんとカギ閉めときな!チェーンも忘れちゃダメだよ!」


奈緒「ありがとうございますっ笑 緊急時は、ワープを使ってすぐ助けに来てくださいっ!笑」


─────


白のノンスリーブシャツに、ベージュ色のショートパンツ姿で出迎えてくれた奈緒ちゃんは、とても可愛いかった。

いや、もともと可愛い子だとは思っていた。

それもそのはず。 奈緒ちゃんは最終的にグランプリにこそなれなかったが、【ミス・A高校】最終候補者の1人だった


普段、部活でのジャージ姿しか見てないので、家着を見るだけで、やたら女の子を感じる…


やばい─

かわいい─

俺は理性を保てるだろうか─


奈緒「今、麦茶持っていきますね。上で待っててくださいっ!」


俺「あっ、ああ…」


10数年振りに入る、奈緒の部屋─

女の子らしい、いい香りがする─


奈緒「おまたせしましたー! ちょっとこっち置きますね。」


俺「おぉ、ありがと…」


緊張で落ち着かない─

言葉もうまくでて来ない─


奈緒「わがまま言って来てもらって… ありがとうございますっ。なんか、すっごい久しぶりですよねっ!うちに入るのっ!」


奈緒はノートPCを持ってきて起動させ、俺に寄り添うようにちょこんと座った─


(いや、近い近い近い近いー)


距離感がおかしい─

奈緒の頭が目の前にあり、シャンプーの香りと女の子らしい、いい香りが漂ってくる… 着ているシャツは胸元が広く空いており、目を落とすと、下着どころかその中まで見えてしまいそうだ… 目の向けどころに困った…


奈緒「…先輩っ、どうしたんですか…? 上ばっかり見て… 大丈夫ですか?」


俺「…あっ…ああ! ごめんごめん。大丈夫だよ」


─目を落とすと、いろいろ見えてしまいそうで─とは言えなかった─


奈緒「…先輩… これ見てもらえますか…?」


奈緒はPCでBBを起動させる…

「通知」を開こうとしてるところはなんとなく見えたが、あまりPC画面を観ようとすると、奈緒の胸元に目が向いてしまいそうで… 次に声かけられるまで、そっぽ向いていた。


奈緒「…先輩…? …これです…」


俺「…おっ…ぉぉっ…」


胸元に目が行かないよう、おそるおそる、奈緒が示すほうに目を向けた─


俺は目を見開いた─

表示された場面は、黒背景に赤文字にてこう表示されていた─



─────────────────────


    囚人 鈴木奈緒への命令



  カメラをONにし、男に襲われなさい



─────────────────────



俺「…───なに───コレ───?───」



奈緒は真っ直ぐ、大粒の涙を流した─



奈緒「──わたしも─なんです──」


俺「──え──?──」


奈緒「──わたしも【囚人】なんです──」


俺「──えっ?…ちょっ…どういう──」



俺は状況をすぐには理解し切れなかった─

奈緒は真っ直ぐに涙を流しながら続けた─



奈緒「…先輩っ… キングのいう通りにして…くれますか…?…」


俺「…なに言ってんだ…」


俺「…そんな事っ… できるわけ…」



キングに対し再び怒りが込み上げる─



奈緒「……お願いっ……」


奈緒「……もう…時間がないっ……」


奈緒「…明日までに…承認されないと……【奴隷】にっ…」


奈緒「…【奴隷】には… なりたくないっ…」



奈緒は大粒の涙を流し続けた─



俺「…そんな事… そんな事できるわけないだろっ!!!」



動けない俺に─

奈緒は涙を流しながらも─

笑顔を作り─

精一杯の後押しをしてくれた─



奈緒「──大丈夫──」


奈緒「…ちゃんと、今日だけです…」


奈緒「…今日が終わったら… また…明日から…いつも通りです…」


奈緒「…誰にも…言いませんからっ…」


奈緒「…彩先輩にも。…健人先輩にも…」


奈緒「…なかった事に…しますから……」


奈緒「……………ね?……………」


俺「──奈緒……ちゃんっ………」



─────────────────────



俺は最低だ─


昔ながらの幼馴染を─


かわいい後輩を─


本気で襲った─


途中、キングからの承認が入ったのは気付いた─


でも、俺はやめなかった─


涙を流しながら、我慢する奈緒の顔を見て、興奮した─


最後までやり続けた─


自分が満足するまで─


キングに言われたとか関係ない─


俺が最後まで続けたかったんだ─










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