第41話 ラスボスのエンドロール

4/15 11:59 麻薙光学 旧市街


 ゴリッ。


 土埃と煙の中でリボルバーを突きつけられた。


 そして最後の瞬間、彼からのテレパシーが飛んできた。相手がそんなことを出来るのにも、自分がそれを難なく受信出来るのにも驚いた。


「俺の勝ちだ。お前はどこかに消えて自由に暮らしてしまえ」


 その後に頭の中に彼の数年の人生が走馬灯のように流れてきた。悲しみと諦め、そして新たな希望。彼のことを僕はとても深く理解した。お姉ちゃんのことも。僕は彼らにもう敵意は向けられないだろうと思った。


 そして、次の瞬間僕は見知らぬ砂漠で泣いていた。負けて気づいたら辺境に飛ばされているなんて、まるでゲームの魔王じゃないか。


 僕はそのまま後ろに倒れて太陽を仰ぐ。彼との戦いは負けイベントだったのだろう。ライバルかと思ったらラスボスだったのだ。


 周りを見渡すがただの砂漠だ。セーブポイントになりそうなシンボルもなければ、回復してくれる神父もいない。戦いの後で血は固まり、鈍い痛みがずっと続いている。手元の錠剤もわずかだし、薬がプラセボと理解ってしまった今、服用しても能力が発現するかどうかすらわからない。全く。全然親切設計じゃないRPGじゃないか。


「アハハ、ハハハハハ」


 僕はやっと重荷を下ろせたような気分になる。わけもなく踊りたい気分だ。白衣はうす汚れてそのうち全く違う色になるだろう。照り付ける太陽のせいで、とにかく暑い。脱いでしまったっていいかもしれない。それでも、僕は自由になるという夢を叶えたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る