第36話 ラスボスの絶望と覚醒

4/15 11:48 麻薙光学 旧市街


 頭が真っ白になった。呆然としていた。


 何が起きた? 僕の影響範囲外から来た物質が、僕の空間を押しつぶしてきた。僕を中心に周りの地面が焦げている。


「う、嘘だろ。これ。お前が?」

「ああ。星体(せいたい)投射(とうしゃ)。オーバードーズして本気出せば宇宙まで手を伸ばせる。地球の反対側のものだって動かせる。ちなみに俺の能力で爆発範囲もコントロールした完璧な隕石だ」

「そ、そんなことが可能なはずは……。え。うわああああああああああ」


 大きな轟音で上空を見るとごく小さな点が光っているように見える。2つ目の流星か。大慌てで、震えた手で一掴みの薬剤を口に含む。少しこぼれる。硬質化。

だめだ。次食らったら。もう耐えきれない。圧倒的な恐怖と絶望に思わず僕は叫んでいた。


「くそおおおおおおおおおおおおおお」


 気づいたら認めたくない大きな絶望に突き動かされて叫んでいた。


 だが、その瞬間、硬質化は解けていないのに、知覚がさらに広がって意識がクリアになった。やるべきことが明らかになる。防御だ。地面が隆起し、自分を守るように殻上に重なっていく。視界にある廃ビルが、根元から宙に浮き、落下する隕石の減速をすべく、中空に留まる。もちろん配置は適当だけど、僕に向かってくるんだからその線上にあればいい。そしてその間にごく薄いが海の水を浮かせてカーテンをつくる。さらに瓦礫のゴミを集めて操り、大きな腕の形にする。そう、イメージのつきやすい形にすると動かしやすいのだ。暴発した僕の恐怖の感情が、行き場を見つけたような感覚だった。これならあるいは宮台君の操る隕石を防いで攻撃に転じられるかもしれない。

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