第15話 ラスボスの戦い
4/13 13:28 xx光学 住宅街
突然の銃声、煙幕ののちに数人が乱入してきた。煙幕で目は見えないが、意識の拡張により誰がどこにいるかは手に取るようにわかる。発砲されているけど肉体の硬質化により体に受けた銃弾は全て弾かれる。
「機構の部隊か。キミドリのおじさんはマネージャー気取るならその辺もちゃんとしてくれよ。僕が戦いたいのは麻薙研究室のメンバーだけで雑魚には興味ないのにさ」
発砲が止まった。弾切れかな。硬質化を解く。
「突撃っ!!」
おそらく隊長であろう人間の檄の直後、新たに数人が僕に向かってやってきた。手ごろな位置にいる能力者? かな、手ぶらの人間がいるのでそいつを殴りつける。いや、殴りつけよう……とした瞬間、敵の体自体が変形して無数の針のようなもので尖った。剣山みたいだな。けど肉体強化された僕の拳は衝撃波すら出せるんだ、わざわざ触れなくてもいい。寸止めして虚空に突きを放つと衝撃波が敵を吹き飛ばす。どうやら後ろにいたほかの能力者が串刺しになったようだ。思わぬ偶然がちょっと嬉しい。
「これはキルポイント高いんじゃないかな」
仲間に刺さっていた針人間の頭を硬質化した拳で潰した。形が変わる能力なんて珍しいから少しだけ惜しいけど。
「お前、今2種類の力を使ったのか……?」
先ほど檄を飛ばした隊長であろう男が驚愕したように言ってくる。もう戦意喪失か。
「2種類? ああ、そうだね肉体強化と硬質化のことか」
意識の拡大により、範囲内のすべての動きがわかることについては気づいてすらいないみたいだ。がっかりだね。
「【無色透明の薬剤師】は、【黒の薬剤師】と同じく副作用なしに魔薬を出来る人物だと聞いていた……2種類もの力を使えるなんて話……」
「僕は魔法使いだ。君が考えているよりもっと高度ですごいことをしてる。そんなんじゃこのゲームの卓にはつけない」
そのまま強化した肉体でさっき銃撃してきた人間に襲い掛かって、紙きれみたいに引きちぎる。背後から2人の能力者が襲ってくるのを肉体強化の高速移動でかわして背後にまわる。彼らの腕が刃物のようになっている。後ろの守りはお粗末だ。そのまま殴ってもよかったけど、なんとなく念動力を使って瓦礫を飛ばして殺した。敵を揺さぶるパフォーマンスってやつだ。隊長はもうパニックだ。訓練されているはずの兵士が平常心を失っていくのをみるのは、見ていて結構愉快なんだよね。
「なんだこれ!! くそ!! くそおおおおおおおおお」
隊長の体が眩い炎で燃え上がった。これはおそらく常用量を超えての薬剤投与。効果発現までが短いから注射での使用だろう。
多量の薬剤による刺激を受けた躁臓の応答による炎。オーバードーズした薬剤の代謝は間に合わず、肉体を焼き尽くすまで炎は消えないだろう。別に僕が触らなくても攻撃をよけ続けていたら炭になっていく。でもそれではつまらない。
「じゃあ僕も」
皮膚の表面が熱くなるのを感じる。目の前の男が文字通り命を燃やして作り上げた炎より、一回り以上大きな炎が自分を包むのを感じた。これが格ってやつだ。ウケるな。
「あっはっはっはははっははは」
「うおおおおおおおおおおおおお」
最後の時間で襲ってくることもなかった。絶望の表情のまま燃え尽きて消えていく男。
「ああ本当にかわいそうだ。何者にもなれず消えていく」
ひとしきり笑ったが、それが収まるとなんだか寂しいような気持ちになる。
次第に小さくなりながら揺らめく火をぼーっと眺めていると、人が近づいてくるのを拡張された五感で感じた。キミドリだろう。
「かわいそうな人がまたやってきた。ははは」
目に見えるほどに近づいた人影に僕は言った。
「まったくさー迎えが遅いよー」
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