君の声しか
ボウリングに行った日の夜。
僕はベットの上でうずうずして居ても立っても居られなくなった。
彼女からの着信はまだ来ないか?ひょっとして約束を忘れられている?自分がほかにやることがなくなって、後は彼女から電話が掛かってくるだけなのに..............
自分から掛けてしまおうか?でも、もし彼女が何かしている途中だったらどうしよう。電話する前にメールを送るべきか?
こういう時に正解が分からなくなるのが鬱陶しい。
数分した後、やっと私はメールを送ることを決心した。
「いつから電話できそう?っと」
何回も自分の書いた文章に不備がないかを確認し、私はやっとの思いで送信ボタンを押した。
当然のことながら、既読はすぐには付かなかった。僕はもどかしさを感じて、ベットの上でもだえ苦しむ。
「早く既読つかないかな?あーくそ!!」
君と早く話したい、君に早く僕に夢中になって欲しい。そんな僕の純粋なモノが、17歳の僕の心を酔わせ、惑わせ、狂わせる。
どのくらい経ったのだろうか、胎児のように目をぎゅっと瞑って、まるで胎児が母体の心音を感じるみたいに彼女との思い出に浸っていた。僕には永久に感じた。多分実際には数十分だったのだろうけど。
それは突然だった。
ブーブ
スマホが唸って暴れ出す。
慌てて飛び起きてスマホの通知を確認する。そこには彼女のメールのアイコンが出ていた。
僕はパスワードを急いで入力した。(顔認証は謎に反応しなかった)
あとは通話ボタンを押すだけだ。
僕は深呼吸した。誰だって好きな人と一対一で話すのなら緊張するはず、落ち着いていこう。
僕は今にも震え始めそうな手でそっと押した。
プルルルル、プルルルル、通話ボタンをすごく緊張して、やっとの思いで押したのに、さらに待たされることになって調子が狂う。
「ガサ..あっもしもし?」
それは本当に突然だった。来るとわかっていても、やはり緊張して動悸がする。
「あ〜もしもし?これ音入ってるかな?もしも〜し!」
「聞こえてるよー大丈夫」
「あっ本当?!良かった〜。聞こえてないんじゃないかって、心配したよ〜」
「あはは、そうなんだ。なんかこういうの初めてだから緊張するんだよね」
思わず本心が自分の口からぽろっと出たことに自分でも最初は気付かず、思わず驚く。
そんなことに気づかず彼女が、
「ヘぇ〜実は私もなんだ。一緒だね!」
こういうところ、彼女の常套手段だって分かってる、なのにやっぱり自分もされたらドキってしてしまうんだ。
「じゃあいつ行こうか決めようか」
「うーんっとね〜」
スマホからパラパラと手帳をめくる音がする。
「来週の木曜日とかどう?ちょっと予定がいっぱいでそこくらいしか空いてないんだけど..」
「うん。そこで全然良いよ!!」
僕は即答した。本当は予定があるが、優先順位を考えたら彼女とのデートの方が上だ。
「本当?よかった〜遊園地楽しみだね」
「うん、本当楽しみ。当日雨降らないと良いな」
電話の山場を超えた辺りから、一気に自分の緊張が限界突破して、差し障りのない会話しかできなくなっていた。もう自分が途中から何を話してたかなんて覚えていない。
気がついたらお互い言いたいこともなくなってお開きになっていた。
でもあの子とデートする約束が確定したのだから、この電話は大成功だろう。
早く当日にならないだろうか。僕はもういてもたってもいられなくなった。
でも、これだけは言える。僕は彼女を手に入れたい。
「遊園地で告白しよう」
僕は私自身に向けて言った。
もう気づけば、家の外は真っ暗になっている。
夜の静寂は却って気味が悪い気がした。
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