花みたいな君とワタシは

 遊園地の閉演時間の1時間前、私は気づいたらバスに乗っていた。自分の計画の一番最後にあった花火を、一人で見たくなかったからだと思う。

もう自分でもどうしたらいいのか分からない。

私は今まで縛っていたゴムを髪から外す。

ゴムから放たれた髪がするすると流れた。

「あ~あ。何やってんだろ」

花火が見たくないから早めに遊園地を出たのに、花火の音は想像以上に大きかった。

花火の音が耳をつんざくが、イライラする気ももう起きない。

自分はいま彼女のことをどう思ってるんだろう?

私は...............












 高校生の女の子の声なんて、花火の音と比べたら大したことないのだろう。でも、彼女は言葉を発した。それは、誰にも届くことはない。でも.............

「君の全てを理解出来たら、君の紡ぐ声の意図を...............君の私に見せた笑顔を...............今の...さっきの....今日の......これまでの.........これからの...............」

彼女のズボンに、雫が落ちる。落ちた雫はあっという間に染み込んでいく。

「君が魅せたアレは何だったの?どこまでが本当?どれが嘘?君のまるで造花みたいに変わらないその笑顔の本質が知りたい...............君のすべてを、君の本性を私は知りたい」
























バスの中で一人泣いている子がいた。その子は何かに無力感を感じていた。でも、その子はまだ、まだ...............















彼女は決心する。君が手に入れば、ほかには何もいらない。











彼女は祈る、自分の愛している人がずっと揺らがないことを。










彼女は育む、この傷を、痛みを。









彼女は忘れない、彼女は戻らない、忘れられない、戻れない。


















「あぁ。これで良い、これが良い。痛い..苦しい..でももう決して迷わない。心に刻み込んで消えない。離れない。忘れない」

彼女の口角が上がる。まるで筋肉が痙攣していうことが効かなくなったかのように固まってしまった。もう自分じゃ直せないのだろう。

「ず〜と、ず〜と、君だけを考えていられる..














                          あぁっ、しあわせだ〜」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

花みたいな君を壊して僕は 鮎川伸元 @ayukawanobutika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ