遊園地の80メートル上で

 カラフルな色の観覧車。まるで八方美人にしようとしたせいで、すべてが中途半端に見えるようだった。自分の手を握って、前を歩く彼女はそんなこと........。

「ねえねえ、この観覧車丘の上にあるから、観覧車の頂上は80メートルにもなるんだって!!」

そんなことは前々から調べているからよく分かっている。でも、そんなことはわざわざ言わない。

「へぇ~そうなんだ!!全然知らなかった!!よく知っているね!!」

「ううん。そこに書いてあったんだよ」

「あっそうなんだ...あはは」

なんかうまくいかないな、自分が努力しようとすればするほど滑っていく気がする。

「あっ!見て見て!!全然観覧車混んでないよ!!」

彼女の僕の手を引く力がさらに強くなる。そんなに彼女は観覧車に乗りたいのだろうか?

「本当だね。最後に観覧車に来てよかったかも」

早速僕らは観覧車に乗り込んだ。

「うわぁ。観覧車久しぶりだな~」

確かに、遊園地で観覧車乗ったのなんて本当に久しぶりだ。

「どんどん地上から離れていくね!」

彼女は外の景色に夢中になっていたが、僕はだんだんと二人だけの空間になっていく観覧車の中に夢中になっていた。

やるなら...ここしかないんだ。僕はフーと息を吸う。

「ねぇ...っ私のこと好きでしょ」

「えっ?................」

僕は思いっきり出鼻をくじかれた。僕が必死に守っていた自分の平生は彼女によってあっという間に吹き飛ばされた。

「あはは、バレてた?まあ隠すつもりはあんまり無かったけど...」

「うん。バレバレだったよ」

「二週間前かな?私が鮎川君(ブス)に告白されたとき、君も見ていたよね。だって、あなたの涙が廊下に落ちていたもの」

僕は後悔した、過去の自分に。しばらくの沈黙の後。

「そっか~、で」

私は立ち上がる。

「僕のことどう思う?魅力的に感じる?」

こんな予定じゃ全然なかったけど、ここまで来たら奥手になってしまったら終わりだ。最後まで突っ走るしかない。

「うん、とっても奇麗だと思うよ、あなたの長い黒髪。その顔、本当に奇麗」

彼女が立ち上がり私の顔に手を伸ばした、彼女の手が私の頬と髪の間を通る。

「やめてよ.........私は...あなたに好きになって欲しくて...............」

「好きだよ。あなたのこと......」

「ならわたしと」

「でもそれは無理なの。私はあなたのことが好きだけど、付き合いたいとは思わないから」

「なにそれ?意味が分からないよ」

「私がそう思ったから、ただそれだけ。しかも私は女の子だし」

絶望している私に彼女は冷静に投げかけた。

観覧車の中が、まるで熱されたように熱く感じる。息をすると熱く乾いていて重い空気が肺に流れ込んでくるようで、息が苦しい。

いつのまにか自分がどうすればいいのか分からなくなってしまった。

観覧車はもう終わりに向かっている。

自分がどうにかしたいことが心の中いっぱいになっていくのを自分じゃどうすることもできない。

待って...............待って...............まだ私は...............

自分の中から全部ひっかき出したいのに、何も出てこない。

そうしている内に、観覧車は一周してしまった。

まるで夢から覚めたように、私の心は空っぽになった。

彼女は扉に向かう。

「もう終わっちゃったね。ほら、もう夕日が見えるよ」

彼女の声色は明るい。でも私にはそれが嘘であることが今は分かる。

観覧車から出ると、そこには夕日に染まった真っ赤な世界があった。

「今日は本当に楽しかった。また来ようね」

私の心は前とは違ってどぎまぎしない。もうまた君と一緒に来れる機会なんてないことも、もう分かってる。

「うん。また来ようね!」

私も臆病だ。もう君が手に入らないなら、これ以上もう壊したくない。壊すリスクさえ背負いたくない。

彼女は足早に去っていく。私は彼女が見えなくなるまで、彼女を見続けた。

彼女の姿が人に阻まれて見えなくなった。

終わりなんて本当にあっけないものだ。

涙なんか出ない。

こういう時映画だったら泣くんだろうな。でもこれには脚本なんてないし、幸せなエンディングもないだろう。

「ほんと、バットエンドだな」

 自分が考えた計画だって、何一つうまくいってない。

 私にできることは、運命という自分のシアトリカルに、少しでも抗ってみせることくらいだった。

「あぁ...............

言葉にすらならないモノが口から零れた。








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