楽園へと至る道②

 集落の中に入っていくと、人間の町と変わらない光景が広がっていた。

 人間の形をした魔族たちが行きかい、談笑している。

 何も言われていなければ、変わった場所にある素敵な町だと思うかもしれない。


「とりあえず、自由に過ごしてくれて構わないよ。気が済むまでどこでも見てくれって言伝をもらってるからね」


 アイアスの言葉に、エリンが首を傾げる。


「え、こういうのって案内があるんじゃ……」

「規模が小さすぎて、みんなで見て回ろうってほどじゃないんだよ。それならむしろ君たちには自由に見て回ってほしい。もちろん気になったものがあれば、近くの人に尋ねてくれて構わない」


 つらつらと台詞を並べるアイアスだったが、生徒たちは揃って彼をジト目で睨んだ。


「それ絶対案内が面倒なだけじゃん……」

「この人、私たち相手に労力を惜しみ過ぎだよね」

「案内役不適格♡」


 陰口三連打を食らい、アイアスがビキバキと額に青筋を浮かべる。


「クソッ好き放題言いやがって! ハルート、君の教育はどうなってるんだ!」

「いや、普段に比べたら結構マシな方だと思う」

「ハルート、君の職場はどうなってるんだ……?」


 親友の心配そうな声に、俺は肩をすくめた。

 クユミのしつこい追撃が飛んできていないシンプルな三連打ごときで何を戸惑っているんだ。素材の味そのまま過ぎて、むしろ素っ気ないとすら思う。


「まーそういうことなら、お言葉に甘えて色々見よっか」

「レポートを作成しなければならないものね……」

「じゃ、自由行動ってことで♡」


 三人はそう言って集落の中を歩き回り始めた。


「やれやれ、自由というかなんというかねえ」

「いいところだろ、自慢の教え子たちだ」

「君をボコボコにしているらしいけど?」

「……元気なのはいいことだろ」


 余ってしまった元気の放出される先が俺なのは、まあちょっと問題ある気もするけどな。

 とりあえず今は、少しだけゆっくりさせてもらおう。

 考える時間が欲しい。




 ◇




 集落の木の下に佇み、俺はぼーっと生徒たちの課外学習の様子を見守っていた。

 エリンとシャロンは様々な施設を観察し、近くにいる魔族に質問しているようだ。


 大前提としては、やはり自給自足を基本としなければならない集落だ。

 魔族たちの暮らしを成立させるために、衣食住を確保する工夫がそこかしこに点在している。


「じゃ、これは魔法で栽培スピードを上げてるってことなんです?」

「ええ。細かい調整が必要でしたが、そのかいあって不作になることがほぼないレベルになりましたよ」


 エリンが見ているのは農作物を育てるエリアだ。

 この集落にとっては生命線だ、重要なところから見ていくのは流石の優等生といったところか。


「どの家も……基本的には、木組みなんですね」

「山間なので、仕える資源がそこらにありますからね」

「とはいえ身を隠す立場でいらっしゃるでしょう。流石に大規模な伐採は……」

「もちろん、人目につかないように気を付けています」


 一方でシャロンは家屋の作り方に着目していた。

 火山が近いだけあって木造の家屋が多いのは自然である。

 ここはなんというか、こいつレポート作りやすい題材を選んでるなという感じだ。


「あなたは戦えるの~?」

「はは……いやいやまさか」

「そうなんだ♡ あっちの人は武器持ってるから戦士だと思うんだけど、そういう役割の人とそうじゃない人がいるのかな~って♡」

「お嬢ちゃん、よく見てるなあ。そうだよ、といってもあの人は狩りも担当してるから、戦士って言うほどではないんだけどな」


 最後のクユミはあんなに警戒していたのに、今はすっかり魔族たちと会話している。

 むしろエリンやシャロンよりよっぽど積極的だ。

 今もその辺を歩いていた魔族と何やら談笑していた。


「でもあの人も、それとあなたも、戦う人の動きしてると思うんだけどな~♡ あ、分かった槍使いでしょ、その歩き方♡」

「俺かい? とんでもない、槍なんて触ったこともないさ」

「へえ~♡ じゃあ弓とか?」

「……いやいや。武器なんて全部触ったことがないよ、鍬を武器って言わないならだけど」

「あは♡ 生活を守るための道具だから、ある意味武器かもね♡」

「ああ、その考え方はいいな。それなら俺も確かに戦士だ、日々の収穫を守るためのと前置きが必要になるけどね」


 どうやら魔族たちの暮らしについて、設備ではなく個々の言葉から拾っていくつもりらしい。

 とはいえ話題ちょっと攻め過ぎじゃない? という気はする。

 距離感の調節が上手い彼女らしくない。


「三人とも随分と頑張っているじゃないか」

「そうだな」

「偉いねえ、そん三人を引率している偉い先生にはこれだよ」


 いつの間にか戻ってきていたアイアスが、俺に向かって何やら筒を投げてよこす。

 受け取ると、中でちゃぷっと液体の揺れる音がした。


「何だこれ」

「特産品のジュースだよ。取ってきた綺麗な水で作った」

「へぇ……」


 ズゴゴゴと啜ったところ、体に反応はなかった。

 毒はないらしい。『光輝輪転体躯』の出力を上げて対象範囲も広げたが、反応なし。

 幻覚作用とかのデバフ類や、薬効もないらしい。

 完全にジュースだ。


「ま、暇なら僕についてきてくれたまえよ。ちょっと案内したいところがある」

「ん……?」


 アイアスは俺を手招きし、軽い調子で言った。

 三人がそれぞれ調査している中を通り、彼に先導されるがまま集落の奥へと進む。


「随分とテンションが下がっているようだけど、大丈夫かい」

「……心配するってことは、今からさらにテンションを下げにくるんだろ」

「おや、僕への理解度が高くて何よりだよ」


 こいつは気遣いという概念から最もかけ離れた人間だ。

 弱っている相手を見ると反射的に追い打ちをかけたくなってしまうらしい。

 控えめに言っても、クズの中のクズだと思う。


「ここさ」


 そんな彼に案内されたのは、居住エリアから少し離れた場所だった。

 集落周辺よりも木々が鬱蒼と茂っている都合からか薄暗く、じめっとしている。

 中心部に目を凝らすと、簡素な小屋が組まれていた。


「何だこれ」

「罪を懺悔する場所さ」


 人間でいうところの教会か。

 一体全体、魔族が何の神に祈るっていうんだという疑問はさておき。

 最も尋ねるべきはそこではない。


「罪ってなんだよ」

「今まで人々を殺してきたという罪だ」


 ――――ッ。


「お前……!」

「落ち着けよ親友」


 思わず胸ぐらをつかみ上げ、至近距離でアイアスの瞳を見た。


「俺は落ち着いてる。これ以上なくだ」

「そうかい」

「で、どういうことだ? 人間を襲わないはずじゃなかったのか……!」


 ギリギリと、締め上げた拳が音を立てる。

 アイアスは目を微かに伏せた後、口を開いた。


「厳密にいえば……戦いの途中で、魔族としての在り方を変えたのが彼ら彼女らだ」

「人を殺すことを、辞めたとでも?」

「そうだ」


 ふざけてるのかこいつ。


「僕の予想だが、恐らくは魔王に生み出されてから長い年月を経るうちに、人間を殺そうとしない因子が発生していた」

「……その論自体は、否定できる証拠はない。認める証拠もないけどな」


 勝手に言ってるだけに近いだろ、と視線で伝える。

 アイアスは首を横に振り、俺の手に上から自分の手を重ねた。


「その因子が、年月を重ねてきたうちに、最終的に活性化した……正確に言えば、僕が外部から活性化させた。完全な偶然だったけどね」

「お前が? 愛でも説いたのか」

「山林の中で気ままに詩を奏でていた時に、魔族に囲まれたんだよ。殲滅すればいいと思った時に――彼ら彼女らは武器を捨て、僕に許しを乞うてきた」


 …………。

 正直、聞いたことのないケースだ。

 投降したフリを、友好的なフリをするのならわかる。

 しかしそれはだまし討ちありき、人類に大きな被害を与える布石としての行動。


「分かるだろう親友。仮に裏切るつもりなら、こうして人里離れた場所に集落を組んでいるのは非合理的だ」

「……長いスパンの計画かもしれない」

「そうだね、君が気にするべきはそこだし、僕も残っている唯一の懸念はそこだ」


 気づけば俺の手からは、力が抜けていた。

 だらんと腕が垂れ下がる、親友に食って掛かることすらできなくなっている。


 奴ら魔族は狡猾で獰猛で残忍だ、だからそれらを滅ぼすために勇者の一族がいるし、真に勝利するため『選ばれた少女』が二人もいる。

 でも――それは、俺がゲームから得られた知識でしかない。


 この世界に生きる人間としては、俺は何も知らない。

 ジュースを作る魔族も、鍬を振るう魔族も、生徒に優しく説明をしてくれる魔族も。

 何も知らない――だってこの手で全部殺してきたんだから。


「我が親友。僕の人生で最も強く輝いていた君に、言いたいんだ」

「…………」


 アイアスは真剣なまなざしで、こちらに問いかける。


「魔族と戦うことが君の宿命だというのなら。魔族と和解出来たら――そんなもの捨てたっていいんじゃないかい?」




 ◇




 教会から出たところで、俺はベンチに座った。

 アイアスは笑顔で集落の魔族たちと会話している。


「せんせい、疲れちゃってるみたいだね♡」


 気づけば、音もなくクユミが隣に座っていた。

 まったく感知できなかった。どうやら自分で思っているよりも参っているらしい。


「もう、話はしなくていいのか」

「今はせんせいとお話したいかな♡」


 俺とクユミは視線を重ねることもなく、前を向いたまま会話を続ける。

 スパイ同士で情報を受け渡すシーンみたいだな、と場違いな思考がよぎった。

 直後、こちらの思考でも読んだかのように、クユミが声を潜めて話す。


「良いニュースと悪いニュースが合体したのが一つあるんだけど、せんせいは聞きたい?」

「聞いたことないフレーズが出てきたな……」


 要するに一択問題じゃん。


「まあ、聞かせてくれ」

「えっとね~♡ 色々話して、データを集めて、分析して……魔族も、嘘ついてるかどうか分かるようになったよ♡」

「お前ヤバ」


 素で声が出た。

 この短時間でどうやって――魔族と喋りまくってたのはそのためかよ!

 恐ろしい教え子だ。こいつがいるだけで陰謀パートスキップできるようになるんじゃないの? 二周目専用装備かよ。


「だから、良いニュースだし、悪いニュースでもあるよ♡」

「……何が嘘だったんだ」

「……なかったんだ」


 クユミの声は普段と違った。

 彼女の言葉に、俺は視線を地面に落とした。


「どの魔族も、本当のことを言ってたよ。人を殺したことを、悔いているって。許されるとは、思ってないって。そしてこれからは……誰も殺さず、血を流さず、静かに、ゆっくり暮らすことを許してほしいって」

「………………」


 そうでなければ、どんなに話は簡単だっただろう。

 魔族は結局悪いやつで、分かり合うことなんかできなくて、湧いてきたら殺して回るだけでいいのなら、どれほど楽だっただろう。


「これを伝えなかったら――せんせいは、ここにいる魔族たちを皆殺しにできた?」

「できないよ、そんなこと……」


 自分でも驚くほどに弱弱しい声だった。

 勇者の末裔の肩書が泣いている。


「せんせいは……その……さ」

「勇者、っていうのは、魔族を皆殺しにする一族なんだと思ってた」


 かける言葉を探すクユミは、急に喋り始めた俺に少し息をのんだ。


「俺のご先祖様……初代勇者は、その人生のほぼすべてを魔族狩りに捧げた。そうでなければ人類の安寧は守られないから。本当に大義名分があるかも分からないような段階からそうだった。俺もその使命を持った、人間だと思っていた……」


 だけど、今目の前にある場所は、間違っても壊してはいけないものだと分かる。

 剣を振るって解決できることなんて、ここには何一つとしてない。

 組んだ手を見つめながら、俺は息を吐いた。


「クユミ、君はどう思う」

「……それはせんせいが、先生として、生徒に聞いてるの?」


 違う。

 俺はハルートという一個人として、彼女に聞いてる。

 俺は彼女に、授業中のように尋ねているんじゃない、教えて欲しがっているんだ。

 導く側なのに、教師なのに。

 生徒である女の子に情けなく縋ろうとしてしまった。


「……いや、俺個人の話だな」


 取り繕っても仕方ないので、正直に、赤裸々に話す。

 大人としては情けないことこの上ない状況なわけだが。


「……あは♡」


 それでも、クユミは嬉しそうに笑った。


「そっか、そっかそっか♡ 偉いねえせんせい、頼ることを覚えたんだ♡ ほらごほーび♡」

「おい急に成人男性の頭を撫でるな。幼児退行したらどうする」

「キモ♡」


 クユミはベンチからぴょんと飛び降りて正面に回ると、こちらの頭を急にさすり始めた。

 あぶねーな。俺が赤ちゃんになったらすごいんだからな。ガラガラ(勇者の剣仕様)二刀流とかやっちゃうぞ。なったことねえけど。


「でもさーせんせい、そんなのどーしよーもなくなーい?」

「……お前なあ」


 俺を慰めたいのか突き放したいのか分からんなこいつ。

 思わず半眼になってねめつけるものの、彼女は俺の頭を撫でながら言葉を続ける。


「だってせんせいが今更生き方を変えて、『魔族の皆さんを見ただけで殺したくならないように性格矯正します!』って言ったとして、正解って感じしないじゃ~ん♡」

「…………それは」

「だからね、せんせい」


 顔を上げて、彼女の顔を見た。

 こちらの頭から放した手を後ろ手に組み、クユミが微笑む。



「『勇者の末裔ハルート』はそうしなきゃいけないかもしれないけど。せんせいは、その人じゃないでしょ? だったら、その人なら考えなさそうなことを考えてもいいんじゃない?」



 …………。


「それは……ああ、そうだな。その通りだ」

「え? せんせいこれ自分で気づいてなかったの?」


 体に染みついた性質はもうどうしようもないのだ。

 だが、ルーティンでしか行動できない動物と違って、俺には考える頭がある。


「そうだ、そうだよなクユミ……ありがとう、かなりスッキリした」

「あ、えっ、え? あ……これもしかして本当にせんせいのメンタルめちゃくちゃ危なかったやつ!?」


 なんというか――本当ならもう少し引っ張って、色々な事実が明らかになった後、それらを踏まえて決意を新たにした時みたいな気分だ。

 三段階ぐらいすっ飛ばした感覚になっている。


「君の言う通りだ。基本的に俺がうじうじ悩んでも状況が好転することはない」

「そ、それはそうだけど……!」

「何故なら、言うほど俺に思考能力はなく、難しいことを考えたところでドツボにはまりやすいからだ。マリーメイアの一件で学習した」

「何その後ろ向きポジティブシンキング!? 虫けらでもこんなに身の程は弁えないよ!?」

「お前それは流石に言い過ぎ」


 驚愕と混乱からハートマークを投げ捨てたクユミだが、殺傷能力だけは据え置きだった。シンプルにつらい。


「ま、そういう感じで、虫けらなら虫けらなりに頑張ってみるよ」

「……どーするの?」

「『勇者の末裔』なら当然、殲滅の一手なんだがな。でも俺は――」


 自分のなすべきこと、進むべき方向。

 それをクユミに告げようとした直後。



 ざわ――と、肌が何かを感じ取った。



「せんせい?」


 言葉が途中で途切れ、クユミが首を傾げる。

 彼女は、何も感知していない。


 ならばと視線を巡らせるが、魔族たちも、(こっちを見て何やら怖い顔でズンズン突き進んでくる)エリンやシャロンだってそうだ。

 アイアスですら、魔族との談笑を続けている。


 この場で俺だけが何かを感じ取った。

 俺はこの感覚を知っている。

 かつての戦場で、いつも隣に居座っていやがった――濃密な死の気配。


「アイアスッ!!」

「……ッ!?」


 名前を叫ぶだけで、親友に意図は伝わった。

 目を見開いた彼が腕を振るって魔力を飛ばし、それから愕然とした表情になる。


「センサーが作動中なのに敵性反応一つ!? どうやって引っかからずにここまで、まさか――上級魔族、それも相当な手練れの――!」



 アイアスの言葉の途中だった。


 刹那に、来た。



「おや、お取込み中でしたか」


 その場に響き渡ったのは、若い男の声だった。

 顔を上げれば、教会の上に一つの影が佇んでいる。


「とはいえ、優先度としてはこちらの方が高いと自負しております。ここは私の話を聞いていただけませんか」


 いいや――それは影ではなく、真っ黒な人型だった。

 漆黒の体表の上に黒いスーツを纏ったそれは、顔の部分に赫く輝く双眸だけがある。

 鼻も口も見当たらないのに、声は明瞭に発せられていた。


「お前……!」

「……おや、おやおやおや、まさかあなたがいるとは!」


 視線が重なった途端、その深紅眼が奇妙に歪んだ。

 何度も顔を合わせていなければ、まさかそれが喜びの表現だとは気づけないだろう。


「お久しぶりですね『勇者の末裔』、『狂乱虐殺機構』、『第二の降臨者』! 前回あなたと刃を交えて語り合ったのは……もう半年は前でしょうか?」

「ぐだぐだと、相変わらず肩書の好きなやつだな」

「仕方ないでしょう、これはあなたがた人類から学んだ貴重なシステムなのですから……とはいえこの重要性を理解できている者は、他の魔族にはほぼ見当たりませんが」


 ひょいと地面に飛び降り、視線の高さをそろえてから、その魔族は肩をすくめた。


「嘆かわしいかな、我ら魔族はあなたという大きく開かれた咢に砕かれるまでその無知と愚かさを自覚できないのです。実に矮小なる種族に成り下がりつつあると、そう思いませんか?」

「御託はいい、お前と雑談なんて死んでも御免だ。だが、お前が来たってことは……そうか。この集落を見つけたのは、人類だけじゃなかったってことか」

「流石ですハルート。ご明察の通り、私が来たという事実が、端的に言えば魔族の最終結論になります」


 俺のご先祖様である初代勇者は、史上最も多くの魔族を殺した存在だ。

 俺は史上二番目に魔族を殺しまくった存在だ。

 そして俺に次ぐ三番目の記録保持者がいるのだとすれば、それは間違いなくこいつだ。


「ハルート、何なんだそいつは……ッ?」

「『同族殺し』のライトアーサー。魔王の意向に従わない魔族を殺して回ってる、魔族狩り専門の魔族だよ」


 俺の言葉に、魔族――ライトアーサーはその辺の木の棒を拾い上げた。

 即座にやつの権能が発動し、その場にいた俺以外の全員が、目を見開き絶句する。

 物質の根本的な上書きが発生し、俺とは違い見た目まで変化させた末。



 ただの木の棒が、禍々しい気配を放つ『魔剣』に変貌した。



「何度も言っているでしょう。私の役職は『粛清部隊隊長ペインキラー』――正式に、丁寧に、愛をこめて呼んでもらえれば尚良いです」



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