Case3-43 少女

 四つん這いになりながら、鉄扉があった方向を確認しやすい位置へそろそろと移動し、再び階段裏に背を預ける。覚悟を決めなければならない。少女は大きく深呼吸をした。

 そしてそのまま深呼吸を使うことにする。あと三回息を吸って吐いたら、そのあとゼロで階段裏から顔を出し、後ろを確認する。そう決めた。


 3……


 2……


 1……


 1………。


 ……。


 ……1!


 ……。


 やっぱりもう一回。


 5……


 4……


 3……


 2……


 1……


 0!!! 少女は目にも止まらぬ速さでひょこっと階段裏から顔を出してそのまま一瞬にしてひょいっと顔を戻した。


 これだけでもう、バクバクだ。だが、成果は二つあった。一つ目は奴、つまり、あの咆哮の超獣はいなくなっていたということ。そして二つ目はというと、もう一度としっかりとこの目で確かめることにした。


 一度確認できたとはいえ、少女は恐る恐ると階段裏から踊り場へと這い出ていく。飛び散った小さな瓦礫がポップな靴に弾かれてカラコロと転がっていった。耳を塞いでいたとはいえあれだけの大音だいおんさらされたせいか、まだ僅かに音が曇って聞こえる。耳も少しだけつっぱった感覚がしている。

 しかし、そんなことは些細ささいな問題だった。そのまま立ち上がった少女は、やはり見間違いではなかったその光景に目を奪われていた。

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