Case3-41 少女

 あれは夢だったのかと少女は思いかけたが、そんなはずはなかった。踊り場全体は、依然いぜん男達が着用していたヘルメットライトによって照らされていて、少女の斜め前方には、外縁がいえんのコンクリートへきごと吹き飛んできた例の鉄扉が横たわっていた。その下には、武装した黒ずくめの男が二人ほど下敷きになっている――少女は思わず目をそらした。見てはいけないものを見てしまった気がして、まだ目覚めたばかりだというのに、早くも心臓の鼓動が胸元を中心に響きだした。


 そして次に少女の脳裏を巡ったのは、奴はまだ後ろにいるのだろうかということであった。

 綺麗さっぱりにいなくなってくれていたのなら、どれだけ嬉しいことか。しかし彼女はこの静寂をまだ信じることができずにいた。もしかしたら、まだすぐそこにいるかもしれない。暴れ疲れて眠っている? それとも、私が出てくるのを、私に気づかれないように待っている? そんな嫌な想像ばかりが次々と浮かんでくるのだ。


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