Case3-6 少女

 急に刺さった眩しさに瞼を顰め閉じながら、座に腰掛けた少女は、ただでさえ眠気が残っていたためか、そのまま睡魔に襲われ船を漕ぎ始めた。

 だから気がつきもしなかった。着々と少女に近づいてくるそれに。

 うとうとと、ぼやけた意識のまま夢と現実を行ったり来たりしていたがために、その近づく違和感に気づいたころには、それと少女の距離は十分にせばまってしまっていた。

 卵色の外側の黒の中で、より深き黒の影がうねった。

 物音――少女の意識が呼び戻され、影をとらえる。じっくりと、影は線を越え、その全貌は光のもとあらわに。


 ――「蛇」


 こちらを凝視し、じわりじわりとその距離をつめて足元へ。

 少女の意識は完全に起きた。しかし、『日本にいる蛇は、みんな檻の中で生活しているもの』、そう思い込んでいたが故に、予想外の出来事で頭は真っ白、体は固まってしまっていた。

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