Case3-4 少女

 お風呂上りの夕飯時。食卓にはお先にと、昼間祖父と収穫した新鮮なトマトが振舞われていた。少女は早口に「いただきます!」を済ますと、祖父にならい、お塩を振ってかじりつく。口いっぱいにはじける元気の良い酸味に、思わずほっぺたが落っこちそうになる。自分で取ったからなのだろうか、こんなに濃くっておいしいなんて! そんな風に舌鼓を打っていると、続いての料理が到着した。少女は思わず、手を叩いて歓声をあげる。こんがりチーズたっぷりのトマトクリームグラタン。大好物だ。新事実――母特性のレシピは、祖母直伝のものだったというわけである。お味の方は言うまでもなく。少女のほっぺたは落っこちたのであった。


 食後のことは……正直よく覚えてはいない。みんなで、春先に保育施設で行われた、踊り発表会の映像を見始めはした。だが、一日中よく動き回った体に、お腹が満たされたのも相まって、気がつけば少女は自然と気持ちの良い眠気に身を委ねていた――…。




 ×   ×   ×




 目が覚めると、目の前は真っ暗に包まれていた。左隣から聞こえる母の寝息と、肌ざわりの良いタオルケットの感覚で、自分が布団の上で寝ていることを自覚した。そういえばなんとなくだが、母の膝の上に座らされて歯を磨かれた記憶がなくもない気がする。いやあれは祖母だっただろうか……と、そんなことをぼんやりと考えているうちに、少女はトイレに行きたくなってしまった。

 母を起こそうと、その肩に手を伸ばしたが、夜中に一人でトイレに行く練習中であったことを思い出しそれを引っ込める。正直、夜中の暗がりなどなんともない。

 すっくと立ちあがった少女は、祖父母邸のトイレの場所を思い出しながら、そのままいつもの練習通り、一人部屋を出た。

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