Case3-2 少女

 麦わら帽子をぎゅぎゅっとかぶる。

 少女は祖父母のうちに着くやいなや、荷物降ろしを母と祖母に任せ、祖父と共にトマト畑へと遊びに出かけた。近づくにつれ、朗らかな空気の中に土の香りが混ざる。少女の知っている砂埃のとは違う、柔らかくて優しい香りだ。

 少女は祖父に許可を得ると、高く立ち並ぶ緑の壁の中に飛び込んでいった。そこには焦げ茶色の横一本道がどこまでも伸びていて、その両脇には、葉に茎にを纏わせた支柱が同じくどこまでも続いていた。茎の先で見事に実った、たくさんの鮮やかな赤の玉。少女はふとクリスマスツリーを連想し、その一つ一つに心躍らせた。きゃっきゃと声をあげ、一本道を駆け抜ける。ビーグルがく冷たい水霧すいむが、とっても肌に心地よかった。

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