Case2-9 ノバレス・バクトロ

 ……。

 零階ぜろかい

 よりによってこんな形でくるなんて。最悪だよ。

 うん……。

 ……

 いつか、ここで、

 いや、別にここじゃなくても、いつか春氏浦はるしうらさんと仕事がしてみてかった――そう思った。


 一度僕の研究を見に来てくれたことがあった。


 無表情な女性だった。多分その時は僕の顔すら見てなかったと思う。

 ただ、電光を一瞬発したバッタを見て、彼女は目を輝かせたんだ。そして言ってくれたんだ。期待してるって。

 あの目を…瞳って言ったらいいのかな。あの瞳を忘れたことはない。それまでは特に何も興味ないみたいな顔だった彼女が見せた、楽しそうな感じの瞳。

 なんていうかな……その…柄じゃないけど、僕はそれを、とても…とても美しいと思ったんだ。

 だから、頑張ろうって決めたんだ。たとえN-GETを離れたとしても、大学の方で研究を続けて、いずれまた彼女に認めてもらおうって。

 怪我で気分が落ち込んでた僕は、ちょっとだけ持ち直した。

 なんか恥ずかしいな笑。こんなとこまで読まないでくれよ笑。


 まあでもそんな感じのこと考えてたんだ。

 そしたらさ、そこでなんと! 非常灯が点いたんだ!

 その時僕は、自分の思いが通じたって思ったね! なんてタイミングなんだって。

 そして今度は高めの電子音がまた鳴った! そう! エレベーターの到着音!

 扉に手をかけてた二人もびっくりして離してさ。

 まさかって思ったよ! でも予想通り! 扉が自動で開き始めたんだ!




 ……

 ……


 目を疑ったよ。


 そこには……

 青い…とにかく青い…海が広がってたんだ。

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