Case2-5 ノバレス・バクトロ

 背筋凍るって程じゃないけど、なんかヒヤッとしたものが通ったよ笑 体の中に。

 所内も一気に緊張が走ったよね。

 廊下にいた他の職員達もみんなピタって動き止めてさ。僕含めみんな天井のスピーカーに食いついたよね。あの、鳴ってるから。警報が。さすがにわかるか笑。


 前にも一度鳴ったことがあって、

 結局大事にはならなかったみたいだけど、その時僕はちょうど一階にいてさ、うちに常駐してるすごい強そうな警備隊の人達が廊下を走り抜けてって。

 銃まで持ってたんだよ? ほんとに、何を隠してるんだって話だよね。


 だからさ、そういう話も所内には広まってたから、火事とか地震とかそういう警報とはまた別の恐さがあるんだよ。


 緊迫した空気の中、突然大きな呼び声が響いて、みんな今度はそっちの方に注目した。

 警備の人たちが誘導を始めたんだ。

 そしたらもうみんな焦りに焦って動き出してさ。なんか、あるだろ? すぐ逃げる人とか高かったもの持って逃げようとする人とか。そういうので廊下はごっちゃごちゃ。最悪だったよ。

 僕はトランクと虫かご持ってたから遅くてさ。後ろから押されたり、飛び出てきた人にぶつかったり、後ついてきてたドローンケースも蹴っ飛ばされてどっか飛んでくし…。中はふくとかだからまあいいけ…いや良くないよドローンケース高かったんだぞ?


 まったく。それでやっとエレベーター前に着いたら定員オーバーで乗れないし、

 階段も渋滞だよ?


 はああああああ〜〜……。ちょっと僕ついてなさすぎだよね。

 正直最悪な気分だったよ。最悪も最悪。

 もうこんなところさっさと出ていきたかったんだ。やっと解放されるってさ、思ってたんだ。

 いくら根を詰めても成果の出ない毎日。助手達のうんざりそうな顔。

 

 いやさ、

 僕だってうんざりしてたんだ!

 やっと潔くなれたっていうか、辞める決心ついたっていうのに…。

 心の荷がさ、おりたなって思ってたのに…。

 こんなことに巻き込まれて、たまったもんじゃないよ。


 ……

 ごめん。

 ……

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