Case2-3 ノバレス・バクトロ

 うん…。荷物まとめてたんだ。退職するから。

 はあ……。

 僕がここに呼ばれたのは、さっき言ったバッタの発電の研究が評価されたからだったんだ。その発電構造を装置化することができたら、全く新しい電力供給システムが誕生するんだよ。しかも蝗害こうがいだって防ぐことができる可能性もあるんだ。

 装置化できたらね。


 うん。結局最後まで、あ~退職の直前まで、なんで発電するのかはよくわからなかったよ笑。

 わからないならわからないで、それでもいいから発電に使おうとも一瞬は考えたけどね。牡蠣と昆布の量と、得られる電力が割に合わなくてね。


 だから、

 その……

 もう潮時かなって笑

 ……


 これでも結構、N-GET内では有力な研究だと思われてたんだ。今もそうなら、もう少し頑張ろうとは思っただろうけど、今N-GETでは完全に別の研究が注目されてて、多分それがこれからもずっと中心で動いてくんだと思う。

 内容は知らない。教えてくれないんだ。噂では、オカルトの領域に足突っ込んでるらしい笑。

 まあそれは置いといて、他には、新しい発電方法どころか、本当に新しいエネルギーを見つけてしまったとか、なんかそんな話を聞いてる。


 でもあながち真実かもしれないね。だって、研究は全部地下でやってて、地上階の僕らには絶対情報が回らないようにされてる。

 極秘にされてるんだ。おかしいだろ? 同じチームの研究員なのに。よっぽど慎重に扱いたいんだろうね。


 あぁ、面白い話なんだけど、僕らは地下のことを『レイカイ』って呼んでる笑 何が起こってるとか、何をやってるのかもわからないし、

 研究で力になれそうって、僕の友達が引き抜かれたんだけど、そいつが行ったきり帰ってこなくなったり。まさにだろ?笑 あと、ほんとうの名前が漢字で『零階』だから。

 あ~、本当に帰ってこれないとかではないよ。今でもそいつとは連絡だってとれるし。ただ外に出るのを忘れるほど没頭してるみたい笑。

 ……いいなぁ。

 ……

 ごめん今のなしで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る