Case2-2 ノバレス・バクトロ

 僕がここに呼ばれたのは、さっき言ったバッタの発電の研究が評価されたからだったんだ。その発電構造を装置化することができたら、全く新しい電力供給システムが誕生するんだよ。しかも蝗害こうがいだって防ぐことができる可能性もあるんだ。

 装置化できたらね。


 うん。結局最後まで、あ~退職の直前まで、なんで発電するのかはよくわからなかったよ笑。

 わからないならわからないで、それでもいいから発電に使おうとも一瞬は考えたけどね。牡蠣と昆布の量と、得られる電力が割に合わなくてね。


 だから、

 その……

 もう潮時かなって笑

 ……


 これでも結構、N-GET内では有力な研究だと思われてたんだ。今もそうなら、もう少し頑張ろうとは思っただろうけど、今N-GETでは完全に別の研究が注目されてて、多分それがこれからもずっと中心で動いてくんだと思う。

 内容は知らない。教えてくれないんだ。噂では、オカルトの領域に足突っ込んでるらしい笑。

 まあそれは置いといて、他には、新しい発電方法どころか、本当に新しいエネルギーを見つけてしまったとか、なんかそんな話を聞いてる。


 でもあながち真実かもしれないね。だって、研究は全部地下でやってて、地上階の僕らには絶対情報が回らないようにされてる。

 極秘にされてるんだ。おかしいだろ? 同じチームの研究員なのに。よっぽど慎重に扱いたいんだろうね。


 あぁ、面白い話なんだけど、僕らは地下のことを『レイカイ』って呼んでる笑 何が起こってるとか、何をやってるのかもわからないし、

 研究で力になれそうって、僕の友達が引き抜かれたんだけど、そいつが行ったきり帰ってこなくなったり。まさにだろ?笑 あと、ほんとうの名前が漢字で『零階』だから。

 あ~、本当に帰ってこれないとかではないよ。今でもそいつとは連絡だってとれるし。ただ外に出るのを忘れるほど没頭してるみたい笑。

 ……いいなぁ。

 ……

 ごめん今のなしで。


 だから、僕がこれ以上ここにいるのも意味は無いだろ? クビとは言われてないけど、ほぼ『用済み』みたいな扱いっていうか。

 まあそりゃ、まだ頑張ってる人達は全然いるよ? でも僕のバッタ発電はちょっとね。いまだに原因不明ってのが…。


 まあそういうことだから、これから僕は古巣のTOKYOMIT大学のラボに帰るってわけ。


 ……


 TOKYOMIT大学のラボに帰るってわけ。


 ……


 はぁー…TOKYOMIT大学も知らないのかよ。




 さて、そうこうしている内にこの頃の僕の準備ができたみたいだ。

 ぼーっとしてる笑 恥ずかしいな、これブイで時間見てたんだよ笑。

 ここを出る途中で桝添ますぞえさんにあいさつしようかなって。一番お世話になった人ね。まだいるかなって時間を確認してたんだ。本当は春氏浦はるしうらさんにもあいさつしたかったけど、まあ無理だろうね。諦めた。


 そうして僕は、白衣を着たまま、トランクとドローンケースと、虫かご一個持って自分のラボを出たんだ。


 虫かご気になる?

 これ、バッタの「アイディー」。

 こいつだけ実験用バッタの中でずっっと変異しなかったんだ。なんか、特別な感じがしたっていうか、愛着わいちゃって。

 へへ笑 こいつ他のやつより口ちっちゃいんだ笑 かわいいだろ?


 この時もかごの中でピョンピョン跳ねてさ、僕のこれからを応援してくれたんだ。そんなアイディーを愛しく想いながら桝添さんのとこに向かおうとしたんだけど、


 そこで警報が鳴ったんだ。

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