第六幕 覚醒
覚醒―1
琥珀は、あさぎを帰した後、黄昏座にいるだけでは駄目だと考え、あまり近寄らない山吹家に行って、本殿についての情報を集めようとした。どうにかして本殿の者と接触する方法を探したかったが、まともに取り合ってもらえなかった。
三日間、大した成果も得られないままだった。寧々と連絡を取ってはいるが、同じ状況だそうだ。今日もまた陽がくれてしまう。
山吹家を出たところで、烏と会った。いや、待ち構えていたのか。
「山吹琥珀、ですね」
「ああ」
「これを」
手紙を渡された。本殿からではないようだが、詳細を聞く前に烏は去っていった。仕方なく手紙を開いた。
――黄昏あさぎを攫った。返してほしくば向島に来い。
「なっ」
琥珀は、考えるよりも前に走り出した。あさぎは、今は寧々の家にいるはず。寧々が付いているなら安全だと、そう油断していた。
「くそっ、どうしてこうなった」
急いで寧々の家に向かった。長屋に着くと、飛び出してきたと寧々とぶつかった。
「琥珀! あさぎがおらんの! 変な手紙もあるし」
「見せてくれ」
寧々の手には琥珀に来たものと同じ手紙があった。必ず来い、あさぎがどうなってもいいのか、と書かれている。やはり場所は向島。
「どうしよう、あたしがうたた寝してたせいで……!」
「今はとにかく、向島へ」
二人は、指定された場所へと走る。川を挟んで、さらに向こう側に位置するところだ。この時間では馬車もなかなか捕まらない。走った方が早い。
「くそっ」
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