第42話 どうしてこんな事に~アレホ視点~
※少し話が遡ります。
リリアーナをエスコートして王宮の夜会に参加してから、早3ヶ月。既に魅了魔法が解けて、1年が過ぎた。
この1年、色々と考えた結果、僕はあえて魔法大国でもあるパラレル王国に出向く事にしたのだ。いくら僕たちが、二度と禁断の魔法を使わせないようにしたとしても、やはり限度がある。
それに万が一禁断の魔法に掛かってしまった時に、迅速に対応できるように、僕自らパラレル王国に向かい、ある程度の魔術を勉強しようと考えたのだ。
何度も何度も貴族たちを説得し、やっとパラレル王国へ行く許可が下りた。早速パラレル王国に向かい、王族に挨拶をした。正直魔法大国という事で、恐怖心はあったが、会ってみたはとてもいい人だった。
僕の為に、優秀な魔術師も付けてくれた。とにかく色々と覚えたくて、寝る間も惜しんで学んだ。すっかり僕の事を気に入ってくれた魔術師から、分厚い魔法書まで頂いた。
「殿下、あなたの勤勉さには驚かされました。この短期間で随分と必死に覚えられましたね。これからも自国でお勉強できるように、この魔法書を授けます。それから、万が一困ったことがあれば、この鏡に向かって私を呼んでください。この鏡は、私と殿下を繋ぐ鏡ですから」
「ありがとうございます。この魔法書は、悪用されない様に王宮で厳重に保管いたします。それからこの鏡も。師匠、短い間でしたが、ありがとうございました」
師匠やパラレル王国の王族たちにお礼をいい、愛しのリリアーナが待つ我が国へと帰国する。この2週間、リリアーナに会えていなかった。会いたくてたまらないのだ。
早速リリアーナに会いに行くと、少しご機嫌斜めのリリアーナが対応してくれた。どうやら僕が2週間姿を現さなかったから、怒っている様だ。リリアーナはとても分かりやすい性格をしている。
少しずつだが、僕を受け入れてくれていると思うと、なんだか嬉しい。この日は僕が師匠に教えてもらいながら作った、リリアーナをモデルにした人形を渡した。この人形には、守りの魔法が掛けられている。この人形があれば、万が一不届き者が何かしてきても大丈夫だ!そう思っていた。
でも…
リリアーナが孤児院で、苦しそうに倒れたのだ。吐血し、顔も真っ青、今にも命の灯が消えてしまいそうなくらい弱っている。
一体何があったんだ?どうしてリリアーナがこんな目に。リリアーナを失ってしまうかもしれない!そんな恐怖が僕を襲う。
恐怖から体の震えが止まらない。リリアーナにもしものことがあったら…考えただけで、今にも倒れそうになる。
短期間でこんなに症状が悪化するだなんて、もしかしたら毒かもしれない。すぐに解毒剤を飲めば大丈夫だ!そう思っていたのだが、どうやら毒のせいではない様で、医師も首をかしげていた。
そんな中、リリアーナが、急に怯えだしたのだ。さらに僕のあげた守りの魔法がかかった人形が、粉々に砕けたのだ。
どうやらリリアーナの様子から見ると、マルティが呪いをかけた様なのだ。でも、マルティは1年前に処刑されている。それなのに今更どうして…
喉を抑えながら苦しそうにもがくリリアーナ。
「リリアーナ、しっかりするんだ。大丈夫だ、きっと僕が何とかするから」
そう声を掛けたものの、どうしていいのか分からない。そもそも、本当にマルティの呪いなのだろうか…
その時だった。
「リリアーナ!!!」
血相を変えてやって来たのは、マレステーノ公爵だ。
「なんて事だ、一体何が起こったのだ!殿下、これは一体…」
「分からないのです、孤児院で皆で過ごしていたら、急にリリアーナが苦しみだして。毒でも盛られたのかと思いましたが、どうやらそうではない様ですし。もしかしたら、マルティの呪いかも…」
「マルティ嬢の呪いだと?彼女は1年前に処刑されたのだぞ。そんな事があり得るのですか?殿下、あなた様は2週間、魔力大国のパラレル王国に行かれていたのでしょう?何とかならないのですか?」
公爵が必死に訴えかけてくる。そうか、僕は先日まで、パラレル王国にいたんだ。僕はなぜそんな大切な事に気が付かなかったのだろう。
「急用を思い出しました。一度王宮に戻ります。リリアーナの事をよろしくお願いします」
急いで王宮に戻ると、師匠から貰った分厚い魔法書を開く。呪いに関する場所を開くと、そこには呪い魔法に付いて色々と書かれていた。どうやら呪い魔法は非常に難しく、命を削る魔法と言われているらしい。
解く方法は残念ながら書かれていなかった。
「この魔法書では分からない。クソ、どうすれば…」
そうだ!
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