第7話 パーティに参加します

殿下の婚約者を辞退してから早1ヶ月。この1ヶ月は、本当に穏やかな日々を過ごした。お母様と一緒に街に買い物に行ったり、美味しいものを食べたり。


修道院に顔を出したりして過ごした。実は私がお世話になろうと思っていた修道院には、孤児院も併設されており、定期的にその孤児院にも顔を出しているのだ。


無邪気な子供たちと過ごすうちに、私の心もすっかり元気になった。まだ元の体型とまではいかないものの、随分とマシな体型になって来た。


そして今日は、久しぶりにパーティに参加する事になっているのだ。私の幼馴染で従姉妹でもあるルミナが、婚約する事になり、婚約披露パーティに呼ばれているのだ。


朝からメイドたちに磨き上げられ、ドレスに袖を通す。婚約破棄前から考えても、約半年ぶりのパーティ。さらに婚約破棄後初めてのパーティ参加とあって、メイドたちも張り切っているのだ。


ただ…殿下とマルティ様も参加するとの事なので、少し不安があるが、まあ大丈夫だろう。


ちなみにまだ魅了魔法は解けていないらしい。まあ、私にとってはどうでもいいことだが…


「お嬢様、出来ましたよ。とてもお美しいですわ。今回のパーティで素敵な殿方が見つかるといいですね」


素敵な殿方か…正直もう、結婚や婚約はしばらくいいかなっと思っている。ただ私は公爵令嬢だ、いずれ誰かと結婚しなければいけない事も理解している。


どうせ結婚しなければいけないのなら、私の事を大切にしてくれる人がいいな。でも、そんな人いるかしら?


そう思いつつ、両親とリヒトと一緒に馬車に乗り込んだ。


「リリアーナ、今日は殿下も来ている。もし辛かったりしたら、すぐに帰っていいからな」


「姉上は僕が守るから大丈夫です!だからどうか安心してパーティに参加してくださいね」


家族が私を心配してくれている。有難いわね。


「ありがとうございます。でも、私はもう大丈夫ですわ」


そう、私はもう、殿下の婚約者でも何でもないのだ。だから今日は、堂々としていようと思う。


今日の会場は、ルミナの婚約者のお家、パレスティ侯爵家の中庭で行われる。早速会場でもあるパレスティ侯爵家の中庭へと案内される。


中庭には既にたくさんの貴族たちが集まっていた。私が入場すると、皆がチラチラとこちらを見ている。


そんな中、数名の令嬢たちが私の元にやって来たのだ。


“殿下と婚約破棄されたと伺いましたわ。色々と大変でしたわね。それにしても殿下は何を考えているのでしょう。あのマルティ様に熱を上げられるだなんて…”


“ここだけの話、マルティ様は令嬢たちからとても嫌われておりましたのよ。どうやら殿下だけでなく、他の身分の高い令息にも手を出していたとか…そのせいで、彼らの婚約者たちが怒ってマルティ様に抗議をしたらしいのですわ。そうしたら、殿下にある事ない事告げ口したらしくて。逆に令嬢たちが殿下からお叱りを受けたとか…”


“まあ、そんな事があったのですか?それは酷いですわね”


“とにかく、マルティ様には近づかない方が身のためですわ。本当に嫌な女なのですよ”


令嬢たちが小声で色々と教えてくれた。実は以前から私の事を気にかけてくれていたそうだが、一応殿下の婚約者という事もあり、話し掛けづらかったそうだ。


「色々と教えて下さり、ありがとうございます。もう私は殿下とは何の関係もございませんので、どうか仲良くしてくださいませ」


「ええ、もちろんですわ」


そう言ってほほ笑んでくれた令嬢たち。その時だった。ルミナと婚約者、さらに2人のご両親が入場してきたのだ。


婚約者と腕を組み、幸せそうに微笑むルミナ。彼女の幸せそうな顔を見ていると、つい頬が緩む。


まずはパレスティ侯爵の挨拶、そしてパレスティ侯爵令息の挨拶へと続く。2人の挨拶の後、すぐに私の元に来てくれたルミナ。


「リリアーナ、来てくれたのね。嬉しいわ」


ルミナが嬉しそうに私に抱き着いてくる。


「ルミナ、婚約おめでとう。今日のあなた、とても綺麗よ」


「ありがとう、まさかリリアーナが来てくれるとは思っていなかったから嬉しいわ。公爵様からも、リリアーナは来られるか分からないと言われていたから」


「まあ、お父様が?私は最初から参加するつもりだったのよ。だって大切なルミナの婚約披露パーティですもの。パレスティ侯爵令息様、優しそうで素敵な方ね」


「ええ、とても優しくて、いつも私を気に掛けてくれるのよ」


そう言うと、ルミナがそれはそれは幸せそうに笑ったのだ。きっとパレスティ侯爵令息様は、ルミナだけを愛し大切にしてくれているのだろう。


いいな…

私もいつか、そんな素敵な殿方に出会えたら…


ついそんな事を考えてしまう。


「それじゃあ私はそろそろ行くわね。リリアーナ、今日は来てくれてありがとう。また後日、お茶でも飲みましょうね」


「こちらこそ、幸せそうなルミナの姿を見られてよかったわ」


そう伝え、笑顔でルミナと別れた。ルミナは真っすぐ婚約者でもあるパレスティ侯爵令息様の元に向かって行った。パレスティ侯爵令息様も愛おしそうにルミナに微笑みかけている。本当に素敵なカップルね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る