第16話

「くそっ!! 仕方ねえっ!!」

 俺は人々を逃がすことを諦めて、破壊そのものに対応することにした。

 要は、次に破壊される範囲を予測して、全開の高速移動で皆の盾になろうと考えたのだ。

 相手がターゲットを人間に絞っているのなら、それは不可能なことでは無い。

 破壊が速いか、俺の足が速いかの勝負だ。

 あくまでも印象に過ぎないが、バッタ化した俺ならばこの程度のダメージを受け止めることは可能だと思われた。

 何度か高所から飛び降りたりして、身体の耐久性を試したことがあるからだ。


「いくぞ!! 分身の術どころか、分身も見えない術!! 名付けて、バッタダンス!!」

 ネーミングセンスの是非は置いておき、俺は恐怖で逃げ惑う人々の背後へ躍り出ると、超高速で反復横飛びを始めた。

 破壊と人々の間に、俺と言う見えない盾が敷かれていく。

 すると次の瞬間、周囲にガガッと何かを引っ掻くような不快な音が鳴り響いた。

 破壊が俺の身体と接触したのだ。

 その感覚は、まるで巨大な鎌を振り下ろされているかのようだった。


「くっそー!! 痛えよ!!」

 予想通り、俺の身体は破壊攻撃に耐えることは出来たがその衝撃は半端では無かった。

 際限なく続く攻撃をこのまま受け続けるべきか迷っていると、不意に攻撃がピタリと止んだ。


「な、なんだ? 終わったのか……?」

 そう思った刹那、今度はがっしりと何かが全身を万力のように激しく締め付けた。


「う、うおっ?! ぐ、ぎ、ぎぎぎぎ……」

 見えない鎌のような攻撃から、今度は締め付け攻撃。

 俺の動きは完全に止められてしまった。

 だが、その瞬間、俺はそこに勝機を見出した。

 身体を締め付けている何かを両手で掴むことが出来たのだ。


「こ、この野郎……!! ぐ、ぐぐぐ、ぐおりゃああああーー!!」

 俺が手に力を込めると、バキっと何かが折れる音がして身体を締め付けている何かが外れた。

「うぎゃああーー!!」

 同時に俺の目の前で激しい絶叫が木霊して、まるで霧が晴れるように、攻撃していたらしき者が姿を現し始めた――。

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バッタマン maro @several

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