ロマンス詐欺に誘われて

@hahahapanya

嘘でもいいから一緒にいたいの

「日本の文化と日本人が好きです。貴方の写真は素敵でよく撮れています。東京在住の韓国人です お友達になってください。」

SNSに入って来たありきたりなメッセージ。

絶対詐欺師だね。


凪子は雑貨屋を営みながら毎日子供達の習い事の送り迎えと 家事、父の介護。

あっという間に1日が過ぎて行く 夫と子供2人と暮らす46歳。

そんな事に付き合うほど暇じゃないの。

そう思って携帯を閉じた。


ここのところ 子供の学校でのトラブル 習い事でのお母さん達の付き合いで疲れていた凪子は

毎日が窮屈で心に余裕がなかった。


あのメッセージが来てから3ヶ月が経った頃

ふと開いた携帯の中のあのメッセージに目がいく。


「好き」

その響きに心がざわついた。

「日本に興味を持ってくれてありがとうございます。嬉しいです。」

気づいたら そんな返事をしていた。

返事はすぐにきた。

「お返事うれしい、凪子さんは今日のご予定はなんですか?」

自分の予定なんて聞かれた事久しぶりだな。。

「Leeさんとお呼びしてよいのかな?私は食材と庭に植える花を買い物に来ています」

こんな日常的な事、つまらないって思われたかな、、、。

直ぐに携帯の着信音が鳴る。

「庭ですか。庭がありますか?私も庭が有れば苔玉を飾ったり花を植えたいです」

流石 日本の文化に興味があるというだけあって苔玉がすきなんて、、、。

気づけば買い物の移動中の車の中でメッセージのやり取りが続いていた。

急いで自宅に戻ると もう子供達の帰ってくる時間だった。

急に現実に戻る。

メッセージきてるかなぁ、、、。

そう思いながらも夕食の支度をしながらいつもの日常に戻っていく。

その日はもうメッセージは来なかった。


次の日 凪子はお店の商品の買い付けに出かけた。

何を選ぶにも Leeとの会話を思い出しながらいつもより心が弾んだ。


連絡、、来てるかな。

何度も携帯を気にする凪子。

一通りの買い付けを終えて ランチにcafeに入った時 携帯が鳴った。

「凪子さん こんにちは。今日の予定はなんですか?」

嬉しかった。またお話しができる。

凪子「私はcafeでランチをしています」

Lee「私も同じですよ今 昼食を食べてます。一緒に食べてる気分ですよ。」

凪子「そうですね、Leeさんは何を食べてますか?」

Lee「私は夜沢山作ってランチに持ってきます」


夜自分で作ってお弁当にするって事かなぁ、、、

って事は独身?

あ。そんな事、私には関係ないか。。

自分の気持ちを引き戻す。

凪子「それは身体にもお財布にも健康的ですね。」

Lee「あまり料理はできないです。でも仕方ない。今日の夜もつくります。写真送りますね。」


だんだん Leeとの会話が日課になってくる。

夜はメッセージが来なかった。

どうしたのかな、、、お仕事忙しかったのかな。。

何処かで 詐欺かもしれない。と思いつつ 非日常に連れて行ってくれるLeeとのやり取りが止まらなくなってきていた。

次の朝 メッセージがきた。

Lee「凪子さんおはようございます。昨日は投資の分析に時間がかかり連絡出来なかった。ごめんなさい」

凪子「へぇー、投資をしているんですね。」

Lee「そうです、教えてあげます、無料です。」

凪子は、やっぱりか。仲良くなってからお金を取るんだね。 そうだよね、そんなはずないもんね おかしいと思った、、、。

そう思い 断りのメッセージを送った。


「私、投資はしたいと思わないので必要ないです」

Lee「お小遣いになりますよ。家族で旅行にもいけます。私は仕事で26カ国を周りました。子供達に沢山経験必要です」

子供の事を言われると弱いのだよ。。

「でもいいです。 私は充分毎日幸せに暮らしてますから。でも気にしてくれてありがとうございます。」


そんなやり取りが次の日まで続く。

楽しい会話はお金の話ばかりになっていく。

凪子は思い切ってメッセージしてみた。

凪子「Leeさん、、Leeさんとの話はとても楽しくてまだまだお話ししていたいけれど お金の話が続くならもうこれ以上は話せません。ごめんなさい。」

メッセージを始めて2週間、毎日 お互いの国の文化を紹介したり日常の報告をしてきた楽しかった時間を 泣く泣く終わりにする事にした。

だって、きっと お金が目的だから。。。

私に興味があるんじゃない、お金。そう思うと切なかった。

Lee「どうしてですか?凪子さんとの会話は楽しい。私の気持ち伝わらないですか?」

私の気持ち、、、?

凪子「Leeさんの気持ち?友達ですよね。私お金の話ばかりする友達は苦手なの。ごめんなさい」

Lee「私はただの友達だけと思ってない。電話していいですか?」

凪子「電話、、、恥ずかしいけど、声  聞きたいです、、、」

すると SNSから着信がある。

凪子は ゆっくり深呼吸をしていつもより高い声で電話にでる。

凪子「………もしもし、、、」

Lee「優しい声、凪子さんですか?

私あまり日本語上手くないです、恥ずかしいです。でも、声聞きたかった」

凪子は応えた。

「そんな事ないです、お上手ですよ。自信もってください。わからない事は私が教えます」

Lee「ありがとう、仕事に戻ります」

そう言って電話を切る。


短い会話。

こんなにドキドキして緊張したのはいつぶりだろう。

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