第169話 教会視察
潤った!
アンナとリンクシルとマグノリアにプラスして、ウェステートとも一緒にお風呂に入った。そのおかげで俺のやる気メーターが、百パーセント近くまで回復している。その夜は遠征してから初めてくらいに、ぐっすりと眠る事が出来たのだった。
可愛いうえに綺麗な体だったなあ…
朝のベッド上で俺はニタニタしていた。聖女特典とも言うべき、女達が無防備で俺に裸を晒してくるオプションに笑いが止まらん。まだベッドから出ないで昨日の風呂を妄想していた。
するとアンナが声をかけて来る。
「聖女。ずいぶん幸せそうだな」
「なんかひっさびさにゆっくり休めたよ」
「それはよかった」
「アンナは?」
「わたしも休めた」
「良かった。しばらくは張り詰めっぱなしだったからね」
「ああ」
俺が起きたことで、マグノリアとゼリスも起きて来る。するとリンクシルが言う。
「メイドを呼びます」
「おねがい」
リンクシルが入り口から顔を出して、廊下にいる騎士に取り次いでいる。マグノリアとゼリスが俺の前に座った。
「おはよう」
「おはようございます!」
「お、おはようございます!」
あれ? ゼリスが敬語を使っている。少しは何かを覚えたのかな?
「眠れた?」
「はい! 疲れが取れました」
「は、はい!」
ゼリスの様子がおかしい。頬を赤らめて俯き、俺を真っすぐに見ようとしなかった。さっきからチラチラと俺に目線を送っては、また俯くを繰り返していた。
「マグノリア。ちょっと」
俺はマグノリアにおいでおいでをする。側に来たので耳元に手を当ててマグノリアに言う。
「ゼリスが変なんだけど」
「あ、ああ…はい。なんと言いますか…ゼリスが小さい時に母は死にまして、女性を見慣れていないと言いますか…なんと言ったらいいでしょう?」
「ああ、昨日お風呂に入ったから?」
「そうです。バアバとしか風呂に入った事なんてなかったものですから、女性と入ったのは初めてだったらしくて」
「それで照れてる?」
俺が尋ねると、マグノリアはゼリスに直接聞いた。
「ゼリスは恥ずかしいの?」
「は、恥ずかしくなんか無いけど!」
するとマグノリアが俺に振り向いてニッコリ笑い言う。
「恥ずかしいそうです」
「姉ちゃん!」
そりゃそうか。お姉ちゃんたちと風呂に入って、裸を見てピンコ立ちさせていたもんな。俺が前世でヒモのクズだから分かるが、もう女を意識する年になっているってこった。
あー、やだやだ。将来を考えるとげんなりする。
だが俺はもちろん聖女、穏やかな微笑みを浮かべてゼリスに言った。
「幸せならそれでいい。今まで辛い思いをしたんだから」
だけど子供のうちだけだからな!
「は、はい」
するとアンナが笑って言った。
「それに、世界で初めて聖女の裸を見た男じゃないのか?」
確かにそうだ。俺は女の前でしか裸になどならん。
「私の裸。そうかもね」
「男が一生のうちに一度でもお目にかかる事の出来ない聖女の裸をみたのだ。いくらゼリスが幼いと言っても、その素晴らしさぐらいは分かるさ」
ん? 俺の裸ってそんなに価値があるの? アイドルでも女優でもないのに?
逆の立場で考えたことは無かったが、男にとっては俺の裸はそういうものなのだろうか?
するとリンクシルが言った。
「聖女様はお綺麗です。ウェステートさんも美人ですが、比べ物にならないと思います。女のウチでも恥ずかしくなります」
「女でも?」
リンクシルとマグノリアがうんうんと頷き、アンナは腕組みをして目を伏せた。
えっと、女でも効力を発揮するって事? そいつは…めっちゃ希望が湧いて来る。
「そうかー、そうなのかー」
俺は皆から顔を見られない方向を向いて、ニタニタしてしまうのだった。鏡を見なくても、自分がどれだけだらしない顔をしているかが分かる。
スッと前を向いた時はスマした顔にする。
「まあ、ゼリスは男の子だし。今度から一人で入るか、マグノリアと入るようにした方がいいかな。あんまりそういった体験をすると、大人になった時おかしくなるといけない」
「まあ…そうだな」
アンナが納得すると、ゼリスがちょっとだけ悲しそうな顔をする。
こんな年でスケベ心があるなどけしからん。
「それはそうと、今日動きが無ければこの都市の教会に行って見ようと思う」
「ついて行く」
「はい」
「分かりました」
「僕も」
話をしながらも服を着替え終わると、メイドが迎えに来た。
「朝食の用意が出来ております」
「ありがとう」
本館に連れていかれると、その食堂にはルクセンとウェステートとミラシオンが待っていた。
どうやらブレックファストミーティングをやるようだ。座ってすぐに朝食が運ばれて来たので、俺が祈りを捧げて皆が食事を始めた。
俺がミラシオンに聞く。
「進展はございましたか?」
「いえ。シベリオル様の形跡も市民の証言も取れておりません」
「わかりました。それでは捜査継続と言う事ですね」
「そうなります。王都からの連絡もまだですので、この地にもう少し逗留する事になります」
「では」
俺はルクセンに向き直る。
「本日は教会へと足を延ばします。遊んでばかりはいられませんから」
「分かり申した! それでは、わしも行く事にしましょう!」
爺さん暇なの? 何故かずっと俺につきっきりな気がする。
その隣のウェステートも頬を染めながら言った。
「あ、あの! 私もご同行させていただけますか?」
「構わない」
「はい!」
朝食を終えた俺達は早速教会に向かう事にした。俺とアンナとリンクシル、マグノリアとゼリス、ルクセンとウェステートにウィレースも着いて来るそうだ。領主邸からニ十分程度歩いたところに教会はあった。教会の入り口を開けると、修道士達が建物の掃除をしている。
俺は近くで掃除をしている修道士に言う。
「ごきげんよう。司教様はおいでですか?」
「おはようございます。恐れ入りますがお名前を」
「聖女が来たとお伝えください」
次の瞬間修道士がビックリしたような表情で俺を見、その後ろにいるルクセンを確認した。
「失礼いたしました! 聖女様!」
そして修道士が後ろを振り向いて数人に声をかける。
「聖女様がいらっしゃいました!」
すると修道士たちが一気に集まってきて、帽子をとり俺に頭を下げた。すぐに修道士の一人が走り去って行く。しばらくして品の良さそうな白髪の神父が足早にやって来る。
「こ、これは! 聖女様! どうぞ奥へ!」
そりゃそうなる。教会では教皇の次くらいの立場なのだし、枢機卿よりも上の俺が来たらこうなるのは当然だった。
「いえ。私はやるべき事をやりに来たのです。手の空いたものは市中に触れ回っていただけますか?」
「何をお知らせいたしましょう?」
「体の具合の悪い者や怪我をした者、病気の者は教会に集えと」
「かしこまりました!」
そして修道士たちは慌てて教会内に走り去って行ってしまった。目の前の司教にいう。
「それでは市民がお集まりになるまで、ちょっとお話でも」
「はい! それでは応接間にどうぞ!」
「わかりました」
俺達は司教に案内されて、応接室に連れていかれる。荘厳な教会で手入れも行き届いており、流石は大都市の教会だけあった。俺達が応接室について椅子に座るように勧められた。
「では司教様もどうぞおかけ下さい」
「はい!」
司教の額に汗が浮かぶ。かなり緊張しているようで、ハンカチを取り出して額の汗を拭いていた。皆が座ると、修道士がお茶を運んできて俺達の前に置いて行く。
「すみません急に訪れてしまって」
「いえ。聖女様が、ヴィレスタンにいらっしゃっている事は知っておりましたから!」
なるほどそりゃ掃除も念入りにやるか。
「この都市の様子はどうです? 敬虔な信徒達は?」
「はい。礼拝にも多くの市民に来ていただいております」
「特定の商人だけが出入りしているような事は?」
「ございません。公平を期しております」
「それはよかった。それでは教会運営の事を詳しく聞かせていただいてもよろしい?」
「はい!」
返事を聞いた俺はリンクシル達に言う。
「アンナ以外は外へ」
「「「はい!」」」
「そして恐れ入りますが、ルクセン卿とウェステートさんとウィレースも遠慮願えますか?」
「わかったのじゃ」
「はい!」
「は!」
そして俺とアンナを残し、皆が修道士によって他の部屋に連れていかれた。俺と司教が一対一で話す事になる。それから司教の話が始まるのだった。
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