第10話 魔神

 戦いの最終決戦は、『通り』を中心に行われた。これまで戦場全体に大きく広がり、無秩序に王都を目指していた魔族の大群が、中央のパルキナの光を、その一点を目掛けて向かって来たのだ。魔王の姿が、再び魔族の大海に沈んだ。


 一点に集中した魔族たちの猛攻は、先程までの戦いとは比べ物にならない勢いだった。元隊長たちも必死に応戦するが、これまでの戦いで体力を消耗している彼らは、少しずつ押されはじめた。彼らの五芒星が徐々に小さくなり、少しずつ彼らの間を掻い潜る魔族が増えていく。隊長たちのピンチに、戦士たちは持ち場を離れて『通り』に集まり、掻い潜った魔族たちから王を守った。


 戦いは乱戦に陥った。希望の光に勇気付けられ、必死に守ろうとする戦士たちと、絶望の光に焦り、必死に消そうとする魔族たちが激突した。




 パルキナは必死に耐えていた。眼前で繰り広げられる死闘を黙って見ているしかなかった。パルキナの目の前で戦士たちが次々と倒されていく。犠牲を覚悟でこの作戦を立案したはずなのに、この結界が最優先だと分かっているのに、それでも、全軍後退せよッ!! と叫びたくなる。結界部隊も死力を尽くしてると分かってるのに、それでも、早くしろッ!! と叫びたくなる。


 パルキナはこの結界魔法が大ッ嫌いだった。発動までに時間がかかり、その間動くこともできない。それでもこの結界魔法は特別だった。十三人の膨大な魔力と十三の異なる魔法を有するこの結界は、超高硬度なのはもちろん、魔法反射に自己修復……など、様々な力を持っていた。発動さえすれば、まさに無敵の結界だった。




「ジャワール! あと何人だ!?」


 フォルの声に、ジャワールはチラッとパルキナを見る。激しい光を放つパルキナの背後に立つ人影の数は──。


「四人ッ!」


 ジャワールは叫んだ。全魔力を放出した人間は意識を保つことさえできない。つまり、立っている隊員は、まだ全魔力をパルキナに渡し終えていない。それが終幕の、簡易的な目安になる。気休めにしかならないが、それでも必要だった。


「もう少しだッ! みんな、耐え抜くぞッ!!」


 戦士たちが、ディルギスの鼓舞に応えようとした。そのとき、魔熊が現れた。しかも、一体ではなかった。迫る魔族の大群の、あちこちにその大きな姿が見えはじめたのだ。


 アガーテは、即座に先頭の一体に狙いを定め、矢を放った。凄まじい速度で魔熊の目に向かって一直線に飛ぶ。しかし、魔熊はギリギリで顔をそらした。矢は、魔熊の身体に当たったものの、その被毛に弾かれた。


「ウソッ!? 私の矢が効かないなんて」


 アガーテは驚きながらも、矢を放ち続ける。しかし、一本たりとも魔熊には刺さらない。


「何じゃ、もう限界か? 老人がピンピンしておるのに、最近の若者は情けないのぉ!!」


 シュガイは戦斧を振り回し、押し寄せる魔族の大群を一人で押し返しはじめた。そして、とうとう魔熊と対峙した。


「見下ろされるのは、久しぶりじゃのう!」


 シュガイは、立ち上がった魔熊に、自分より大きいその巨体に臆することなく、全力の一振りをお見舞いした。シュガイの戦斧が唸りをあげて、魔熊の腹部を捉えた。しかし、魔熊はびくともしなかった。それどころか戦斧の方がバラバラに砕けた。老人より先に武器の方が限界を迎えたのだ。


 そのとき、五芒星は完全に消滅した。勢いのついたシュガイはバランスを崩した。身体が流れ、隙が生じる。その隙を魔狼は見逃さなかった。魔熊の脇から飛び出し、襲いかかった。


「しまっ──」


 魔狼が肩に食らい付いた。牙が肉を貫き、骨が砕け、鮮血が飛び散った。


「何を、してるんじゃ、小僧……」


 シュガイの目の前には、ジャワールがいた。ジャワールがシュガイの代わりに、魔狼の牙をその身に受けていたのだ。


「いくら、曲がっていても、この距離じゃあ、外さねぇ」


 ジャワールは曲がったライフルの銃口を、食らい付いている魔狼の目に押し当て、引き金を引いた。銃声のあとに、短い断末魔が響く。


「…………」


 ゆっくりと振り返ったジャワールの半身は、真っ赤に染まっていた。


「ああ、もう、弾がさぁ、尽きたからよぉ、コレを渡しに来たんだ。鈍器には、なるだろ……」


 ジャワールは振り絞るようにそう言い、シュガイに曲がったライフルを渡そうと、手を伸ばした。しかし、その手が届く前に彼は崩れた。


 その身が地面に衝突する前に、シュガイは受け止めた。


「バカ者! こんな老いぼれを庇いよって……」


 老将の目から大粒の涙が零れた。彼はこれまでの人生で、幾度となく部下──それも己より若い者──を看取ってきた。しかし、戦いの最中に涙を流すのは、これが初めてだった。大戦が終結し、もう看取ることは、あんな思いをすることはない、と安心していたからか、味方と思っていなかった若者に庇われたからか、それとも、ただの老いなのか、自分でもわからなかった。


「もういいッ!! もう下がれッ!!」


 本陣から必死な叫びが聞こえた。見ると、『戦神』と恐れられた男が狼狽えている。いや、そんなことより、光の向こうに立つ人影は、あと二人……。 


「シュガイ!!」


 左右の二人が叫んだ。シュガイの戦斧をへし折った魔熊が、二人目掛けてするどい爪を振り下ろしていた。まさに当たると思ったその瞬間、アガーテの矢が空を切り裂き、魔熊の目に突き刺さる。目の前の獲物に夢中になっていた魔熊は、矢に反応できなかったのだ。


 魔熊は絶叫をあげ、後ろに倒れた。密集していたのが災いし、その巨体に何体もの魔族が下敷きになった。間一髪で巨体を避けた魔族も、すかさず駆け寄ったディルギスとフォル、二人の前に無残に散った。


「ここは我らに任せて、ジャワールを連れて退けッ!!」


 ディルギスとフォルは、シュガイの前に割って入った。


「……いや、お主らこそ下がるんじゃ」


 シュガイはジャワールを優しく地面に降ろすと、ライフルを受け取り、立ち上がった。


「分かっておるじゃろう? この軍勢、もはやワシらだけでは抑えられん。このままでは、パルキナの魔法が完成する前に、全員魔族どもに呑み込まれて、人間界は滅亡じゃ」


 老将は静かに首をふった。その動作は弱々しく、シュガイには相応しくない、年相応のものだった。


「ワシはもう十分に生きた」


 静かなその声にハッとし、二人は背後を一瞥した。シュガイの掌にはライフルの弾が乗っていた。ジャワールに抗議の印として投げつけられた、それが……。そして、穏やかな老人の顔を見たとき、二人は言葉の意味を理解した。


「おい、この距離でそれは──」


「大丈夫だ。王は、私が必ず守る! 聖騎士の誇りにかけて、守ってみせる……今度こそ、必ず」


 ディルギスは自分に言い聞かせているようだった。


「じゃったら、早よジャワール連れて下がれ!」


 シュガイの両目に最後の闘志が宿り、再び猛将の顔に戻る。ディルギスは、素早くジャワールを担ぎ、走り出した。


「任せたぞ、ディルギス!」


「ああ」


 ディルギスは短く答え、全軍に後退命令を出しながら、自身も後退する。シュガイはその背を見つめていたが、ライフルの弾を強く握りしめ、力を込めた。彼の手が光を放つ。そのとき、前から声がした。


「時間稼ぎのための時間稼ぎ、なんて隊長の役目じゃねぇが、しょうがねぇな~」 


 フォルが一人で魔族の大群を押し留めていた。フォルは、言葉とは裏腹に必死だった。少しでも気を緩めれば、すぐにヤられる、そう確信するほどに、魔族の攻撃は苛烈を極めた。


「何をしてるんじゃ、フォル! 主も早よ下がらんかッ!!」


「ああ? 俺まで下がったら、アンタは戦士たちが後退する前に魔族に呑み込まれるぞ! とうとうボケたか、シュガイ?」


 彼ら以外が後退をはじめた今、そこは魔族の大海の中に取り残された孤島になりつつあった。


「それはあなたも同じでしょ。一人でどうするつもりよ、フォル」


 言葉と共に数本の矢が飛来した。矢は、フォルに飛びかかる魔族たちを地面に磔にした。


「アガーテ!? なんで、お前まで前に来るんだよ!?」


 アガーテは、シュガイを跳び越しフォルの後ろに着地していた。


「なんでって、熊を狩るためよ。この距離ならいくら魔熊で避けられないわ!!」


 アガーテは、一番近くの魔熊に狙いを定める。


「そんなことのために命をかけるのかッ!?」


「当たり前じゃない、外したままなんて……、嫌よッ!!」


 わがままと一緒に放った矢は、見事に魔熊を貫いた。熊狩りに成功したアガーテは満足そうに言う。


「よし! すっきりしたぁ~。あとはフォル! あなたは好きに動きなさい。私が援護するわ!!」


 二人は連携して戦った。と言うよりも、アガーテがフォルの動きに合わせていた。アガーテはこの戦闘中、ずっとフォルの後ろで彼の動き、戦い方を見ることができた。そのおかげで、短い期間で彼に合わせることができたのだ。


 ディルギスには悪いが、戦いやすいな。これなら存分に槍をふるえるぜ……フォルが舌を巻くほど、アガーテの援護は完璧だった。フォルは鬼のような槍さばきで、魔族たちを次々と貫いていく。




「シュガイ!! 準備が完了したッ!!」


 ディルギスの叫びに、シュガイは振り向いた。すでに、真後ろに少しの空白を残して、パルキナのいる場所まで魔族たちに占領されていた。しかし、魔族たちは光しか見えていないのか、一体残らず背中を向けていた。ディルギスはパルキナの前に立ち、王を死守している。


「主らも、本当にいいのか?」


 シュガイは向き直り、握り締めていた弾を、曲がったライフルに装填する。


「いいから早くやれーー!!」


「いいから早くやってーー!!」


 二人は同時に叫んだ。


「最近の若者は、ほんとに生意気じゃのぉ~」


 シュガイは、引き金を引いた。


 カチン! 乾いた音が鳴り響いた。


 


 次の瞬間、戦士たちの目を閃光が焼いた。孤島で大爆発が起こったのだ。


 爆風がとてつもない速度で放射状に広がる。魔族を呑み込み、倒れた戦士を呑み込み、草を呑み込み、地面ごと全てを焼いた。


 戦士たちは死を覚悟した。そして、爆風は戦士たちも呑み込む……はずだった。彼らに死を覚悟する暇など与えずに。


 しかし、彼らは無傷だった。爆風は戦士たちの前で止まっていた。ディルギスが止めていたのだ。彼は双剣から全魔力を放出し、魔力の盾を創り、爆風から王と戦士たちを守っていた。爆風が魔力の盾にぶつかり、虹色の輝きを放つ。魔力の盾と双剣に亀裂が入り、今にも壊れそうだった。


「二度も、王を死なせるものかーーー!!」


 ディルギスの魂の咆哮に、彼の全身から光が立ち上った。光は双剣を伝い、魔力の盾を直していく。そして、静寂が訪れた。


「よかった。今度は、守れた……」


 爆風を防ぎきったディルギスは、王を見て笑った。その直後、彼の身体は灰のようになり、崩れた。それは限界を超えた魔力を使った反動だった。


 戦士たちはあまりの出来事に呆然と立ち尽くしていた。あの大爆発は隊長たちが……? ディルギス様が守ってくれなければ、俺たちは今頃……。隊長たちが、その命を捨てて我らを守ってくれた……。人間界は救われた、のか……。


 しかし、それは長くは続かなかった。砂なのか、灰なのか、判別しがたい煙の向こうから、爆発前と変わらない、いや、それより騒々しい地響きが、こちらに向かってくる夥しい足音が聞こえてきたのだ。瞬時にカレヴィが突風を起こし、煙を吹き飛ばした。


 煙の向こうには、無傷の魔王を先頭に、魔族の大海が広がっていた。爆発によって空白地帯が生まれたことで、魔族たちの迫る速度は上がっていた。


「隊長たちの犠牲は無駄だったのかッ!?」


 戦士たちは狼狽えながらも、武器を構え直した。


「全員、動くなッ!!」


「ですが、魔族が迫って来ます!」


 魔族の大波はパルキナを呑み込もうと目前まで迫っていた。


「彼らが役目を果たしたんだ……」


 パルキナには分かっていた。ディルギスにできたことを魔王ができないはずはないと、そして、そんなことは隊長たちも承知の上だったと。


「次は俺の番だッ!!」


 そのとき、パルキナの決意に応えるように、彼の剣が金色に輝いた。


「遅くなって申し訳ありません。あとは、任せました、パルキナ……さま」


 パルキナの後ろで最後の一人が倒れた。結界の準備が完了したのだ。


「よくやったッ!!」


 パルキナが金色の剣を地面に突き刺した。剣の左右から二本の光が放たれた。それは、ものすごい速度で魔族の大海を囲むように弧を描き、その軌跡には光輝く細い線が残った。先頭の魔族が鋭い爪を煌めかせ、パルキナに飛びかかる。そのとき、ちょうど反対側で二本の光が交差した。


 その瞬間、光の線はさらに強い光を発した。魔族の爪は、光の線上で見えない何かに弾かれ、パルキナを切り裂くことはおろか、線の外にも出られなかった。線を越えようとした魔族たちはことごとく何かに阻まれた。二本の光の線が、巨大な円形の結界を形成していたのだ。そして、二本の光はまだ止まっていなかった。円の内側で狂乱する魔族たちの間を、忙しそうに飛び回っていた。


 結界それ自体に攻撃力はない。だが、魔族たちは行き場を失った。そして、行き場を失った魔族たちを、大波のように押し寄せる後続が次々と押し潰した。異変に気付き急停止する魔族もいたが、後ろが続かなかった。見えなかった結界は、魔族の血と塁々と積み上がる死体でクッキリと浮かび上がった。


 突然、結界内の地面が光を放った。それは魔族たちの狂乱の宴に、終わりを告げる光になった。


「これで、終わりだぁああああ!!」


 パルキナが叫ぶと、結界の中に二重の六芒星が光り輝いた。次の瞬間、炎が噴き出した。炎は境界の森のときと、規模も火力もけた違いだった。天まで焼き尽くす勢いの猛火が渦を巻き、魔族の大海を包み込んだ。


 戦士たちの目の前に、見えない壁を一枚隔てた先に、地獄が生まれた。魔族の大海が、一瞬で灼熱地獄へと変わったのだ。逃げ場のない檻の中で、魔族たちはなすすべなく炎に焼かれ、断末魔の叫びも炎の轟音に呑まれていく。地獄の業火は生きているモノも、死んでいるモノ、等しく灰と化した。


「ハハハ! やった、やったぞッ!! 魔族が、魔王が燃えている!!」


 戦士たちが歓声をあげた。大量の障害物が灰になったことで、魔王の姿が見えたのだ。


 断末魔さえ燃え尽きるような灼熱の檻。流石の魔王もこれには、身をよじらせ苦しんでいる。全身を包む黒いローブは破れ、ふざけたお面にもヒビが入っていく。


 だが、パルキナは言い知れぬ不安を感じていた。


 今のところ作戦は順調だ。あとは魔王が完全に止まるのを待ち、結界を圧縮して、魔王に触れて封印するだけだ……。魔族たちは燃え尽き、確かに魔王も苦しんでいる。剣でも斬れなかったローブも破れ……。


「燃えて、いない……、まさか……!?」


 パルキナはハッとした。そのとき──。


 パキンッ! 歓声と炎の轟音の中、魔王の仮面が割れる音がはっきりと聞こえた。それは、戦士たちにとって歓喜の音のはずなのに、なぜだが冷や汗が噴き出した。


 次の瞬間、炎の中で魔王の身体は纏っていたローブを引き裂き、何十倍にも膨れ上がりはじめた。


「ウソ……だろ!?」


 あっという間に、人型だった魔王がトカゲのような姿に変化した。しかし、その大きさは山のようだった。その大きな身体は尻尾の先まで黒い鱗に覆われ、背にはその巨体に相応しい巨大な翼があり、大きな口には、剣のような大きく鋭い牙がびっしりと生えていた。その姿は、まさに伝説に出てくるドラゴンだった。


「魔神……」


 その絶望を体現したような姿に、戦士たちから声が漏れた。地獄の業火の中に佇む魔王の姿は、まさに『魔神』だった。恐怖を通り越して神々しい。


「こんなの、人間が勝てるはずねぇよ……」


「もう人間は終わりだ……」


 戦士たちは戦意を喪失した。次々と手から武器が転がり落ちる。


「まだだッ! 最後まで諦めるなッ!!」


 パルキナは諦めていなかった。諦められるはずがなかった。完成したばかりの三つ目の六芒星がさらに炎を噴く。だが、王の努力も意味をなさなかった。魔王は平然としているし、戦士たちは逃げ出す気力も失い、その場にへたりこんでいる。


 クソッ! 強引にでも今やるしかない……パルキナが覚悟を決めた、そのとき──。


 魔王が吼えた、天に向かって。


 耳をつんざく爆音が轟いた。


 戦士たちがしゃがみこんで耳を塞いでいる中、パルキナは必死に剣にしがみついた。


 何をしようとも、この結界だけは解かんぞ!! ……パルキナは、その強い想いで魔王を睨んだ。そして、


「は……?」


 パルキナは目の前が真っ白になった。地獄の業火はかき消され、結界にはヒビが入っていた。


「ダメだ……、ダメだ! ダメだ!! これだけは絶対にッ!!」  


 パルキナはさらに魔力を込めた。しかしヒビは、パルキナの努力を嘲笑うかのように、どんどん、どんどん広がり、ついに無敵の結界は粉々に砕け散った。


「結界が、壊された……」


 パルキナは愕然とした。十三人もの魔力を結集して創った結界が、あれだけの犠牲を払って創った結界が、ただの声に壊された。


「よもや、人ごときが我にこの姿を出させるとは……。みごとだ」


『魔神』が口を開き、その姿に相応しい低く冷たい声が響いた。それは称賛だった。敵意も悪意も微塵も含まない、人に対する垣根のない称賛。


 しかし、パルキナは奥歯をぎりりと鳴らした。


 みごと……だとッ!? 何千、何万の戦士を見殺しに、その遺体さえも犠牲にしたのに、みごと、だと!! 貴様の部下を数え切れないほど殺した相手に、みごと、だとッ!!


「ふざけるなッ!!」


 パルキナは怒りに任せて駆け出した。剣を振り上げ、山のような巨体に、たった一人で向かっていく。勝ち目なんてないのは誰の目にも明らかだった。パルキナ自身、百も承知だった。しかし、怒りにでもすがらなければ、心が真っ黒に塗り潰される、そう分かっていた。

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