増えないコメント

トマトも柄

      増えないコメント

 私の名前はグレノリア=ウェルヒア!

 今配信サイトでVライバーで配信しているの!

 Vライバーは何かって?

 ヴァーチャルの姿での配信者、略してVライバーって言われてるの。

 私には今悩みがあるの。

 人がどんどん来てくれて視聴者は増えていってるの。

 けれど、コメントが全く無いの。

 普通の会話はおろか、挨拶さえも来なくて、いっつもコメント欄は真っ白状態。

 配信をしながらどうしたらコメントを貰えるか考えているところなの。

 その悩みをしながら時計を見る。

 すると、配信時間の十分前になっている事に気付く。

「今から準備しないと!」

 急いて配信の準備を始めて、テスト調整をする。

 私は配信を開始して、

「みなさん! ウェルヒアー! 配信始めたよー!」

 挨拶をしながら、視聴者数を確認する。

 一人、五人、十人と視聴者数はどんどん増えていく。

 けれど、コメント欄は真っ白状態。

 コメントは挨拶も全くない状態で静かな状態が続く。

 私はいつもの事と気にせずに進める。

「今日はー! このゲームを持ってきたのー! これ一度やってみたかったのよ!」

 そう言ってゲーム実況を始める。

 元々やりたかったゲームでもあって常にテンションは高めであった。

 けど、そのテンション高めの配信に反して、コメント欄は白いまま……。

 それで二時間が経過し、配信終了時間になる。

「みなさんここまでご視聴ありがとうございましたー! おつヒアー!」

 最後の挨拶はするけど、結局はコメントは白紙のままで終わる。


 終わった後で私は考えていた。

 そうすればコメントが打たれるかで悩んでいた。

 そこで私は思い付いた。

 もしかしたらミスをすれば教えてくれるのでコメントを打ってくれるのではないかと。

「間違えて用意するゲームのハードを用意したらリスナー側が気付いてコメントしてくれるかも!」

 そう思ったが、すぐに首を振った。

「それしたら配信の手間が増えちゃうじゃない! それでリスナー待たせてしまうじゃない!」

 すぐに却下した。

「じゃあ対戦中に勝ったと勘違いしてガッツポーズして席を立つ……ってそれコメント読めないじゃない!」

 即座に自分でツッコミをする。

「じゃあこれなら! 世界上位のゲストを公式大会で倒して目立たせる……私そんなに強くない! ダメじゃん!」

 結局良い案が思い付かず次の配信の日になった。


 今回の配信は歌配信だ。

 リスナーから希望の曲を貰っての仕方をしたかったのだけど、なんせコメントは真っ白状態なので歌う曲も自分の好みで用意している。

 そして、配信を開始した。

「みなさん! ウェルヒアー! 配信始めたよー! 今日は歌枠するよー! 私好みの曲を選曲してきたからたっぷり聴かせるわよー!」

 こう言っているけど、コメントは白いままである。

 私はそこは気にしないようにして歌い始める。

 歌えば歌うほど視聴者数も増えて気に入ってくれたのかチャンネルを登録してくれる子も増えた。

 けれど、コメントは全く無い……。

 私は選曲した曲を全て歌い終えて、

「みなさん聴いてくれてありがとう! 良かったらチャンネルのフォローよろしくねー! では、おつヒアー!」

 そして私は配信を切った。


 終わった後で自分のチャンネルの管理画面を確認すると、チャンネルのフォローはかなり増えているのだが、コメントは一切書かれていなかった。

 結局どうすれば良いのかと考えこんでいると、自分の歌の配信で思い付いた。

「そうだ! オリジナル曲を依頼すれば良いじゃない! これなら反応くれるはず!」

 そして、早速依頼をかけていく。


 曲、歌詞、オリジナル曲用のイラストと様々なところに依頼して自分の歌声を入れて自分のオリジナル曲ができあがった。

 もちろん依頼してくれたクリエイターさんの名前を忘れずに説明欄に入れて後は予約投稿するのみである。


 そして、予約投稿して宣伝もした。

 これなら誰かしらコメントをくれるはず。

 私はそう期待していた。

 予約投稿した曲の時間まで後5分前になった。

 待機している視聴者の数は今までにないくらいの人数が来てくれている。

 これは期待できると思い、私は笑顔になり予約した投稿時間まで待っていた。

 ただ、その期待は大きく裏切られる事になる。

 オリジナル曲が流れ始める。

 視聴者数にはかなりの人数が来てくれている。

 けれど、コメントには一切何も書かれなかった……。

 初めから終わりまで全てである。

 私は正直怖くなってきた。

 この見てきてくれてる人達は何を思い、何を考えているか分からなかったからである。

 曲はそのまま人気を出してトップライバーと並ぶくらいの再生回数になって人気になっていた。

 ただ、コメントは全て白紙のまま……。


 私は少し配信を休もうかと考えていた。

 みんなが何を思っているのか分からなくなってきたからだ。

 その時に一通のメールが来る。

 私は何だろうと思い、メールの内容を開く。

 それはトップライバーからのメールで良かったらオリジナル曲の紹介をさせてくれないかとの内容だった。

 私は喜んで快く承諾した。

 トップライバーから紹介してくれるなんてここを逃したら二度と無いと思っていたからだ。

 そして、こうも思ったのだ。

 この紹介で私の事をどう思っているのかのコメントも貰えるはずと。


 紹介してくれる当日。

 私はトップライバーのチャンネルを見観に行ってる。

 そのチャンネルではライバーの盛り上がりに呼応するようにコメントが賑わっている。

 そして、私の紹介が始まった。

 すると、私の紹介が始まった瞬間にコメントが止まったのだ。

 まるで、話題に触れてはいけないみたいな雰囲気のように何も動かない。

 ライバーは私の曲の良さ、魅力などを一生懸命伝えているのだがコメントは一切動かない。

 視聴者数はどんどん増えていくのに対し、コメントはそれに対比して流れが止まったままである。

 私は辛かった。

 ライバーさんに凄く申し訳ない気持ちになった。

 時間をかけ、労力をかけ、一生懸命紹介してくれているのにも関わらず誰も答えてくれない。

 まるで壁打ちをさせているにしか見えなくなっている。

 私の紹介が終わった後、再びコメントが動き出したのである。

 私は涙を流すしかなかった。

 こんな形で周りに迷惑なんてかけたくなかった。

 ライバーさんは何も失態はしてなかった。

 むしろ褒め称えていたのである。

 それなのに誰も答えない……。

 私は怖くなってしまったのだ。


 ライバーさんの配信が終わった後、私に一通の連絡が入る。

 そのライバーさんが通話をして欲しいとの連絡だった。

 私はその連絡に応じた。

「はい、グレノリアです。 今回はご紹介して頂きありがとうございます」

「今回は誠に申し訳ございませんでした!」

 開口一番に入っていたのは謝罪の言葉だった。

「私の力不足によりグレノリア様に不快な思いをさせてしまって誠に申し訳ございませんでした!」

「いえ、あなたは何も悪くないのです。 むしろ褒めてくれてたじゃないですか。 とても嬉しかったです」

「け……けれど、リスナーさん達の対応が」

 ライバーさんは言い淀む。

「大丈夫ですよ。 私だとよくあるのですよ。 気にしないでいいですよ」

 私がそう言ってもライバーさんは気にしてしまっている様子である。

「この話はここで終わりにしましょう。 これから私の事知ってくれるっていい機会も貰いましたので。 貴重なお時間ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ申し訳ございませんでした。 またご機会があればお誘い致します。 貴重なお時間、こちらこそありがとうございます」

 お互いにそう言って通話を切った。

 私はずっと考えてた。

 このままでは周りにも影響が出る可能性あると思い、ある行動に出た。


 数日後、私は配信を付けた。

「みなさん! ウェルヒア―! 今日は大事なお知らせがあるの!」

 配信を付けた後の視聴者数はかなりの数が増えていく。

「私は少しの間休止を宣言します!」

 視聴者数は増えていくが、コメントは白いままだ。

「少し思うところがありまして、自分自身のスキルアップをしていきたいと思います」

 そう言うと、ポンとコメント欄に何かが付いた。

 ついにコメントが付いたのかと期待して私はコメントを見た。

 投げ銭機能のスーパーテンションというシステムだった。

 しかもかなりの高額で送られている。

 最高額の三万円が贈られている。

 しかもその後に追加で二万円贈られて限度額まで贈って来たのだ。

「スパテンありがとうございます!」

 その後に続くかのように色々なリスナーがスーパーテンションが贈られてきた。

 ただ一つ……ある事が書かれないまま。

 コメントは何も書かれていなかったのである。

「ではみなさん! ありがとうございました! おつヒアー! 絶対戻ってくるからね!」

 そうして配信を閉じて、スーパーテンションを贈ってくれた人達の名前をまとめた。

 そして、その名前欄を見て一言呟いた。

。  


 






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