第29話 地毛のカツラと殺人ハンドバッグ
カラカラカラカラ……。
四輪馬車の車輪が整然と並ぶ
本来は管理の厳重な城門の出入りも、機密情報をあつかう情報部所属の馬車ならフリーパス同然である。
車内の四人は身分の確認すらされず無事通りぬけた。
「しかし、見事なものですね~」
護衛の一人、ミックという若者が熱い視線を向けながらエリーゼに話しかけた。
ずいぶん軽い感じの
「カツラ……ですよね
エリーゼはニコリと微笑みながら
陽の光を
となりに座るジーンともどもポーっと顔が赤くなった。
ちなみにジーンの本名はジーニアス(天才)というらしい。なんというかその、苦労の多そうな名前である。
あまり深くツッコミはいれないほうが良さそうなので、エリーゼはあえて余計なことは言わない。
「元は自分の
髪が
「ははあ、美しさのためにそこまでの苦労を」
ミックのおかしな言い
美しさのためではなくて、あくまで任務のためである。
どうもこの男、頭に血が上って理性があやしくなってきているらしい。
色々な意味で危ないと感じたのか、同僚のジーンが
「ん、ん! ちなみに、こう言っては失礼ですがあなたは護身術のほうは期待してもよろしいのでしょうか。
ずいぶんと動きにくそうなドレスですが」
これにもエリーゼはニコリと答えた。
「分からない程度に工夫は
「しかしいざという時、素手では」
エリーゼは笑顔を崩さないまま、手に持っていたハンドバッグを顔の高さまで持ち上げた。
そして軽く
カンカン!
……なぜか、革製のハンドバッグから金属音がした。
「薄い鉄板が仕込んであります。目ためより便利ですのよ」
「そうでしたか」
叩いてよし、
使い方はいくらでもある。
だから心配御無用。という無言の主張が理解できたようで、ジーンは静かにうなずいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます