第12話 遠征3 息ピッタリな最高のバディ

 翌朝、アロンの目はパンパンだった。


「マックスー。目が気持ち悪い……」


 マックスはアロンの顔を見た。

 そこには、土偶の目のようになったアロンがいた。


「プッ! ククク……。ふふ……。ふははは……!」

「もうー。酷いよマックス。笑うの我慢出来てないよ」

「ごめん、予想以上に凄かった」


 マックスは自分の目尻に溜まった涙を拭いながら言った。そして、そのままマックスはアロンの目元を手で覆う。


 アロンの目元が淡く光り、アロンの目が元に戻った。


「マックスありがとー!」

「どういたしまして。さ、片付けして、2日目を始めよう」




 2人は道具を片付け、歩き始めた。

 2日目も探索魔法を使いながら魔物を探した。


「反応が3つ? いや5つかな? 重なったり、離れたり……。なんだろね、これ?」

「とりあえず行こっか!」


 2人はその地点に向かった。


 そこには巨大な頭のような円柱形の石の塊が5体、縦に重なって塔のようになったり、バラバラになって跳ねたりしていた。


「な、なんだこれ?」


 アロンが驚く。


「トーテムンだ。1番上に来た頭が攻撃してくるよ。頭によって属性が違うから気を付けて!」


 マックスが注意を促す。


「え? どれがどの属性なの!?」

「えっと、多分だけど、赤い顔が炎、青が水、緑が草、黄色が土、紫が……紫が……ゴメン! わかんない!」

「とりあえずOK!」


 アロンが返事した途端、赤い顔が1番上になり口から火を噴き出してきた。

 アロンとマックスはギリギリで避ける。


「アロン、大丈夫だと思うけど、魔法シールドを張ったままで闘うよ!」

「ああ!」


 2人はトーテムンに向き直る。


「くらえ!」


 アロンは水流を赤い顔めがけて放った。

 すると、縦に並んでいた頭たちが分解してバラバラになって縦横無尽に跳ね出した。

 アロンの放った水はトーテムンに当たらず後ろの木に当たった。


「くそ! 避けられた!」

「あの動き、なんとかしたいね」


 次は、水色の顔が上に来る。

 先程のお返しと言わんばかりの鉄砲水が2人を襲う。

 それを転がって何とか避ける。


「何とか……、何とか……。! そうだ!! マックス、ベアキラー覚えてる? あの時みたいに囲って、縦に細長く檻の形を変えちゃえば良いんじゃない?」


「! それだ! 任せて!」


 再びトーテムンがバラバラになる。そのバラバラになったトーテムン全てを囲うように立方体の檻を展開する。

 そして、縦に並んだ瞬間、マックスは檻の形を変えた。


「作戦成功だね」

「さすがマックス! では、上から順番に撃っていきますか」

「じゃあ僕はアロンの一個下を攻撃するよ」


 2人はそれぞれ魔法を構える。

 トーテムンは分解しようとした。しかし、檻に阻まれて分解出来ない。突然の出来事に困惑するトーテムン。


 その時、1番上の黄色い顔に水の矢が何本も刺さり、その下にあった青い顔に砂塵の鞭が巻き付いた。

 トーテムンの上2つの顔がボロボロと崩れ落ちる。そのままアロンは上から3段目の緑色の顔に火球を、マックスは4段目の赤い顔に水の矢を叩き込む。

 攻撃を受けた2つの顔もボロボロと崩れ去り、残り1つとなった。


「む、紫かぁ」


 アロンは悩む。


「とりあえず何でも打ってみよう!」


 マックスは各属性の魔法を撃ち出す。しかし、どれも効果が無い。

 その時、紫の顔がマックス目掛けて、口から何かを吐き出した。

 それを転がりながら避けるマックス。

 避けた先を見ると紫色の液体がボコボコと泡立って、そのまま地面に吸収された。

 その様子を見ていたアロンが言った。


「毒だ……」

「うん、毒だね。避けれて良かった」


 マックスは心底ホッとした。


「で、どうやって倒そっか?」


とアロンが話しかける。


「毒だもんね。火が効きそうなのに、今ひとつだったしなぁ」


 マックスも考える。


「じゃあさ、思い切って、毒を治療してあげるとかは?」


 アロンが名案じゃない? とマックスに笑いかける。


「やるだけやってみようか!」


 マックスは状態異常の治療魔法を紫色の顔にかけた。

 すると、紫の顔が崩れていった。


 顔を見合わせる2人。


「「やったー!」」


 2人はハイタッチを決めた。


「アロンはいつも凄いアイデアを思いつくね!」


 マックスが嬉しそうにアロンに話しかけた。


「そ、そうかな? たまたま当たってるだけだと思うけど、でも、そう言って貰えて嬉しい」


 アロンははにかんだ。そして


「結構俺たち息ピッタリだね」


とマックスに笑い掛ける。


「そうだね」


 マックスも嬉しそうに答えた。





 その後も魔物の討伐は続く。


「アロン! そっち行った!」

「OKだよ!」


 アロンの振り下ろした剣により絶命する魔物。


「マックス! 足は凍らせた!」

「ナイス、アロン!」


 足元が凍りついて動けなくなった魔物にマックスの魔法が叩き込まれる。


 マックスとアロンは、お互いの呼吸を合わせ、連携を取って魔物を討伐出来るようになっていった。




 そして、また夜になりキャンプを始めた。

 ガッツへの定期報告をする。


「そちらは順調なようだな。他の班も続々と魔物を討伐できている。この森の魔物の数も着実に減っているようだ。ただ、気掛かりなのが、まだ魔力欠乏症の原因となる魔物と遭遇していないことだ。王宮からの指示書ではそこまで強い魔物は出現しないように書いてあるが、何やら嫌な予感がする。2人とも明日はより注意して進めていってほしい」

「「わかりました!」」


 ガッツとの通信を終え、2人はしばし黙り込む。


「ねぇ、マックスはさ、魔力欠乏症を起こす魔物ってどんなのだと思う?」


 アロンが話しかけた。


「それが全然見当が付かないんだよね」


 マックスがゴロンと寝転びながら答えた。

 アロンはマックスの方を向き、さらに話し出す。


「魔力欠乏症って怖いよね。魔力欠乏症になると魔法使えなくなっちゃうんでしょ?」

「らしいね。しかも治療法もまだ見つかってないらしい。この星で魔法が使えないってキツ過ぎるよね」

「うん……。魔力欠乏症になった人たち、早く治療法が見つかると良いね」


 アロンはそのままマックスの横に寝転がった。

 横に来たアロンを見ながら、マックスは話を続けた。


「そうだね。そういえば、魔力欠乏症になった人たちの証言によれば、その魔物って、蛇みたいだった。とかヒュドラみたいだった、とか巨大な見た事もない生き物だった。翼のような耳が生えてたとか、バラバラなんだよ。アロンはどう思う?」


 マックスの問いにアロンは考え込む。


「うーん……。ほんと難しいよね。蛇とヒュドラはさ何となく近いよね? それでいてヒュドラは巨大だし、でもそこに羽生やしたらドラゴンだよね? でもドラゴンって言われないってことは、ドラゴンとは全く別の見た目って事なんだよね?」


「うん、僕もそれは思った。各パーツはドラゴンを連想させるけど、ドラゴンじゃない。どんな魔物なんだろうな。でも巨体である事は確定してるから、気を付けないとね」


「うん、そうだね」

「じゃ、明日に備えてもう寝よう」

「うん、おやすみ」


 2人はその日はそのまま休んだ。



 翌日、2人は前日と同じように魔物を倒していた。


 魔物を数匹倒した所で、腕時計がビー! ビー! と鳴り出した。


「「な、何だ!?」」


 2人は慌てて腕時計を確認する。

 

 すると、腕時計が赤く光り『救援要請!』という文字が浮かび上がっていた。


 その直後、ガッツからの通信が届く。


「各班に告ぐ、マップ赤色地点で巨大な魔物と交戦中。強力な魔物につき、近くにいるものは応援に向かえ。連合軍にも応援を要請している。力量差がある場合は、無闇に交戦せずに撤退して様子を見るように!」


 マックスとアロンはマップを確認する。


「ここからそう遠くないみたいだね」

「よし、応援に向かおう。アロンはそれで良い?」

「もちろんだよ。マックス」


 2人は応援に向かった。

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