第5話 魔力測定 バディは誰だ!?
アロンは緊張でガチガチであった。
「では、魔力を流してください」
「は、ハイ!」
声が半ば裏返りながら返事をする。
従者の方に言われる通り、魔力を鏡に流す。
すると鏡が極微妙に光った。
鏡には自分の名前、親の名前、そして祖父母の名前と、住所、魔力量、得意な魔力系統が表示されていた。
これだと、スパイが侵入しててもモロバレだなとアロンは思った。
ちなみにアロンの魔力値は510であった。
「おや? おかしいですねぇ? もう少しあっても良いのですが……」
コルトが首をひねる。
勇者召集ギリギリの値に、アロンは深く落ち込んだ。
「アロン君、その指輪、外してくれませんか?」
突然、コルトに話し掛けられた。
「あ、はい!」
慌てて返事をし、指輪を外そうとした所で思い出した。
「あの、すみません。この指輪、何故か外せないんです」
「外せない?」
「はい。赤ちゃんの頃から御守りとして母に渡されたものなのですが……」
「なるほど。ちょっと失礼」
コルトはアロンの指輪に手を近づけた。
バチッと強く電気のようなものが走った。
「ふむ……。確かに外せなさそうですね。母君とおっしゃいましたね」
コルトは鏡に映るアロンの母親の名前を確認し、動きを止めた。
「貴方のお祖父様はクーロン様なのですか?」
「あ、はい。母が小さい時に亡くなった、とそれしか知りませんが。祖父をご存知なのですか?」
アロンは尋ねた。
「ええ、まぁ昔の知り合いです。そうですか。貴方はクーロン様のお孫さんで、それで、その指輪ですか。そうですか」
コルトは1人納得したように何度も頷く。そして
「ご安心なさい。貴方ならきっと、優秀な成績を納めると思いますよ」
そう優しく言葉を掛けてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
先ほどの落ち込みが一気に軽くなった。
アロンは軽い足取りでマックスの元まで戻った。
「お疲れさま。何か色々と話してたみたいだね」
マックスに声を掛けられた。
「うん、魔力量の値がめちゃくちゃ低くってさ、落ち込んでたんだけど、でも、なんかよく分かんないけど、この指輪のせいらしいから、安心しろって言われた」
「この指輪?」
マックスが触ろうとして
あ!危ない!と声を掛けようとしたが
何事も無く指輪に触れる。
「あれ? さっきコルトさんが触ろうとした時、バチッとなったんだけど?」
不思議に思っていると
「コルトさんはどうやって触ろうとしたの?」
とマックスに聞かれた。
「えっと、指輪が外れない、って話をして、それでコルトさんが指輪を外すのを試そうとしたらバチッとなった」
アロンは思い出しながらそう答えた。
「なるほど、じゃあ、今から僕がもう一度触ろうとするね」
マックスが指輪に手を近づけた時
バチッと再び指輪が弾いた。
「え? 何で?!」
アロンが驚く。
「どうやら、指輪を外そうとする意思を持って他人が指輪に触れようとすると拒絶するらしいね。凄い指輪だよ」
マックスはアロンの指輪をマジマジと見つめた。
「えー、それでは、全員の魔力測定が終わりましたので、次は部屋割りを決めたいと思います。部屋は2人1部屋です。今後、そのペアで行動を共にするので、ペアを組みたい人同士はペアを作ってください。残った人はこちらで適当に割り当てます」
コルトの声が響く。
ペア……。どうしよう。出来ればマックスと組みたいけど、マックスは組みたい相手がいるかもしれない。でも、自分を馬鹿にする人とは組みたく無い……。
アロンはどうすることも出来ず、ただオロオロとしてしまった。
「アロン。君は誰か組みたい人や、組む人が決まっているのかい?」
突然、マックスから声を掛けられた。
「う、ううん! ……その出来ればマックスと組みたいと思っているけど、マックスは組みたい人いるよね?」
アロンは弱気な声で返事をする。
「いや、あんな人を馬鹿にするようなやつらと組みたいなんて思わないね。良かったら、僕と組まない?」
マックスも軽く人を小馬鹿にしてるけど……。
と一瞬頭を過ったが、それよりも誘われた事に気持ちが舞い上がった。
「ありがとう! マックスと組めて嬉しい!!」
アロンは犬が戯れるようにマックスに抱きつく。
「ちょっ! 男に抱きつかれても嬉しくないって」
そう言ってアロンを引き剥がしながらも、マックスも笑顔だった。
「ふむ。皆さん綺麗に別れたようですね。では、今のペアで部屋に向かってください。あ! もう部屋にネームプレートが入っておりますので、それをご確認ください。それでは、あちらの出口からどうぞ」
差し出された手の先に扉が浮かび上がった。
そこをくぐると、廊下に出て、目の前にいくつもの部屋が並ぶ。
その中から自分たちの部屋を見つけ出し、それぞれ荷物を運び込んだ。
それにしてもペアを決めた瞬間にもうネームプレートが出来上がってるとか、魔法、便利過ぎである。
部屋で荷物の片付けをしていると、コンコンと扉をノックされた。
出てみると先ほどの従者がいた。
「こちら、腕時計として常に身につけておいて下さい。中に、身分証やこの辺り一帯の地図、緊急時の呼び出し機能など、他色々と備わっております。詳しくは時計内の案内をご覧下さい。そうそう、食事は食堂でとっていただく事になります。特に時間制限は設けておりませんが、身体作りのため、出来るだけ同じようなお時間にお食事していただくことをお勧めいたします」
そう一通り説明し、従者は次の部屋へ向かった。
「マックス、聞いた? 食事は決まった時間に、だってさ」
「そりゃそうだろ。食事は生きる上での基本だぞ?」
「え? そうなの?」
いつも流されるまま食事をとっていたアロンは初耳であった。だって、アロンだから。
食後、部屋で寛いでいると、館内放送が流れた。
明日から訓練が開始されるとのことだ。
起床時間は7時半。9時に運動場に集合。だそうだ。
「し、7時半!?」
「ん? どうしたアロン?」
いきなり素っ頓狂な声をあげたアロンにマックスが声を掛ける。
「いや、7時半って言ってたよ。早過ぎだよね? ね?」
アロンは捲し立てた。
「いや、7時半って随分ゆったりか普通だと思うぞ。しかも集合時間まで1時間半も余裕があるじゃないか」
「え? それってそんなにゆったりな感じなの?」
アロンは驚いた。
それゃそうである。
アロンはお昼前に起きる子だったのだから。
「大丈夫だよ。起こしてやるから。アロン、寝起きは悪い方なの?」
「寝起き……分からない。マックスは何時に起きるつもりなの?」
「いつも通り6時前かな?」
「ええ? そんな時間に起きて何するの?!」
「何するのって、魔力の錬成だよ。やるのとやらないのとでは、全然違うよ」
マックスはこの星では珍しい、日々の研鑽を積み重ね努力を怠らないタイプであった。
翌日、アロンはマックスに起こされた。
「アロン、アロン起きて。時間だよ」
「うーん。もうちょっとだけぇ」
10分後。
「アロン、起きて10分経ったよ」
「あと5分〜」
5分後。
「アロン、ヤバイよ! 遅刻だよ!」
「え?! 遅刻?!!!」
アロンは慌てて飛び起きて時計を確認する。
7時25分であった。
「まだ起床時間前じゃないかぁ」
アロンは拗ねる。そしてもう一度寝直そうとする。
「ダメだよアロン。ちゃんと起きて身体のリズムを作っていこう」
マックスは『優しいお母さん』であった。
普段母親にガミガミ言われるアロンである。
優しい声かけには弱かった。
「分かった。頑張るよ」
しぶしぶ起きて着替えだす。
すると朝の起床の曲が鳴った。
「うぅ、まさか俺が起床時間前に起きるとは……」
「ははっ。早起きは3セイラの得って言うじゃない」
「3セイラしか得しないんじゃ、別にいらないよぉ」
「まぁまぁ、そう言わずに! 食堂に行こう!」
2人で食事を終え、支給された服を着て運動場に向かった。
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