第7話 偶然の再会

 俺は兄が来るまでの数日間、ダンジョン攻略とダンジョン配信をしたのだが……たまたま同じような敵ばかりで視聴者も1人2人……。




 今日は兄が来る日だ。多分いつも通り15時くらいに来るのだろう。

 俺が会いたがっていない事は分かりきっているはずだから、少しは気をつかって……いや、そんな訳ないな。




「はぁ……」


「元気がないな」


「あいつが来るまで、どっか出かけるか……ハークは誰にも見られないようにな」


「もちろんそうする」



 ガチガチに髪を固めて、お気に入りの服に着替える。俺はシンプルかつダボダボな服が好きで、アクセサリーをジャラジャラつける。ピアスに大きめのチェーンネックレスに、リング。ピアスは結構開けていたが、仕事のこともあって耳たぶ以外は塞がってしまった。



 時間は10時……か。まだ時間はあるな。俺は甘い物が好きだが、さすがに店内で食べる勇気はねぇ。だから電車で都内へ行って、甘い物をテイクアウトしに行くぜ。





 やっぱり甘い物と言えばマカロンだよなー。



 俺はマカロンを買い、他の甘い物を探し歩いた。

 すると見たことある顔が見えて……



 こっちに気付いたようだ。クソ……。甘い物を買った後だから恥ずかしいじゃねぇか!!



「あの……堂真さん……? 堂真さんですよね!」


「あー……違います」


「いや、絶対堂真さんです!! 覚えてますか? 長谷川 伊織です!」



 前会った時はSWATみてぇな格好で、私服はワンピースとかカワイイ系の服を着るイメージだった。


 だが今目の前にいるのは、ボーイッシュな俺と似た服装をした伊織だ。アクセサリーはピアスだけで、シンプルなストリート系ファッション。帽子を被り後ろに束ねたボブが短いしっぽみてぇで、これはこれで可愛い。



「はぁ……だよな。ここで何してるんだ?」


「暇だったからブラブラしてました。良かったら、カフェでも行きませんか?」




 待てよ……カフェ……だと?!?! それって、オシャレなカフェの事か?! 俺が1人で入れずに諦めてた……カフェかぁぁああ?!?!



 断るわけねぇじゃん!!!!



「行く!!!! あれだろ? オシャレなカフェ……だろ?!」



 着いたのは、とあるオシャレなカフェ。場所が見つけにくい所にあるからなのか……店の周りに人はいない。



「どうやってこんな隠れおしゃカフェを知ったんだ?」


「内緒ですっ」


「そうかよ。……よし、入るか」


「緊張してます?」


「ああ。1人で入る勇気がなかったから、初めて入るぜ……」


「堂真さんって可愛いですよね」


「は?! 初めて言われたぞ……いかれてんじゃねぇの」


「見た目がじゃなくて、行動がですよ! ギャップって言うか……まあいいや、入ってから話しましょ!」




 ドアを開けると、木を基調とした綺麗なカフェだ。自然を感じるとやっぱ落ち着くな。いい場所を教えてくれた。



 案内されたテーブルに腰掛け、メニュー表を渡された。向かい合って座ると、まじまじと伊織の顔を見てしまう。ほんと可愛い顔してるよな……愛くるしいっていうか、妹にしたい系? 幾つなんだろうか……多分歳下だろうが。



「そんな見ないでくださいよ〜」


「す、すまん」


「あ、堂真さん。伊織って呼んでくださいね?」


「いいのか? じゃあ……伊織は、幾つなんだ? 歳下か?」


「あ! 女の子に歳を聞くなんて……」


「いや! 歳下かどうかだけ知りたいんだよ」


「冗談ですよ! 私は21ですよ。堂真さんは?」


「俺は23だ。2つ下か……」


「へー堂真さん23なんだ。てっきり同い歳かなーって」


「幼く見えるのか?!」


「わちゃわちゃしてるから」


「なんだそれ……そうだ、そろそろ注文決めるか」




 メニュー表を開いてっと……おお!!!! パンケーキとワッフル……どっちも捨て難いから、両方楽しめるやつにしよう。俺がオシャレなカフェに居るなんて、夢みてえだ……。



 俺達は注文をして、再び話し始めた。



「伊織はずっとここに住んでるのか?」


「いいえ! 能力を貰った後すぐ、スカウトされて上京してきたんですっ」


 伊織は熊本から来たらしい。ずっと東京へ行きたかったんだとよ。来てみたら案外思ったよりそうでもねぇ……ってダメか。こんなことを言うべきではねえな。なかなか楽しんでいるみたいだし。俺はずっと東京にいるから、何も感じなくなった。初心にかえるもなにも、ここで産まれてんだよな。



 俺は方言に憧れる。熊本って確か、可愛い方言ランキングとかに入ってたよな?


 標準語なんてどこにでも転がってっし、地方はいいよなーなんて話をする。無いものねだりってやつなのかもしれない。




「結構笑われたり、ここでは通じなかったりで……不便ですよ」


「そうなのか……? 周りがやな奴だな」


「それが当たり前ですっ」


「そういうのは当たり前にしなくていいと思う」


「堂真さんって……不思議です。なんでも受け止めてくれそう。あ、でもぜっっっったい好きにならないので安心してくださいね!!」



 ブンブンと両手を振りながら、そんなことを言った。何故そんなことを言うんだ? なにか理由がありそうだな。好きになって欲しくない何かを抱えてるとか。俺の考えすぎだろうか。歳を重ねるごとに、人が話す本音を汲み取ろうとしてしまう。いつしかそれが癖になっている。裏目に出たりすることもあるが、結構良いこともある。



「そこまで言い切られると傷つくぞ……」


「ええ?! すみません……ただ、可能性がないのに好かれると私も辛いので……」


「伊織も色々あるんだな。理由は話してくれねぇんだろ?」


「今は勇気が出なくて……また話しますから! 待ってて欲しいです」



 やっぱりそうだった。伊織は悲しそうに笑う。悲しませたヤツは誰なのだろうか。こんな優しい女性に誰が……。話してくれた時は、安心させてやりたいと思った。辛い思いをしている人はほっとけない。俺を見ているようだからだ。



 注文したものが届き、俺はパンケーキを1口ほお張る。ん〜!! ふわふわ……最高すぎる!!



「うんまぁ〜!! ……あのさ、声掛けてくれてありがとな」


「全然ですよ! あ、連絡先交換しときませんか? いつでも付き合いますから」



 俺達は連絡先を交換し、その後もゆったりと過ごした。伊織はB級能力者で、あん時油断して糸を絡められて銃が使えなくなったらしい。助けてくれてありがとうって何度も言ってくれた。人助けって気持ちがいいぜ。



 兄と呼びたくもねぇアイツと会う前に癒されることが出来てよかった。少しでも気が紛れる。




 それから1時間程話してカフェを出た。



「堂真さん、なんか元気なくなってませんか?」


「実は会いたくねぇ奴に会わないといけねぇんだ。俺の血の繋がらない兄……」


「家族と仲が悪いんですね。私も一緒です。全員じゃないけど……母親と……」


「そうか。家族だからって仲が良いなんて関係ねぇよな。母親と今でも会ったりしてるか?」


「家を出てから連絡もとってないですね……」


「そうか。急に訪問して来たりはしないんだな」


「場所知らないので不可能だと思います……って急に来ることあるんですか?!」


「そうなんだよ……なんでか分かんねぇけど、教えてないはずなのに引っ越しても来やがる」


「それって……もしかしてケータイとかにGPSでアプリとか入ってるんじゃ……」


「そんなの見た事ねぇぞ」


「表示されないアプリとかもあるらしいですよ」


「はは、まじか……教えてくれてありがとな。もう行くわ」


「大丈夫ですか……? 辛かったらいつでも連絡とか、電話掛けたりしてくださいね」




 伊織は本当に良い奴だな。会ったばっかだってのに、俺みたいにお節介だ。案外似ているところがあるのかもしれないな。世の中捨てたもんじゃないのかも。少し気持ちが軽くなれたようだ。



 さて……気が重いが、家に帰るか。







 ✦︎✧︎✧✦



 伊織ちゃん再登場喜んでいただけたでしょうか……?



 方言を書くのが苦手なので、今後その要素があるかは……どうでしょうね。



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