無能なほど強くなれる？！ 拳で戦ってダンジョン配信！〜脳筋だけど明るさでなんとか乗り越えてみせる〜

第5話 俺がそんなに強いわけ……

　ゾンビを倒しきった俺は、そのまま次へ進んだ。

　ここは中が結構広いダンジョンだよなぁ……。

「ふぅ……ハークのお陰で早く終わったぜ」

「時間がかかるとこっちも退屈だからな」

　少し進むとカラカラと音がして、また大群か？！

　ゾンビの後はスケルトンかよ……しかも剣を持ってやがる……。

「ゾンビより強いぞォ〜。コイツらは俊敏だ」

　切りつけようとしてきたぞ！！ 確かに早い……！！

　と思いきや、俺はそのまま背後に回って拳をお見舞いする。

　バキバキッ！

　うわ……ボロボロに砕け散ったぞ。俺ってかなり速いのか？！

　そのままスケルトンは骨と骨の繋がりが消え、バラバラとその場に崩れ落ちる。ここまでコテンパンにできると清々しいな。鬱憤晴らしみたいになっちまってるが。見ている方も気持ちがいいに違いない。これで人気者になれたりして？！

「ずっと思ってたんだけどよ……俺、なんか速くね？ っとあぶねぇ！」

　話してんのなんかお構い無しで、攻撃してきやがった！！ そりゃあそうか。ったく舐めやがって。

　俺は余裕で避けちゃうぜぇ〜。なんか楽しくなってきた。ゲームの中に居るみてぇだ。

「それも身体強化の内だからなァ」

「やべぇ……これのお陰で倒せてるとこあるな……っおらぁ！」

　バキッ

　なんかワンパターンで面白くねぇだろうな。配信してるんだし……。

「おい！ 視聴者今何人だ？！」

「お？ 1人いるぞ」

「おっしゃぁ！！！！ おい見てる奴！ そのまま見ててくれよな！ おらぁ！！」

　バキッバキィッ

「あ、居なくなった」

「ぁぁぁぁああああ！！！！ なんだよ！！！！ クソー！！！！ ダンジョン配信って人気なんじゃねぇのかよ！！」

　俺は素早くスケルトンとスケルトンをそれぞれ片手で掴み、そのままグシャッと頭同士をぶつけて潰した。やべっ。怒りに任せてやりすぎたか。こんな野蛮な姿は見せちゃいけねぇよな。しかし配信ってこんなに大変なのかよ。皆やり始めて間もないはずだろ？

　俺が遅い訳じゃないはずだ。何が駄目なんだ。

「B級だからじゃないか？」

「まじかよ……S級じゃねえと伸びねぇのか？！」

「そうかもしれんなァ」

「クソ……いや、方法はあるはずだっ……！」

　ゾンビよりは数が少なかったため、意外とすんなり倒し終えた。俊敏だと言っても、俺より遅くて助かったぜ……。

　さあ次は……。

「ん？ アレは……おい……嘘だろ……」

　俺は驚きのあまり、その場で立ち尽くす。

「あー」

「あーって！！！！ あれは、あれは……生首じゃねぇか！！！！ 浮いてやがるぞ……ってどっかに行っちまう！ 追いかけるべきか？」

(しかもなんか発光してやがる……)

「自分で考えろ人間」

「冷めてぇな……とりあえず追いかけてみるかっ」

　追いかけると……ここは？ また同じ場所に戻った気がする……。なんなんだよ、どうなってやがる？！

「はっはっはっはっ。やはりな。貴様なら引っかかるだろうと思ったぞ。アレは人を惑わす。このままじゃあボスの所まで行くことすら出来んぞ？」

「なんだよ！ これでB級なんて……やばすぎだろ！！！！」

　結局ハークは面白がって答えを教えてくれなかったから、俺は目を瞑りながら壁伝いに歩いてみる。滑稽な姿だろうが、かなりいい方法じゃねえか？

　我ながら冴えてるぜ、俺。

「はっはっはっはっ！ 中々滑稽だなァ。面白い」

「うるせぇよ！ これくらいしか思いつかなかったんだよ！！」

　目を瞑って歩くのはかなり難しい。ハークがいたお陰で幾らかはやく歩くことが出来た。だが……足が震えるのは、死への恐怖なのか？

　拳に力が入り、心臓がドクドクと脈打ってるのがわかる……。きっと前のダンジョンより強いボスなのだろう。ここで死ぬ訳には行かねぇが……どうしても恐怖には勝てない。

「おい……今俺は何処にいる？」

「ほぉ〜面白い。ボス部屋が見える」

　恐る恐る目を開けてみると……分厚い扉があった。それは、何だか開けちゃいけねぇような……古びていて……立派だったのがわかる。

　意を決して扉を開けると────

　淀んだ空気にどす黒いオーラ……そして、そこに立つ黒い馬。

「な、なんだよアレ……」

　おぞましいオーラを放つソイツを見て、足がすくんだ。俺は漫画の主人公でもなければ、ヒーローでもない。ただの一般人だ。どこまでやれるかも分かんねぇし……。クソ……。

「ナイトメアだな。アレは精神攻撃をしてくるぞ」

「精神攻撃だと？！ ははっ、受けて立つぜ！！！！」

　言霊って言葉があるように、俺は自分を鼓舞させるために強気の発言をした。そうでもしねぇと────

「その調子で頑張るがいい！ 俺様は見ている」

　ボウッと青い火がつきナイトメアが動き出す。それと同時にどす黒い煙が俺を覆った……！

「くっ……何が起こるってんだ……」

　見る見るうちにハークが見えなくなり、煙で目が開けられなくなる。

　──目を開けると、知らねぇ更地にいた。身体が固まって動かねえ。唯一動かせるのは、首から上だけだった。

　うしろから刃と刃を擦る音がきこえる。やべぇ……どんどん近づいてくる。

　おいおい、まるでホラーじゃねえか。ホラーと虫はまじでやめてくれよ！！

　カシャン……ザッ……カシャン……ザッ……。

　擦る度に一歩ずつ近づいてくる。

　怖くて後ろを見ることができない。でもこのまま見ずにいる訳にはいかねぇよな……そう思って俺は、ゆっくりと後ろを振り向いた。

「ひっ……！！」

　ガリガリに痩せこけて窪んだ目の部分が真っ黒で、この世のものでは無いもの。

　死んだ人間なのか？　殺される。逃げないと──

　カシャン……ザッ……カシャン……ザッ……。

　ダメだ、コロサレル……！！！！

　グサ。

　血がドロドロと溢れていく。そのまま俺はその場に崩れ落ちた──────

　再び目を開けると、周りが真っ暗で何も見えない。今度はなんなんだ？

　足元でモゾモゾと何かがうごめいている。

　何だよ……待てよ、もしかして────？！？！

「おわぁぁああっ！！！！」

　虫だ！！！！　足元から這い上がってくる。暗闇に目が慣れていき、見えたのはムカデだった。

「ほんとにマジで……やめてくれええええ！！」

　泣きそうになりながら、払おうとするが後ろも前も横からも……ぁぁぁぁああああ！！！！

　遂に顔まで覆い尽くされ、埋もれていく────

「っはぁ……はぁ……はぁ……はぁ……？」

　夢……？　今度はなんだよ……って、父さん？

　死んだ父さん……なのか？

　ずっと会いたかった……俺は……ずっと！！！！

「と、父さん！！！！」

「堂真」

「俺、俺……父さんが死んだのは……俺のせいじゃないよな？」

「お前のせいで……オマエノセイダ。オマエのオマエオマエオマエオマエオマエオマエ」

「やめろよ！　交通事故だったんだろ！！　俺はその場にいなかった！！　俺は……ずっとあの……母親に責められて……俺のせいじゃ……ねぇのに……うるせぇよ……だまれだまれだまれだまれ！！！！　これは幻覚なんだろ！！　出せおらァァァァああああクソ野郎がああああああああああ！！！！」

　✦︎✧︎✧✦

　今回ホラー強めでしたね。苦手な方すみませんでした！！