18
授賞式の前日、シラー一家を乗せた馬車は、王都のミネルウァ邸に到着した。
「わぁ、王都は本邸ではないと聞いていたけれど、それでも我が家の本邸よりもずぅっと大きいのね…。」
シラー一家の邸宅と比べて、というよりも、馬車で通り過ぎてきたどの邸宅よりも大きい白亜の城を呆然と見上げていると、入口でミネルウァ夫妻と夫婦に似たすらりと背の高い青年がシラー一家を出迎えてくれた。
「オットマー、顔を合わせるのは久しいな。よく来てくれた。」
サイラスとオットマーが、アンナとトルメアが挨拶を交わす中、ルフェルニアはアルウィンと手を繋ぎながら、青年と対峙していた。
その青年の左耳の下から、見覚えのある飾りが揺れているのを見て、ルフェルニアはあっと声を上げた。
「ユリウス!?」
「ルフェ、久しぶり。王都へようこそ。」
ユリウスは以前の無表情が嘘であったかのように柔らかくなった表情でルフェへ微笑みかけた。
(お人形さんみたいに可愛いユリウスじゃない…。)
ユリウスは病気が良くなってから、ぐんぐん背丈が伸びた。
今はルフェルニアより頭1つ分以上は背丈が大きく、男性らしく均衡の取れた体は非の打ち所がない。声も以前より低く落ち着いている。
数年見ない間にユリウスはすっかり男性になっていた。
一方で、ユリウスの神秘的な瞳と髪が、以前のユリウスと同じ儚さを魅せ、言い表せない絶妙なアンバランスさがユリウスの美しさを一層引き立てていた。
“お人形さんみたいなユリウス”に似合うと思っていた髪飾りも、今のユリウスにも不思議とぴったり似合っている。
「えっと、髪飾り…、まだ使ってくれていたんだね。」
「うん、僕の宝物なんだ。毎日つけているよ。」
(ユリウスがキラキラすぎて、直視できない…。)
表情が豊かになったユリウスは、以前にも増して魅力的で、ルフェルニアは緊張のあまりアルウィンに身を寄せた。まるで知らない人に会ったみたいだ。
「アルウィンも久しぶり、もう10歳かな?大きくなったね。」
「はい、ユリウス様。ご無沙汰しております。」
「はは、アルウィンはルフェよりもずっとしっかりしてそうだ。」
アルウィンは、ルフェルニアとお揃いの黒い髪をきっちりときりそろえ、母譲りのダークグリーンの瞳を煌めかせるルフェルニアの小さなナイトだ。カッコいい騎士が登場するロマンチックな物語を、ルフェルニアが何回も読み聞かせたせいか、アルウィンは度々騎士の真似事をしてルフェルニアをときめかせている。
つり目がちで少しだけ目つきが悪いため、本人はそれを気にしているのだが、ルフェルニアにとってはそんなところも可愛い。
ユリウスがいなくなってからの数年で2人は立派なブラコン・シスコンになっていた。
今も肩がくっつくほどぴったりと寄り添っている。
ユリウスは、その距離感に何か思うところがあるように、暫し2人を見つめた後、2人を邸内へと促した。
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