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冬が過ぎ、春が来ると、ユリウスは王立学園へと去っていった。

ユリウスは、病気で勉強が遅れていたにもかかわらず、トップの成績で試験を通過したらしい。


ユリウスは王立学園の勉強と、公爵家の領地経営の勉強が忙しいらしくシラー領に訪れることはなかったが、約束のとおり、ルフェルニアにたくさんの手紙を書いた。

手紙には季節により様々な植物の種と、王都で購入した可愛らしいお菓子や小物が必ず添えられていた。


ユリウスが王立学園高等部の最終学年である3年生になったころ、ユリウスの父、サイラスから手紙が届いた。


ヴィアサル病の薬が、国から正式に認可されたのだ。

ユリウスが服用したデータがあったからか、予想よりも早く認可に至ったらしい。


それに伴い、ルフェルニアが発見した、植物の交配の規則性及び土壌への魔力供給が植物に与える効果が世間に公表されることになった。

手紙には成果公表に当たっては、ルフェルニアも連名になること、及び、ひと月後に王宮で本件に強く貢献した研究者への名誉賞授与式があるのでルフェルニアにも参加してほしいことが記されていた。


ルフェルニアはサイラスの手紙を読んで、受賞は辞退しようと考えていたが、その考えを読むようにユリウスから追って手紙が届いた。


『ルフェはきっと、自身の貢献は大したことがなかったと、受賞を辞退しようと考えていることでしょう。僕は今、王立学園の先生の紹介で、植物局の所管する薬草学研究所で少しお手伝いをさせてもらっています。この研究が花開いたのは確かにこの研究所での取り組みがあったからだと感じられるほど、研究者の皆さんはとても熱心です。ただ、そのきっかけをもたらしたのは間違いなくルフェだ。研究者の皆さんも口を揃えて君を称え、今度の受賞式で君に会えることを楽しみにしています。もちろん僕も、久しぶりに君に会えることを楽しみにしているよ。ぜひ僕に王都を案内させてほしい。』


(王都に行けば、ユリウスに会える。…動機が不純かしら。もちろん引け目は感じるけれど、薬草学研究所のみなさんともお話ししてみたいわ!)


王都行きを決めたルフェルニアは、早速父オットマーと母トルメアに相談すると、サイラスから事前に話しを聞いていたのか、アルウィンも連れて家族全員で王都にあるミネルウァ公爵家の邸宅に泊まらせてもらうことになっていた。


「お父様、もう準備が整っているなんて。私が行かないと言ったら、どうするつもりだったの?」

「サイラス様から、ユリウス様がルフェに手紙を送ったと聞いて、間違いなくルフェはユリウス様に会いに王都に行くと思ったからさ。」


(もう!ユリウスに会いに行くためだけじゃないもの!)


図星を突かれて二の句を告げられなくなったルフェルニアは心の中で悪態をつく。


ともあれ、王都行きまでひと月。王都ではユリウスといったいどんな話をしようと、ルフェルニアはそわそわしながら毎日を過ごした。

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