第2話 怪魔の制約(前編)

ってのはまァ分かりやすく言うと、あの世、常世とこよかくってとこだな」


…さっきの肉虫にくちゅうとやらと言い、この謎の女性と言い、納得せざるを得ないと言えばそれまでと言える状況だ。だが


「そんな所に私が繋がっていたって言うのか?冗談じゃねェ。そう簡単にあの世、常世なんかに繋がってたまるか。」

ってのはキッカケさえ有れば誰でも簡単に繋がるもんだ。先刻せんこくお前も体験したろえんが有るワシの手をつかむ。それはお前とワシが手を媒介ばいかいと言うことさ」

「要するに私は貴女あなた媒介ばいかいと繋がっと…」

「理解が早くて助かる」

「状況が状況だから信じざるを得ないだけだよ」

「それでもワシの言葉に耳を傾けてくれた人間はお前だけだ。他の人間は適当に流したり、ワシのことを恐れて近づきさえもしないやからばかりだ」


カジカだってこんな変な人に自分から関わりたいとは思ってない。むしろ女性の話に出て来たやからたちの判断はなかば本気になって話を聞いている自分より正しい。


かく私に憑いてたって言うオバケはもう取れたんだろ?なら貴女あなたが私に関わる理由は無いんじゃないか?」

「イヤ有るね」

「何で…?」

「その怪魔にくちゅうがお前から落ちたのはワシがお前に近付いたからだからな」

貴女あなた陰陽師おんみょうじ霊媒師れいばいしとか言う類の人なのか?」

むしろワシはそれらとは対局に有る存在、そこに転がってる肉虫にくちゅうと同じ怪魔って奴だ。ワシがより高位の怪魔だからそいつはそのにやられただけだ」

貴女あなたの方が私にとってキケンじゃないか!」

「そうとも限らないぞ、力が増すに連れて制約せいやくってのも増えていく。手を出されない限り此方こちらから手を出せんとか、力を貸すのに必要な代償が大きくなったりとかな」

「私にはあなたに危害を加えるつもりも力を貸してもらうつもりも無いんでほっといてくれ」

「イヤもうワシらはえにしが出来てしまっているからな」

貴女あなたに会うのはこれが初めてだと思うんだけど…縁とか言われても…」

「確かに会うのは初めてだ…うん…非常に言いにくいんだが、実はな…」

「実は…?」

「ワシの部屋はお前の部屋の隣でな…」

「隣…って火事の火元って言う?」

「204号室だな」

貴女アンタが事の発端ほったんかァ!」

「ス、すまん!さっきも言ったがモノには代償が必要になる。それが適応されるのは願いや手助けと言ったようの事柄だけじゃァ無い…こう言ったいんの事柄にも適応される…」

「それが何だって言うんだよ」

「お前に憑いてた肉虫にくちゅうをさっきワシが落としたろ?そこでもう所謂いわゆる契約ってのが発生したんだ」

「その契約は破ったら何だ?ペナルティでも有るのか?」


女性はしばら口籠くちごもった後にこう続けた…


「ワシは契約に縛られ続けるから、お前が生きている限り一生代償を支払う為に付き纏い続ける事になるな…」

「…!」

「ワシからすればヒトの一生なんて短いモノなんだが…お前からすれば永遠と言ってもいい期間だからな」

「他に方法は!?」

「無いな」


何てこった…


「まァコレはお前にとってそこまで悪い話じゃ無い」

「どこが…」

「第一お前は自分自身の体質について全く理解出来て無さそうだからな」

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