第1話 焼失わが家(後編)
消防と警察は存外はやくカジカの元すみか「すみれ荘」に到着した。
手遅れである事に変わりはないけど、ある事が判明した。
火元は私のトースト(?)ではなく、隣室のコンロからの出火だった。
燃えてしまった…インクもペンも描きかけの原稿も…
私が火事と気付き
こんな物の方が
「いいキッカケだ…もっと早く辞めちゃえば良かったんだ」
言葉に出すと少しスッキリした。今日は良いことなんてひとつもなくて、家は燃えて、エロ本片手にスウェット姿、それでもデスクに向かってあくせく漫画を描いている時より自分はいい顔をしてるんじゃないか?
「憑き物でも落ちた気分だ」
「そうだ、よく気付いたな。お前も見えてんのか?」
予想だにしない近距離から急に声が聞こえ、思わず振り返る。
気付けばカジカの真後ろに
そのせいで丁度その女性の胸のあたりに目線がいってしまい…
そんな事を意に留めもせず彼女は言葉を続ける。
「何だ?見えた訳じゃないのか?」
見えるとは何のことか?もしや胸のことか!?
「み、見てないです!…いや確かに見たけどわざと見たんじゃなくて見えたというか…
エロ本片手に訴えても効果は無いけど、むしろ逆効果だろうけど、カジカは精一杯弁明しようとする。
「いや、ワシが言いたいのは乳の方じゃなくてな…見えんのか」
スッと手を差し伸べられる。
「ホレ、掴め」
状況があまり掴めないが目の前の手に
女性の手に触れた瞬間カジカの背中に
「なッ!?」
手を反射的に引っ込める。キケン!脳内信号は真っ赤っかで怖気が引いても心臓のバクバクが止まらない。
「い、今のは!?」
「すぐに手を離したら意味が無いだろ」
「そんな事言ったって!私は
「ふぅん、名乗れと言われてもワシには名乗る名が無くてな」
「何が名乗る名もないだよ」
「名が無いだ」
「同じじゃ無いのか?」
「いいからまずはワシの手を掴め」
強引に手を掴まれる。背中をぞわぞわと走る
「目を
「ヒィッ!何だよコレ!?」
長年にわたる
「お前の肩についさっきまで憑いていた憑き物だ」
「イヤイヤイヤ、こんなの肩に乗ってたら嫌でも気付くって」
「手を離してみろ」
さっきはどんなに振っても離さなかったくせに…
「…!」
どうやっても隠せる様なサイズではなかった
「
「コチラ…」
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