第3話 不思議な力

「行ってきます。...まあ誰もいないんだけどね。」


独り言を言いながら、学校へ行く支度を終えた私は家を出る。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「今朝の夢...あの時の女の子がいた...。流石に偶然よね...。」


そんな考え事をしながら歩いていると、後ろから声をかけられた。


「みおっちおはよー!」


振り返るとそこには親友の赤城七菜香がいた。


「おはよう七菜香。今日も元気だね。」


「当たり前じゃん!元気が一番だよ!」


「相変わらずだね。七菜香といると悩み事とかどうでもよく感じるよ。」


「でしょでしょ~!そういうみおっちはなんだか浮かない顔だね。どしたの?」


「いや、大したことじゃないんだけどね。ちょっと気になることがあって。」


「なになに、みおっちにもついに気になる人ができたの!?」


「そういうのじゃないよ。ただの考え事。」


「ふうん。みおっち可愛いから絶対モテるのに。クラスの男子も言ってたよ。『阿多梨さん奇麗だよなあ。』って。恋愛とか興味ないの?」


「ないわけじゃないけど、今は他のことで忙しいから。」


半分は本当で半分は嘘。

私は確かに忙しいが、正直恋愛には興味がなかった。

それは私が愛を知らずに育ってきたから。

両親も兄も優しかったが、そこに家族愛があったのか、私にはわからない。


「みおっちが忙しいのって、例の大切なものを探してるから?部活なかったら探すの手伝うのに。」


「気にしなくていいよ。それに【私の大切なもの】はどこにあるかわからないし。」


「みおっちも大変なんだねぇ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんなやり取りをしながら七菜香と歩いていたその時。

後ろから車がこっちに向かってものすごいスピードで走ってきた。

話に夢中で直前まで気づかなかった私たち。

車はもうすぐそこまで近づいていた。


「みおっち危ない!」


そういって私を突き飛ばす七菜香。

そして聞こえてくる鈍い音。


ガァン!


私はすぐに立ち上がると七菜香の方に駆け寄った。


「七菜香大丈夫!?血が出てる!今救急車呼ぶからね!」


七菜香からの返事はない。

おそらくこのまま救急者を待っていたら手遅れになる。

しかし私にはどうすることもできなくて、ただただ七菜香の手を握りながら強く願った。

『七菜香が助かりますように』と強く、強く。


その時だった。


ファァン


私の手が急に光だし、その光が七菜香を包む。

七菜香から出ていた大量の血がどんどん消えていく。

まるで最初から血など出ていなかったかのように。

私が困惑していると、


「あれ?みおっち?」


七菜香が起き上がりながら喋った。


「七菜香!大丈夫?傷は!?痛いところはない!?」


すると七菜香は、


「うちは...確か車に轢かれて,,,でもおかしいなあ。どこも痛くない。」


「よかった!救急車がすぐ来るから念のため安静にしてて。」


私にも何が起きたのか全くわからなかったが、今はとにかく親友が無事だったことに安堵した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから....


あの後、すぐに警察と救急車が来て、七菜香は病院に運ばれた。

警察によると、どうやら居眠り運転だったらしい。

学校の先生に今日はお前も休めと言われ、今は家で一人、改めて今日の出来事を思い返していた。


「七菜香に一体何が起きたの?確かいきなり私の手から光が出て...」


「つかっちゃったんだね、お姉ちゃん。」


急に後ろから声がしたと思ったら、そこにはあの少女がいた。










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