第2話 夢

私は逃げていた。


それはまるで現代においてロボットと言われるものだろう。

どこに隠れても私のことを見つけては、


「****ヲハッケン。ハイジョシマス。」


と、逃げても逃げても追ってきて私を攻撃しようとしてくる。


「ハァ、ハァ、ここなら安全よね...」


一人で、誰に言うでもなく自分を納得させるために呟いていた。

しかし安心できたのも束の間、そのロボットはまたすぐに私を見つけてきた。


「****ヲハッケン。ハイジョシマス。」


私が逃げたのは廃屋の中。つまりもう逃げ場はなかった。


「それ以上こっちに来ないで!」


一人空しく叫びながら、廃屋の中にあったものをひたすら投げて抵抗するが、ロボットは確実に私に近づいていた。


「....!!」


もう駄目だと思って目を閉じ、覚悟を決めたその時だった。


「****ヲハッケン。ハイジョ...シ...」


ロボットから何度も発せられていたその声は、不思議な音が聞こえたと思ったらすぐに消えた。


「いったい何が...」


私が困惑しながら目を開けると、そこにはもうロボットはいなかった。

そして私の耳には聞き覚えのある声で、


「どうしてお姉ちゃんがここにるの?ううん、なんでこっちにいるの?」


と、あの少女の声が聞こえてきた。

その声の方を見ると、やはりあの少女が立っていた。


「さっきのは何!?ここはどこなの!?」


私は状況を理解したくてではなく、知らない場所に一人でいた不安を払拭するために声をかけた。

それに対し少女は淡々と言う。


「お姉ちゃんはまだこっちに来ちゃダメ。私がそっちに行くから。」


「こっちって何?私の質問に答えてよ!」


「....」


必死に問いかけるが、少女は何も言わず、まるで最初からいなかったかのように姿を消した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「っ!?」


そして私は目が覚めた。

そこはいつもの家で、部屋の中には日が差し込んでいた。


「なんだ、夢か。」


私は夢だったことに安堵した。

そして時計を確認するといつも起きるのと同じ時間。


「顔洗いに行こう。」


洗面所に向かいながら、誰もいない家の中で一人呟いた。





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