第3話

朝起きていつも通りメイシーが部屋に来てくれた。

お互い目が真っ赤で笑い合った。


そこから数日いつも通り部屋で全てを済ました。

わたしは毎日ここから逃げ出すための方法を考えた。

けれど現実味がなく、家出しても結局行くあてもないし

すぐに見つかってシャンドラに捕まるのが目に見えている。



この先どうすればいいのか分からず悩み続けた。


週に2度の家庭教師のラベル先生がいらっしゃっる日。

先生はいつも優しく効率よく勉強を教えてくれる。

解けたらすごく褒めてくれて隠れた怪我をして顔色がよくない時は親身に思ってくれるとてもいい先生だ。

だけどここに来てからすぐに家庭教師としてずっと通ってくれている先生だしシャンドラとどんな仲なのかも分からずに信用はしきれていない。

シャンドラに外の顔と裏の顔があるのと同じで先生も私には外の顔をしているだけでシャンドラのような顔も持っている可能性もあるし、私の事全てシャンドラに報告する可能性もある。


だけど今日の授業ですこし原価率の話題がでたため

疑われないくらいの質問してみた。


「ラベル先生はデルを稼ごうと思ったらまず何を考えますか?もしも新しい地で事業を起こそうと考えた時とか…」

この質問程度ならもう結婚の噂は流れてるでしょうし結婚してからのことを考えているくらいにしか思われないから大丈夫なはず。


先生は少し考えているようで当たり障りのない話題なはずなのにこの間が私には緊張でしかない。


「…これは誰がどんな事業を起こすかによってやり方は変わってくるかもしれませんが私なら、まずはその地の流行や人の流れ、好みを調べますかね。そこからその場所で何をするかを考えます。結局はその場所やそこに住んでる人たちの好みに沿った事業でないと失敗しますから。もちろん全土に広まる程の大成功の事業もありますがその土地によって埋もれてしまった事業もありますからね」


「確かに…ジェノシーではフルーツやお砂糖の入った紅茶が主流だったけれどここではミルクの入った紅茶だったし、ミルク入の紅茶にお母様も初めはびっくりして恐る恐る飲んでいたもの。先生ありがとうございます」


「いえいえ。この質問には正解というものはなく、その事業のために出会った人間関係や運などもありますからね。僕がナーシャお嬢さまとレティシャお嬢さまの専属の家庭教師になったこともやはり運や出会いがあったからこそですから」


ラベル先生はニコッと微笑み帰る用意をしながら小声で

「この流れでこのお噂をお伝えするのはどうかと思いましたが…ナーシャお嬢様の婚約相手が決まったと。お相手のお方をお聞きしてこう言っては失礼ですがカルノス家のご令嬢ともあればお身体が弱くてももっといい婚約者様が現れるだろうにと。」


「……」私は反応に困り顔で微笑んだ


「…このお噂が元でもうひとつ。ナーシャお嬢様とシャンドラ様の不仲説もお噂になっています。

週に2度とはいえ私が見てる限りではシャンドラ様はいつもナーシャ様が体調を崩された時は相当ご心配なさっていましたし

お嬢さまの今まで何事にも真面目なところも純粋な笑顔も見てきました。

カルノス家のご事情はわかりませんが…お嬢様も婚約発表前に社交界に出ないといけないことが増えるかと思います。どうかこんなお噂に負けないでください」



「先生…ありがとうございます。」




そんな噂まで流れていたなんて。

シャンドラはこの噂に気付いているのよね。

だから最近は何も無い?

いや、噂を知っていても立場的に文句を言われるような立場でもないから気にしないだろう。

もはやシャンドラはお母さまにもレティシャにも優しいから羨ましい家族だと言われてるようだって前にメイシーが怒りながら言ってたのよね。

ってことは先生の言いようといいどちらかと言えば引きこもりの私の方が問題児扱いされてる感じかな。


今まで外に出れば何かにつけて暴力を振るわれて部屋の外に出られなかったし

必然的にこっそり本を取りに行く以外は必然的にあまり自分から外に出ることはなかった。


子供の頃はお父さまとお母さまと一緒に色々連れて行ってもらったしお友達が出来たら挨拶したりたくさん交流はあったけれど…それ以来人付き合いなんてしていない。



そんな噂が流れてるなら。

問題児だと思われないくらいに社交界マナーを学んでおいた方がいいわね。

ここから逃げ出す方法はまだ見つかってないけれど逃げ出すとしてもそんな噂が流れたまま逃げ出したらお母さまの立場がなくなっちゃう。

純粋なお母さまを悲しませたくないし私はシャンドラのことは大っ嫌いだけどシャンドラに騙されているだけのお母さまは何も悪くないもの。

私のせいでお母さまが悪く言われるのはいやだ。


そう思い書籍部屋から社交界についての小説やマナーについての本を数冊選びに行くとテーブルに1冊の絵本が置いてあった。


わあ。懐かしい…。私が小さい頃ずっと読んでた妖精さんの絵本だ!

今はレティシャが読んでるのかな?

ふふふ。ここに来る時この絵本は馬車に乗せないで私が持っていく!ってお母さまにワガママ言ったことを思い出した。

あの時は馬車で読むと酔っちゃうわよとお母さまを困らせちゃったのよね。

それくらい大好きだった絵本をレティシャも読んでるのね

と嬉しい気持ちになりながらそっと置いて部屋に戻り猛勉強した。


___________


もうこんな時間?

読み終わったものを片付けないと。

本を片付けながら他に良い本が無いかなと

眺めてると1冊「私は公爵夫人になんてなりたくない」なんてノベル小説を見つけ手に取った。



ガチャッ


「……」


え、シャンドラが来た!?

こんな本持ってたらやばいじゃない!?




咄嗟に 隠れようとすると



急に暖かい風のようなものに引っ張られテーブルの視覚に座り込み気が遠くなった。



ポチャン

_______________



「おーいおーいおーい!!」


「寝てるのかな?死んじゃったのかな?」


「引っ張ったくらいで死んでるわけないでしょ!?」


「だって人間を引っ張ったのなんて何千年ぶりじゃん。ウィンもしかして失敗したんじゃない?」


「なかなか起きれなかったら戻れなくなってずーっと僕たちと遊んでくれるかもしれないよ♪」



えぇでもさあっちの世界に行きたいなぁ

僕も向こうで色んなもの食べてみたいな

僕は別にお腹空かないんだからそう思わないけどほかの世界も旅してみたい。

でもそれ契約者が旅したいと思ってないと無理じゃん



「黙って起きるの待ちなさいよ。みんなは向こうに行ってなさい!」


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