第47話:完全勝利

 最悪の場合に備えて、準備できる事は全部しました。

 攻撃を仕掛ける場所も、逃げる経路も、罠を仕掛ける場所も完璧です。

 敵に策士や勇将猛将が綺羅星の如くいても大丈夫なようにしました。


「けっ、情けなさ過ぎる、最下級の魔獣だってもう少し抵抗するぜ!」


「あまりにも呆気なさ過ぎますね」


 ソフィアとアーサーの気持ちは良く分かります。

 私も敵が弱すぎると思いましたが、もしかしたらとも考えてもいました。


 私たちは、父上やお爺様に聞いていたのより、とんでもなく速いレベルアップを重ねていました。


 特に完全殺の方法を発見してからは、狂ったように狩りまくりました。

 利益に多さに我を忘れていたのもありますが、毎日何度もレベルアップする快感に酔っていました。


 過去にこれほどレベルアップした者はいないのではないか?

 そういう考えが少しあったのですが、その通りでした。

 完全殺を成し遂げると普通に倒すよりも多くの経験値が得られるのです。


「ピアソン王国軍1万兵、裏切者の騎士領軍2000兵。

 ひとまず全員捕虜にして、王都から護送する者を呼んで来ないといけません」


「利益になるから、もう殺そうとは言わないけど、めんどうね」


「面倒が嫌ならソフィアが王城に報告して来て下さい。

 その後はいつも通り狩りをしていていいですよ。

 こいつらの後始末は私とアーサーでやっておきます」


「馬鹿言わないでよ、面倒でも狩りの後始末はちゃんとするわよ。

 イライラするから文句を言っているだけ、気にしないで」


「ですが、王城へ伝令に行って欲しいのは本当です。

 むさくるしい男たちの身包み剥いで裸にするのに、女性の手は借りられません。

 我が騎士団と冒険者の男手を送ってください」


「わかったわ、そんな連中の身体なんて触りたくないから、言葉通り他の役目をさせてもらうわね」


 ソフィアの伝言を聞いた国王は、直ぐに騎士と冒険者と商人を送ってくれました。

 彼らが来るまでに、1万2000兵を裸にするのは無理でした。


 丸裸にした敵は重ね掛けした魔術を解いて、残った敵を裸にするのを手伝わせましたが、それでも間に合わず、結局12時間もかかってしまいました。


 敵から回収した武器と防具、衣服や兵糧は商人の馬車や荷車で運びました。

 丸裸にして敵は裸足で王都まで歩かせました。


 文句を言う敵や裏切者の領地持ち騎士もいましたが、無視しました。

 あまりしつこい奴には、アーサーが罰を与えてくれました。

 そして王城に連れて行ったのですが……


「よくやってくれた、もしかしたらと期待していなかった訳ではないが、本当に1日で勝ってくれるとは思ってもいなかった。

 ただ、できれば捕虜はもっと少なくして欲しかった。

 捕虜はハリーの財産だから、捕らえるなとは言えないが、管理が大変だぞ」


「管理は陛下にお任せしますので、預かった日数分だけお金が手に入りますよ」


「裏切った領地持ち騎士一族は処刑するし、兵士になっていた領民は奴隷にするから良いが、敵兵1万を収容管理する場所も兵士もいないのだ。

 どうしても賠償金や身代金が欲しいのなら、ハリーが管理しろ」


「場所さえ貸しくださるなら、睡眠と麻痺と硬直の魔術を使って管理します」


「ハリーは簡単に言うが、3人がダンジョンに潜っている間に、魔術を解除できる者が王城に侵入してきたら、とんでもない事になる、王城はもちろん王都も貸せぬ」


「いえ、貸して欲しいのは王城内の部屋でも王都の家でもありません。 

 ダンジョンに捕虜を幽閉する許可を下さい」


「ダンジョンだと、ダンジョンに捕虜を幽閉するのか?!」


「ダンジョン内は温度が一定ですから、丸裸でも死にません。

 階段の前後に境界線が有りますから、あの程度の連中なら、1番強い奴でも、鉄剣の落ちる階層よりも深くに放り込めば、絶対に上がって来られません」


「そうかもしれないが、食料や水はどうするのだ?」


「毎日の狩りでダンジョンに潜る騎士や冒険者、荷運びが潜る時は背負子が空です。

 いくらでも水と食糧を持って下りられます。

 役目日の騎士にやらせれば、陛下の御小遣いになりますよ」


「くっくくく、ハリーも面倒な人質管理から解放されると言う訳か?」


「はい、私たちが狩りに専念する方が、個人的にも王国的にも利益があります」


「確かにその通りだ、分かった、ダンジョンに捕虜を入れる許可と、前将軍として捕虜の管理を配下にさせる事を許す。

 ハリーたちがもらう身代金と、私が受け取れる身代金の詳細を出しておいてくれ。

 それを基にピアソン王国と交渉しよう」


 主力軍1万を全員捕虜にされたピアソン王国は、軍事的に大きく力を失ったばかりか、これまでの名声も失いました。


 身代金を払って人質を取り返さないと、近隣の国から攻め込まれます。

 経済的に苦しくても、身代金を払うしかないのです。


 ところが、愚かな事に、最初は高圧的に交渉しようとしました。

 こちらに弱味など全く無いので、国王は強気の交渉をされたそうです。


 半年ほど交渉している間に、ピアソン王国は隣国に侵攻されました。

 それから慌ててこちらの言い成りの身代金を払いました。


 侵攻してきた敵を撃退するための資金にも困る金額を払いました。

 占領された領地は取り返せないでしょう。


 我が国を恐れた小国群からは毎日のように使者が訪れ、国王のご機嫌を取るようになりました。


 私は、やりたくもない大将軍にさせられてしまいました。

 嫌がるソフィアとアーサーを道ずれにして、副大将軍にしてやりました。


 正直、金もレベルアップも飽きました、1日でも早く魔境で狩りがしたいです!

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少年騎士 克全 @dokatu

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