第30話:大儲け
事前に用意できる事は全てして、隠れる魔術が全て解けるのを待ちました。
私たちが思っていたよりも1時間30分も長く待つ事になってしまいました。
それだけレベルアップしているという事なので、待つ時間は長かったですが、腹立たしいだけという訳でもありません。
隠れる魔術が全て解けて、3人で覚悟を決めて境界線を超えて狩りを始めました。
71階で初めて現れたのは、ジェネラルゴブリン21頭でした。
即座に3人で戦う事に決めて、二刀流を振るって瞬殺しました。
次に現れたのは、ファイタースケルトン21頭でした。
これも3人で二刀流を振るって瞬殺しました。
3度目に現れたのが、ジェネラルレイス21頭でした。
腹立たしい事にレイスは武器を持っていません。
これも3人で二刀流を振るって瞬殺しました。
3人が持つ6振りの鉄剣には、刀身に神聖術の呪文を刻み、中級の神聖術を付与していますので、急所さえ貫ければ瞬殺できるのです。
4度目に現れたのが、ファイターレイス21頭でした。
空振りが続くのに腹を立てたソフィアがブツブツ言いながら戦っていました。
5度目に現れたのが、待ちに待ったジェネラルスケルトン21頭でした。
順番を決めていたので、私とアーサーは境界線の外に飛び出しました。
待ち待っていたソフィアは、神聖術で21個の聖剣を作り出しました。
私たちのレベルが格段に上がっている証拠です。
領地を出た時には、同時に21個の神聖術は展開できませんでした。
ですが展開だけ出来れば何とかなるほど甘くはありません。
同時に放つ程度でも駄目なのです。
獲物の急所を全く同時に貫かなければ完全殺にはならないのです。
「あ~クソ、タイミングが合わなかった!」
ソフィアはまだ21個の神聖術を完全には操れないでいます。
なので、ジェネラルスケルトンが持っていた鈦剣を手に入れる事はできませんでしたが、運の良い事に大鈦貨は落としてくれました。
71階でジェネラルスケルトンが落としてくれる大鈦貨は1枚です。
ソフィア1人で狩ったので21枚を総取りにできます。
これを4回繰り返せたら、完全殺ができなくても鈦剣を造れます。
6度目に現れたのはジェネラルゴブリン21頭でした。
7度目に現れたのはファイタースケルトン21頭でした。
8度目に現れたのはジェネラルレイス21頭でした。
9度目に現れたのはファイターレイス21頭でした。
10度目に現れたのはジェネラルゴブリン21頭でした。
11度目に現れたのはファイタースケルトン21頭でした。
12度目に現れたのはジェネラルゴブリン21頭でした。
13度目に現れたのはファイターレイス21頭でした。
14度目に現れたのはジェネラルゴブリン21頭でした。
15度目に現れたのはファイタースケルトン21頭でした。
16度目にようやくノウビラティゴブリンが現れてくれました。
属性的にゴブリンを完全殺できるのは私だけです!
ソフィアとアーサーが境界線から飛び出してくれています。
その時にはもうソイルランスを21個展開させています。
慌てないように、心落ち着けてタイミングを計ります。
襲いかかろうとしているノウビラティゴブリンの動きを先読みするのです。
ノウビラティゴブリンがどう動くかを予測して、その未来にある急所を正確に、それも21体を完全に同時に貫くのです。
いっけぇ~
言葉には出さず、心の中で叫びます。
最良のタイミングだと思う時に、心を落ち着かせて魔術を放つのです。
自分では完全殺ができたとは思っていても、実際に鈦剣を落としてくれるまでは、心臓が激しく拍動を繰り返します。
ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ……
「やったぁ~」
「流石です、ハリー様」
ソフィアとアーサーが歓声と言葉をかけてくれる中、できるだけ早く落ちた鈦剣を回収します。
急いで回収しないと、倒したノウビラティゴブリンがダンジョンに吸収される際に、一緒に鈦剣が吸収されてしまうかもしれないからです。
冒険者が持ち帰らない石材やレンガは、回収せずに放っておくと、倒したモンスターが吸収されるのと同時に、消えてなくなります。
以前価値の低い水晶や小銭貨で試した冒険者がいたそうですが、石材やレンガと同じように消えて無くなってしまったそうです。
小鉄貨や大銭貨で試す物好きな冒険者もいたそうですが、その時も同じように消えて無くなってしまったそうです。
私は馬鹿ではないので、同じ事が鈦剣でも起こるのか、確かめたりしません。
消えて無くなってしまわないように、息を止めて急いで回収しました。
私は21振りもの鈦剣を手に入れたのです!
私たちはひたすら境界線を出入りしてモンスターを出現させました。
ノウビラティゴブリンは私が1人で倒しました。
ジェネラルスケルトンは、ソフィアとアーサーが交互に1人で倒しました。
ソフィアとアーサーは、なかなか1人では完全殺ができないでいました。
私が完璧にノウビラティゴブリンを完全殺できるので、大きな差が生まれてしまいました。
私が持ちきれない84振りもの鈦剣を手に入れたのに比べて、ソフィアとアーサーは42枚の大鈦貨を手に入れたに過ぎませんでした。
大鈦貨42枚だって、普通の冒険者に比べたら信じられないほどの成果です。
10人家族の平民が1年間悠々と暮らせる金額です。
ですが、84振りの鈦剣とは比べ物になりません。
単なる同情や施しは、人間が1番大切にしなければいけない、誇りを傷つけてしまいます。
肩を並べ背中を預けて戦う仲間なら、戦友の誇りを何よりも1番大切にしなければいけません。
私から声をかける訳には行かないので、黙って狩りを続けました。
私が手に入れた鈦剣が126振りになった時、ソフィアが叫びました。
「あ~、も~、負けよ、負け、ハリーには敵わないわ」
「僕は最初からそう思っていましたよ」
「アーサーはそれで良いけれど、村1番の猟師を目指す私は、そう簡単に負けを認める訳にはいかないの!」
「2人が認めてくれたのはうれしいけれど、どうするの?」
「いまさら鉄長剣を手に入れて運んでも空しいだけだし、ハリーが手に入れた鈦剣を残しておくのはもったいなさ過ぎるし、運び賃をくれたら運んであげるわよ」
「私も、昨日の狩りで手に入れられた金額を頂けるのなら、よろこんでハリー様の鈦剣を運ばせていただきます」
3人の友情が壊れる事無く、互いの実力差を見つめる事ができました。
それに、これは今の実力差に過ぎません。
互いに切磋琢磨すれば、この実力差も直ぐに変わります。
私との実力差を認めたのが良かったのか、それとも、完全殺に拘らなくなって緊張がなくなったのか、ソフィアとアーサーが完全殺に成功しました。
2人ともジェネラルスケルトンを完全殺して、21振りの鈦剣を手に入れました。
この時には、私は168振りの鈦剣を手に入れていました。
それに加えて3人とも100枚以上の大鈦貨を手に入れていました。
「ハリー、さっきの話は無しにしてあげる。
ここまで待ってくれたお礼に、タダで運んであげるわ」
「僕もお礼無しで運ばせていただきます」
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