第17話:大発見
今日も29階まで一気に潜りました。
途中で合図してくれるベテラン冒険者がいるのには少々驚きました。
マナーを守っているからなのか、思っていた以上に早く受け入れてもらえました。
29階では、できるだけ他の冒険者と出会わない狩場を選びました。
私たちが発見した効率的な狩り方を知られたくなかったからです。
ですが、そんな考えは通用しませんでした。
ベテラン冒険者の目は誤魔化せなかったようです。
6組のパーティーが、私たちの側で狩りをしようとするのです。
「流石に抜け目ないわね」
「そうですね、僕たちの狩り方を確かめる気ですね、どうされますか?」
「知られても直ぐに真似ができるとは思えないですが、ずっとつきまとわれるのは嫌ですから、予定を変更して潜れるだけ潜りますよ」
「やったね、これで鈦剣に近づける」
「仕方がない事だとは思いますが、安全最優先でお願いします」
ベテラン冒険者たちも、あまりに露骨に近づかないです。
私たちに対するルール違反やマナー違反にならないようにしています。
この点は私が騎士家の嫡男である事が効いているのでしょう。
かなり離れて後をついてくる5組のパーティーを引き連れて30階に潜りました。
マナー違反にならない範囲で、他の冒険者が狩りをしている近くを通りました。
これで5組のパーティーが私たちに付き纏っている事が広まります。
正義感の強い冒険者が間に入ってくれればいいのですが……
30階では10回狩りをして31階に下りました。
31階でも、マナー違反にならない範囲で、他の冒険者が狩りをしている近くを通りました。
10回狩りをするのも同じで、安全を確認してから次の32階に下りました。
32階でも、マナー違反にならない範囲で、他の冒険者が狩りをしている近くを通りました。
10回狩りをするのも同じで、安全を確認してから次の33階に下りました。
40階に下りた時には誰もついて来なくなりました。
40階まで潜る実力がないのか、目撃者が多過ぎて、他の冒険者にマナー違反を指摘されるのを恐れたのか、どちらかでしょう。
「根性ないなぁ、これくらいで諦めるなら最初からやらなきゃいいのに」
「そうですね、あまりにも情けなさ過ぎますね」
「ここなら誰にも見られないので、今日は40階で狩りをします。
また側に寄って来るパーティーが現れたら、41階に移動します」
「了解」
「分かりました」
40階は29階とはがらりと変わっています。
どの階でも10回確かめてから下りていますので、モンスターを瞬殺できるのは変わりませんが、多少は時間がかかるようになっています。
その理由は、1度に12頭のモンスターが現われてしまうからです。
急所を狙って1撃で倒したとしても、3人で4回瞬殺させないといけません。
それもはるかに強くなったモンスターを相手にです。
もうゴブリンは出なくなっています。
ホブゴブリンが12頭の群れで出てくるのです。
しかも棍棒ではなく鉄の剣を持ってです。
「どうせ落として行くのなら、硬貨ではなく鉄の剣を落としてくれれば良いのに!」
「そうですね、1kgの鉄剣を落として行ってくれれば大儲けですね」
2人の言う通りです。
倒して直ぐに武器ごと消えてしまうので、惜しいと思ってしまいます。
何か条件を整えたら剣を落とすかもしれません。
そもそも硬貨や水晶を落とすこと自体が不思議なのです。
その不思議に鉄剣が加わる可能性が絶対に無いとは言えません。
「まだホブゴブリンで試していないのは土魔術でしたか?」
「そうね、神聖術と他の属性は試したわね」
「ですがハリー様、土属性が使えるのはハリー様だけですよ?」
「2人は手出ししないでください」
「楽させてもらうわ」
「お気をつけて」
本当は6頭しか出ない29階で今日確かめる心算だったのに、付き纏うベテラン冒険者パーティーのせいで面倒な事になりました。
まあ、複数の土魔術を事前に待機させておけばいいだけなので、魔力量的には何の問題もないのですが、完全に同調させるには集中力が必要です。
発動を同時にするのではなく、モンスターの急所を1撃で破壊するのを、同時にしなければいけないのですから。
「12体の敵の急所を全く同時に射貫く土の矢、ソイルアロー」
どうせ1人でホブゴブリンを倒さなければいけないのなら、6頭を全く同時に倒す実験をした方が良いと思ったのです。
3人でやると、どうしても一瞬のずれがあるから、良い機会だと思ったのです。
「あっ!」
「ハリー様!」
声が出るほど驚いたのは2人だけではりません、私も本当に驚きました。
12頭のホブゴブリンがそれぞれ5枚の大鉄貨を落としただけなら、私たちもこれほど驚きません。
12頭のホブゴブリンが消えた後に、12振りの鉄剣が残っていたから、これほど驚いたのです。
「やったね、ぼろ儲けじゃん!」
「はしたない事を言わないでください。
この宝物は1人で戦われたハリー様の物です」
「えええええ、パーティーの物じゃないの?」
「宿代を払わなと言った私たちには、そんな資格はありません」
「でもさぁ~」
「この事をソフィアのお父さんが聞かれたらどう思われますか?!」
「あ、うん、ごめん、悪かったわ」
「2人が納得してくれるのなら、私の物にするよ。
ただ、このやり方で必ず鉄剣が手に入るのなら、とんでもないお金持ちになれる。
12kgも持って狩りはできないから組合に戻るけれど、途中の階で戦う時は、2人でアンデットを倒してみて」
「何でアンデット?」
「あ、そうか、1人で完全同時に、弱点の属性でモンスターを倒した時に、何を落とすのか確認するのですね!」
「そうだよ、この前提が合っているのなら、2人も私と同じように鉄剣を手に入れられるかもしれないよ」
「やる、やる、やる、私も同じようにやる」
「僕も試したいですが、絶対に死にたくありません。
少しでも危ないと思われたら、直ぐに手助けをお願いします」
「分かっているよ、アーサーのお母さんが哀しまないように助けるよ」
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