28.提案と出立
それから割と静かに時間を過ごすと、やっと報酬の計算ができたと伝えられた。
俺の報酬は金貨7枚。俺にはまだ軍で褒賞としてもらった金が使いきれないほどあるから要らないんだが。
俺が貰っても無駄になるのなら、せめてここのギルドで使ってもらおうと思った。
ギルドで地図を確認する時に、クエスト掲示板も目にしたことはある。
低ランクの掲示板に貼られた依頼の報酬は少ない。その少ない報酬で食事をして宿を確保し、更に武器や防具を揃えるとなると大変だ。
金がなくてまともな武器や防具が買えない者には、武器や防具の貸し出しをすればいいんじゃないか?
「ギルマス、相談がある。部屋で話せるか?」
「別にいいぞ。」
俺はギルマスの部屋に行くと、今回貰った報酬の金貨7枚を机に置いた。
「この金で、ここのギルドでちゃんとした武器と防具を買ってもらいたい。
そして、その買った武器や防具を、低ランクでまともな武器が買えない者に貸し出してほしい。」
「なぜだ?報酬はリオが使えばいいじゃないか。」
「俺に金は必要ない。
ギルマスは俺がオークから冒険者を助けた話を知っているのだろう?
彼らはまだ駆け出しで薬草採集をしていた。森の浅い場所でな。
それなのにオークと出会した。怪我をした彼の防具がもっとまともな防具なら、あれほどの傷にはならなかった。もっとしっかりした武器を持っていたら、倒すことはできずとも、逃げる隙くらいは作れたはずだ。
足りなければ追加で出そう。」
「いや、金貨7枚でも多すぎるほどだ。
そうか。リオ、なんというか、俺が憧れたリオだな。分かった。俺がリオの意志をしっかり形としてこのギルドに残そう。
もう行くのか?」
「あぁ。俺には先を急ぐ理由がある。」
「そうか。俺はリオに会えてよかった。リオなら心配ないと思うが、気をつけていけよ。」
俺はそのままギルドを後にし、そして街から出て森へ入ると、南へ向かって走った。
その後、更に真っ直ぐ南へ進み、村が見つかれば様子を少し見て、寄ったりもした。
「あなた様はデリオー殿ではございませんか?」
「・・・。」
ワイバーン討伐をしたあの街を出てからというもの、名乗る前に俺がデリオーだと気づかれることが増えた。デリオーという名が広まりすぎているようだ。
しかし、助けを求めて縋り付いてくる痩せこけた者たちを放っておくことはできなかった。この者たちは何も悪いことはしていないのだ。俺は苦しんで当然だが、この者たちが苦しまなければならない理由はない。
たまに街に寄って、野菜の種を買って渡したり、井戸を一緒に掘ったりもした。
水路の整備をしたこともあった。
俺が村に来たことが分かると、他の村の者が押しかけて自分たちの村にも来てほしいと懇願されることもあった。
俺に全ての村を救うことなどできないと分かっているが、放置することもできなかった。
そんな寄り道をしながら進んでいたら、隣のフォンド王国へ入るまでに随分とかかってしまった。
フォンド王国は鬱蒼と茂る森が広がっており、南へ向かうのに村にはほとんど当たらなかった。
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