リトルマーメイドと松葉ボタン

梅雨の間雨続きにうんざりしたリトルマーメードだが、梅雨明けしても別の意味でうんざりしていた。

「は~!地面が無い。これじゃ大きくなれないし、花も咲かせられないどうしよう」

「リトルちゃん、どうしたのため息ばっかりついて」海峡が聞いた。

「私は、地面に茎をのばして、根付いて広がるの、そうしないと花が咲かないのよ。植木鉢のままじゃどうしようもない」

「そうなんだ、それは困ったわね」海峡はそう答えるしかなかった。


ある日、主が庭に出てくるとベランダ下の前にある花壇を整備し始めた。草を取り土を掘って草の根を取り除く。1時間ほどするとかなりの広さが整地された。

「あ!私植えてくれないかな」とリトルは思ったがその日はそれで終わった。

だが翌日、主と娘が出てきて、整地した中央を掘り始めた。

そしてゆっくりとリトルの鉢を取り上げ、鉢から抜き取った。根の土を崩さないように掘った穴にそっと入れ、土を掛けて植え付けた。そして絡まった茎をほどいた。


「嬉しい!!地植えしてくれたのね。主様ありがとう。これで成長できる」リトルは喜んだ。

「リトルちゃん、声は聞こえる?」ユーミーが話しかける。

「大丈夫、聞こえるわ。私は動けなくなったけど、すぐそっちの方にも伸びるわ」

「うん、わかった」ユーミーはそう答えた。


松葉ボタンは急速に成長を始めた。

「あぁ、やっとこれで花を咲かせる準備が出来る。あれ、この人誰なんだろう?」松葉ボタンが首をかしげたのはなでしこのこと。

なでしこは夏の暑さの為花が咲くことも無く眠ったようになっていた。

「おや、やっと喋れるようになったのかい」上の方から声がする。

まつばぼたんは上を見上げ「初めまして、私松葉ボタンと言います。あなたはだあれ?」と聞いた。

「私はユリ。この庭に仲間がいっぱいいるわ。貴方が『誰?』と言っていたのはなでしこ。貴方が成長しないのを心配していたのよ。春から何回も花を咲かせていたんだけど、今は眠ってしまったみたいね」

「そうなんだ、雨が多くてなかなか大きくなれなかったから。暑くなったから今から一杯花を咲かせるわ!」

「そうかい、私が咲くのはもう少し先だね」とユリは答えた。

実際急成長した松葉ボタンは、色とりどりの花を毎日咲かせ主たちを楽しませることとなる。


松葉ボタンも、リトルマーメードも同じ多肉性の葉を持つ種類。乾燥した暑い地方が原産で、その地では多年草の分類される。しかし日本では冬に耐えられないという事で一年草扱い。葉に水を溜められ、茎を折って地面に刺すと根を出して増えるとゆう、多肉植物に似た性質を持つ。特にリトルマーメードは力が強く繁殖力が旺盛の為グランドカバーに使われるほど。

両方とも、日が差すと花が咲き日が陰るとしぼむ。花の咲いている時間は短い。

だが毎日入れ替わりに咲かせる花は奇麗でとても愛らしいもの。


暫くするとリトルマーメードは整地されて場所いっぱいに広がった。



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