梅雨の晴れ間、梅雨明け

梅雨といってもいつも雨が降っているわけではない。たまにだが日が射す時もある。鉢植えたちが置かれている場所は昼からは日が陰ってしまう。

それで主は昼から日が射すとすべての鉢を日の当たるところに移動させて日に当てた。

「わーい!みんな元気だった!」椿たち。

「元気よ」紫陽花たち。

「早く強い日差しが欲しい」リトルマーメード。

「アナベルさん元気だった?」なでしこ。

「元気よ、なでしこさんは?」アナベル。

と口々に近況報告をして喋り合う。日が射さなくなると元に戻されるのだが、こうして集まる時間は花たちの楽しみになっていた。


そんなある日、主が椿たちの鉢の所にやって来た。そして根元に生えたベコニアを取りのぞいて庭に植え、穴が開いたところには土を入れ直した。

「わ~い!すっきりした!」としゅん。

「ずいぶん大きくなっていたものね、煩わしかったけどこれで安心」と羽衣。

「でももう一つ残ってるよ?これは大きくならないからいいのかな?」とさつま。

「そうじゃないかな。取ってくれたのは、なんだか同じ種類の所に植えられたみたいね」と羽衣。

すっきりした椿たちはお喋りに花を咲かせた。もう一つと言っていたのはクローバーあまり影響がなさそうなので残された。


さて、取り除かれたベコニアたちは、庭に前から自生している仲間の近くに植えられた。

「ね、鉢から無理やり抜かれたんだけど」

「でも、植え直してくれたじゃない」

「あら、あなたたちどこから来たの?」

「あの棚の上の鉢植えから、せっかく花も咲きそうになっていたのに」

「大丈夫よ、ここは根が付きやすいからここで成長すればいいわ、仲間もいっぱいいるしね」

「そうね、土もいい具合に湿っているし、日も射すしいいかもね」

そんなことを言い合っていた。

実際、鉢から植え替えられたベコニアは一つも枯れる事無く成長し花を咲かせるようになる。


そして待望の梅雨明け。毎日暑い日差しが降り注ぎ、気温も高くなった。椿たちは暑さに弱いためベランダの奥に移動した。陽射しに強い植物たちはたっぷりと日を浴び元気を取り戻した。


コムラサキは小さい花を咲かせ始めた。大きく伸びた何本の枝に小さな蕾がたくさんついて、幹に近い方から順番に咲き始める。それはそれは小さな花で、でもおしべとめしべもちゃんとある。花が終わると実が生った。主たちはその実が紫色に変わるのを楽しみにすることになる。


紫陽花たちも、花の時期は終わったが、脇芽が出て茎が伸び始めた。鉢に刺されていた茎からも葉が出て成長を始める。


その頃になると主は毎日の水やりに追われるようになる。








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