桜が咲いて

桜が咲くころになると、植物たちは枝が伸び柔らかな緑色の新芽に彩られる。

「ねえ、ねえ、ずいぶん伸びたねみんな」としゅん。

「しゅんちゃん小さいって気にしていたけど、良く伸びたじゃない」と羽衣。

「うん、よかった」とさつま。

「そういえばさ、主様たち何していたのかな、そこから見える?」しゅんがコムラサキに聞いた。

「ああ、種まきしたみたいよ」

「種まき!」椿たちが驚く。

「ええ、芽が出るにもう少しかかるだろうけど」

「そこから見えるの」と羽衣。

「見えるけど、まだ何もないわね。そういえばその先にある植木鉢も子も伸びてるわ」

「私達の所からは見えないから何かあったら教えてね」と椿達。

「解った」コムラサキが答える。

それからも、椿とコムラサキのお喋りは続いた。



さて、コムラサキが言っていた植木鉢にいたのはアナベル。だいぶ葉が伸びて背も高くなってきていた。

「相変わらず棚の上は騒がしいわね。なでしこちゃん声聞こえる?」

「ええ、私の声は?」

「聞こえてるよ。そこに地植えされたんだね」

「ええ、おかげさまで。ずいぶん楽になったわ。前の入れられていたところは狭かったしね。ここは土が深いから根も張れる。沢山花が咲かせられそうよ」

「そうだね、前いた家って日あたりは悪いし、車が通るしうるさいし空気も悪かったし」

「そうだね、連れてきてもらってよかったね」

「ええ、そういえばアナベルさん、ずいぶん葉が伸びて来たけど冬大丈夫だったの?」

「うん、毎年のことだよ茎だけになってしまうのは。地下茎は生きているから」

「そうか、そういえばもう一鉢連れてきてもらっていたような。その子はどうしてる?」

「まだ、時期が早いのかな、何も変化ないよ」

「そうなのね、早く目覚めるといいね」

「そうだね、また話せる人が増える」

「そういえば、棚の上、端の子しか見えないけど誰がいるのかな?」

「あまり私の所からも見えないの。良くしゃべっていてかなりうるさいけどね」

「そうよね、声だけはよく聞こえるんだけど。ま、いつか会えるよね」

「うんそうだね」

アナベルと、なでしこはしばらく話し続けた。二人とも話すのは久しぶりだったから。


暫くするとまかれた種から芽が出て、双葉となり、四葉となり、成長が始まった。

その頃になると主たちは雑草を取ることに追われることとなる。

雑草と言っても、その草にとっては迷惑な話。人の思惑で駆除されるのか決まるのは理不尽でしかないだろう。







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