椿たちが来た頃

「ねえ、いつまでこの箱の中に閉じ込められるの?いい加減きついんだけど」

「そうよね、私もきついわ」

「でも、どこかに運ばれているみたいよ」

椿たちは口々に声を上げた。通販で買われてた彼女たち。時間が経っていて喉も乾いていた。

「あ、止まった。なんか箱が揺れてる」

「チャイムが鳴ったね、着いたのかな?」

「だといいけどな」

暫くすると箱が開けられた。覗き込んできたのは女性。後に皆に主様と言われる人。女性は箱から3つの苗を取り出して、状態を確かめると地面に並べた。

「あ~!久しぶりの外」

「光がまぶしい、でもかなり寒いわね」

「でも私達にはこれくらいが、あ!!」

「お水、気持ちいい久しぶりだものね」

「主様解っていたのね、ちゃんと根の方にかけてくれてる」

「そして葉の方もかけてくれたよ気持ちいいね」

「なんか安心したら眠くなってきた」

「うん、私もおやすみなさい」

まだ肌寒い日差しだったが椿たちはしばし、お昼寝となった。


暫くして、主は鉢に植え付ける用意をした。

「え、持ち上がった」主は土を入れた植木鉢に苗をそっと置くと周りに土を入れた。

「次私」「次私」3つの苗は植木鉢に植えられ棚に並べられた。

「え、またお水掛けてくれるの?」主は鉢の底から水が出るまでたっぷりと水を与えた。

「気持ちいいね、ここにお迎えしてくれたんだ」

「ね、ここにお迎えになったし、自己紹介しない。私は羽衣はごろも八重咲のピンクの花が咲くの」

「私はさつま。八重咲だけど白い花が咲きます」

「私は春曙紅しゅんしゅくこう。紅が入っているから紅い花よ。八重だけどあまり花びらの数は多くないかな」

「羽衣ちゃん、大きなつぼみが付いてるね、咲くといいね」

「そうなんだけど、どうかな咲けるといいんだけど、さつまちゃんもつぼみついてるよ」

「私のつぼみは固いしおそらく咲かせるのは無理だと思う」

「いいな、二人ともつぼみ付いてて、私付いて無いし、背も小さい」

「苗の作り方が違うんからじゃないのかな、春になれば伸びるって。そういえば春曙紅しゅんしゅくこうって言いにくいから、しゅんちゃんでいい?」

「うん、いいよ。これからよろしくね」

「よろしく」

「よろしく」こうして3つの椿の苗はお迎えされ大事に育てられることとなった。


「それから数日後に、コムラサキちゃんが来たのよね」とさつま。

「でも二本の茎が立っているだけでおしゃべりも出来なかった」としゅん。

「でも、主様たちは解っていたみたい。同じように水やりしていたから」と羽衣

「私、葉が出るまでずいぶんかかったものね、それからは喋れるようになったけど、ほら、雨や風の強い時は棚の下に入れられていたでしょう。茎が茂って伸びて入らなくなってからこっちに置かれたの」とコムラサキ。

「そうだったんだ。ねえ、花は咲いたの」と海峡。

「それはね・・・」羽衣はその事を話し始めた。







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